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又吉直樹が直木賞作家・西加奈子と語る新作『人間』執筆の舞台裏 「私小説でも私小説じゃなくても一緒やん」

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◆価値観に囚われずに小説を執筆 「全部一緒やん」って思ってまう

BLOGOS編集部

又吉:(最近は)「なんでもええんちゃうかな」っていう感覚になってきたというか。誰かの価値観みたいなものに囚われすぎではなくなってきてるかもしれない。危険かもしれないんですけど、「全部一緒やん」って思ってまう。「あいつ嫌なやつやな、ということは一方で良い奴がいて、嫌な奴っていうのは〜だから嫌な奴で、いい奴っていうのは〜だからいい奴で、つまり一緒やな」って。

西:そんなに言葉を尽くせるのに最終的に一緒になる。「僕はあなただ」って、昔からおっしゃってたもんね。

又吉:僕はみんなだ、僕はあなただっていう感覚は、むちゃくちゃありますね。

◆「登場人物=ぜんぶ僕なんです」の意味とは


又吉:(小説を書くときは)自分自身と登場人物がある程度の距離を保っていた方がいいのかなって結構意識したんですけど、『火花』を読んだうちの母親が「お酒の飲み過ぎに気をつけて」と言ってきて、やっぱり僕の話として読んでるんやと。

よく「これは又吉さんですか?」と聞かれるんですけど、全部僕なんですよ。でも、「僕です」って言ったら、違う捉え方をされる。僕が言ってるのは、たとえば(太宰治の)『人間失格』を読んで、(主人公の)大庭葉蔵に対して「あ、俺これや」って思うみたいに、ずっといろんなものに対して「自分や」と思って読んできた。

西:公言してましたよね。

又吉:公言してきた自分が、いざ小説書いた時に、「このなかに俺いないです」って無茶苦茶やん。僕は芸人として知ってもらってたから、「僕自身と作品は分けて読んでくださいよ」って都合のいいことは言えない。受け入れた上でやろうと。たぶんいろんなものが「一緒やな」に繋がってる。俺であっても俺じゃなくてもどうでもいい。一緒やなって。

西:それって悟りみたいなものじゃない?

又吉:下手したらもう死んでるかもしれへん。

西:そうやなあ(笑)。もう実体がないかもしれへんって思ってきた。

◆カテゴリー分けになんで信仰みたいなものが生まれてもうてるん


又吉:『火花』とか『劇場』は私小説とはいえないですけど、私小説っぽい。『人間』は私小説やなって書いてる感じで思うけど、これを私小説って言ったら、「違う」と言う人は多いと思います。誰が決めんねんっていう。私小説でも私小説じゃなくても一緒やん。

西:一緒やな。だから『人間』っていうタイトルは正しい。人間やん、小説やんっていうことなんや。

又吉:カテゴリー分けに、なんで信仰みたいなのが生まれてもうてるんっていう。

西:タンスのここに何が入ってるって分かりたかっただけやのに、靴下以外のものをいれたら死ぬっていう思いしてるみたいな。

又吉:みんな、無茶苦茶なことをやってる。「一緒」っていうタイトルにすればよかったな(笑)。

◆前作の続きは間違いなく書いてる


又吉:なんとなく文芸界って、大きな賞をいただいたりすると、年間何冊書いてと言われたりするけど、なんで決められなあかんねんって。それぞれのペースでやればいい。僕は五年に一冊だけ書くっていうスタイルの作家がいたとしても、その人の小説が面白ければ待つ。

自分のなかで、前作の続きは間違いなく書いてるんです。あとはポジティブな問題や疑問に対しては、自分も同じように思えた時は、すごい共鳴してもいいと思っているから、それに対しては考えたり、続きをやったりするけど、そうじゃない時には、あんまり惑わされたらあかんかなって思ってやってました。

西:強い作品やもんなあ。うちも、作家として書いてたらようなっていくものなのかなって思ってたけど、勝手な文芸界への反射だけやったんかな。ほんま人それぞれやもんな。

又吉:人それぞれですよね。僕はまだ三つしか書いてないし、やり方もわからんし、習うもんでもないですもんね。習ってもいいし、習わんでもいいし。

西:一緒やな(笑)

又吉:一緒です(笑)

西:ほんまに「一緒」っていうタイトルいいな。むっちゃ書くん難しいでしょうけど。


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