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就職氷河期世代支援プログラム、その成果の鍵は正社員化ではなく社会参加支援

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社会参加給付金(社会参加希望者支援制度)

これは厚生労働省の職業訓練受講給付金(求職者支援制度)を拡張したアイディアです。詳細は該当サイトに譲りますが、一定の条件下で職業訓練を受講する際に月額10万円の手当の他、交通費等の通所手当、宿泊を要する場合は寄宿手当として月額10,700円が受け取れます。

非正規雇用で働いているひとも同じではあると思いますが、無収入である可能性の高い社会参加を求めるひとにとって、交通費等の実費負担は社会参加の際に足かせになります。必ずしも徒歩や自転車で行けるところに参加したい社会があるとは限りませんし、むしろ、少し遠方であったり、居住地を変更したいこともあるかもしれません。

公的機関や公設民営施設は費用がほぼかかりませんが、そもそも近距離にあるとは限りませんし、交通費のみならず、そこに参加するための経済面を支えてみることで、参加したい社会との接点を作りやすい環境が整うかもしれません。

社会参加における「社会」は、行政等が準備したものではなく、当事者がしたい社会のどこかでもいいのではないでしょうか。もちろん、一定の基準は引かなければならないと思いますが、その主体を当事者に委ねるということは、与えられた社会に来なくてはならない環境よりよほど参加しやすいように思います。

参加したい社会を選べるバウチャー制度

公設民営を含む、行政が設置した社会の場ではなく、当事者が参加したい社会を選べるようにするために、行政設置型および民間委託型にこだわることは社会参加可能性を大きく制約させます。特に物理的な距離に関しては、居住エリア周辺に該当施設等が設置されないことの方が多いはずです。

そのためできるだけ既存の場を活用しつつ、エリアの制約を受けすぎないようバウチャー制度を活用する方がよいと思います。

参考になるものとしてスタディクーポン・イニシアティブなどが参考になります。こちらはお金がなくて塾に通えない子どもたちに、その費用を社会的に担保することによって教育格差をなくそうという取り組みです。民間からの取り組みですが、その実績が行政への導入につながっています。

当該サイトにクーポン利用先教室リストというものがありますが、(事業終了のためいまは閉鎖)利用先に指定いてもらいたい事業者は登録フォームから審査を受けられます。参加したい場所があれば登録指定依頼をする、逆にその場所になりたい事業者なども登録して審査を受けるような形で選択肢を増やし、当事者が参加したい社会を増やしていくことが考えられます。

もちろん、登録審査や運用面をどこが担うのかという課題はありますが、就職氷河期世代支援プログラムは基礎自治体との協働を前提としています。地域の実情を知る自治体または自治体から委嘱された組織がそこを担うことで、登録希望の事業者等の判断が付きやすくなりますし、それ自体がネットワークとなって地域を支えていく網の目になることも期待できます。

社会的な居場所がなかったり、生きづらさを感じられている方々が主体となって場を形成していることもあれば、民間NPOなどの集まり、そして公的機関主催のものがあります。また、社会参加のためにやっている事業やサービスでなくても、当事者の方にとって参加しやすい場もあると思います。そのような多様な場にアクセスできる仕組みのひとつとして、バウチャー制度を参考にした、参加したい社会を選べる施策にチャレンジしてみるべきだと思います。

ニーズに合わせた柔軟な伴走ができるように

就職氷河期世代への支援プログラムを行うにあたって、現状は概況的な情報以上のニーズが深く調査されていることはないようです。特に社会参加支援にあたっては、走りながら作っていく様子が伺えます。

育て上げネットでも、「就労支援機関を利活用」した、「当該世代の方」について調べてみました。

参考:「若者支援」の現場から見た「就職氷河期」(育て上げリサーチ)

あくまでも就労支援という、そのひとに合わせた「働く」を考え、一緒に悩みながら作っていく場所ですので、「働きたい気持ちはあるが無業状態が長期化しているひと」が主な利用者になるという認識です。

そのなかで「利用目的」を抜粋してみると、以下のようになっています。

そのなかで上位になるのは比較的仕事に直結するのが多く、「PCを習いたい」が最上位にきています。一方、就職には直結しないけれど、ご本人が悩まれている項目として「生活改善をしたい」「集団行動力を身につけたい」「仲間が欲しい」というものがあります。

これらは就労支援の範囲ではありながらも、社会参加を希望されるひとたちのなかにも利用目的に挙げられるかもしれません。

これらのニーズは個別的ではありますが、ある程度の調査が進めば一定程度のニーズとなって見えてくると思います。しかし、ニーズ調査によって、ある程度のまとまりがわかったとき、予算の仕様設計に「生活改善講座:週2回×2時間×30週」のようになってしまうと、提供側のタイミングで動くことになります。

長く社会との接点を持ってこなかったひとたちにとって、何かしらのアクションを起こすことは非常に負担が大きく、勇気を振り絞る行為です。機会を求めて来所されたとしても、目的の講座はその日、その時でないとなると、次のチャンスが来るかどうかわかりません。

その意味で、予算を組み立てる段階では何を何回、人件費がどれくらいという設計はなされるでしょうが、一定程度、柔軟かつ自由度の高い使い方が可能な資金を事業費のなかに繰り入れておくべきだと考えます。

もちろん、なんでも自由というわけではないと思いますが、まだ何もわかっていない状況下において、すべてが新しいチャレンジとなります。3年の限定が打ち出されている以上、4年目または新たな1年目に向けて、何をどうしたら社会参加を実現できるようになるのかを見つけることが重要であり、就職氷河期世代支援プログラムの成果はどれだけのひとが正規雇用で働くようになったのかではなく、当該世代と社会の接点をどれだけ作ることができたのかに置くべきだと考えます。

「接点を作る」ことがもっとも重要なことです。

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