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あのとき東京は“水没”寸前だった! 250万人が暮らす江東5区「ゼロメートル地帯」が抱えるリスク 映画『天気の子』が現実になる日 - 「文藝春秋」編集部

 2年半ものあいだ雨が降り続け、3分の1が水没した東京。レインボーブリッジも水に沈み、高層ビルの上部だけが海面に散らばったブロックのように顔を出している。

【写真】台風19号の豪雨で4年ぶりにフル稼働した“地下神殿”

 新海誠監督の映画『天気の子』の衝撃的なラストシーンだ。

「東京のあの辺はさ、もともとは海だったんだよ。ほんのすこし前――江戸時代くらいまではね」と、ある登場人物は懐かしむように語るのだ――。

台風19号の影響で冠水した東京都の道路 ©AFLO

注意すべきなのは「江東5区」

「しかし、これは映画の中だけの話とは言えません。まさに映画『天気の子』が描いているような“東京沈没”が現実化していたかもしれないのです」

 そう警鐘を鳴らすのは、長年、江戸川区の土木部長として、下水道や河川事業に従事してきた土屋信行氏だ。

 10月12日、13日にかけて本州に上陸し、甚大な被害をもたらした台風19号。全国で、死者89人、行方不明者7人(11月2日時点)にのぼり、また、氾濫した河川は、延べ71本となった。都内でも豪雨が続き、浸水被害に見舞われた。

「ところが、もっと恐ろしい事態も起こり得たのです。河川やダムの状況を細かく検証すると、実は危機が目前に迫っていたことが分かります」(土屋氏)

 土屋氏によると、特に注意すべき地区は、“下町”と言われる東京東部の「江東5区」、墨田区、江東区、足立区、葛飾区、江戸川区だという。「その地域の水源は、関東の山岳部にあって、そこに降った雨も、最終的にはこの地域に流れてくることになる」からだ。

地域の中に“避難できる高台地”がない

 土屋氏は、江東5区の危険性について、こう解説する。

「江東5区は、約262万人もの人口を擁しながら、大部分が満潮位以下のゼロメートル地帯で、地域の中に避難できる高台地がありません。生き残るには、この地域の外に避難するしかないのです。

 ハザードマップの被害想定では、浸水想定区域は江東5区のほぼ全域に及び、浸水割合は9割を超えることが分かりました。この“水没地帯”には、実に、5区の総人口の95%を超える約250万人(夜間人口)が暮らしています。

 想定される浸水の深さは、JR総武線平井駅北口周辺で最大約10メートルにも達します。また、2週間以上にわたり、水が引かない地域があることも分かりました。

 結局、江東5区の住民に残された道は、安全な時間帯に、事前に広域避難を行うしかないのです」

 決して絵空事ではない『東京沈没』。江東5区の地形的脆弱性や、1947年に死者・行方不明者1930人を出したカスリーン台風での広域避難の前例、また江東5区の水害ハザードマップの詳細は、「文藝春秋」12月号および「文藝春秋digital」の「東京沈没『天気の子』が現実になる日」に全文を掲載している。

「自分や大切な家族の命を守るため、一人でも多くの人に災害への危機感を持っていただきたい」と、土屋さんは切実に訴えた。

(「文藝春秋」編集部/文藝春秋 2019年12月号)

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