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朝日新聞中国人権弾圧を非難

中国・習近平国家主席(2019年10月25日)出典: Flickr; Palácio do Planalto

古森義久(ジャーナリスト・麗澤大学特別教授)

【まとめ】
・中国批判が少ない朝日新聞が中国の弾圧を非難するコラム掲載。
・習主席の国賓来日に反対はしないが、人権弾圧に抗議せよと主張。
・朝日新聞にまで指摘される安倍政権の対中姿勢は融和的過ぎる。

朝日新聞と中国といえば、主張が合う事例がきわめて多かった。日米共同のミサイル防衛への反対、日本の防衛庁を防衛省にすることへの反対、首相の靖国神社参拝への反対などなど、両者の主張がぴたりと一致した例はあまりに数が多かった。だから朝日新聞が中国を非難することは少なかった。

ところがごく最近、朝日新聞のコラム記事に中国共産党政権の国内での弾圧を正面から非難する主張が打ち出された。しかも安倍政権が習近平国家主席を国賓として招くことへも留保をつけていた。

朝日新聞のゆがんだ主張を長年、指摘してきた側としてはこんな健全な主張も出るのかと、快適な驚きだった。中国共産党の弾圧はついに親中で知られた朝日新聞からも非難されるほど、ひどくなったのか。あるいは朝日新聞が現実的なスタンスへと動き始めたのか。

▲写真 朝日新聞の看板(有楽町マリオン 2010年3月20日)出典: Flickr; street viewer2

この記事は朝日新聞10月26日付朝刊オピニオン面に載った「多事奏論」というコラム評論だった。筆者は編集委員の吉岡桂子記者、ベテランの中国専門記者である。この記事の見出しは

改革派の研究所閉鎖 中国の弾圧 ひとごとでない
と中国共産党政権の弾圧をはっきりと指摘していた。

内容は鄧小平の改革・開放路線に沿って生まれた中国の民間シンクタンクがこのほど習近平体制下で閉鎖を命じられたことについて、その研究機関のいま90歳の創設者に会って聞いた話が主体だった。「民間」といっても共産党体制の枠内での非政府ということなのだろうが、その機関は自由な市民社会の必要性や市場経済の拡大、言論弾圧を受けた知識人の解放などを主張してきたのだという。だがついに閉鎖されたのだ。

このコラム記事のなかには以下のような記述があった。

「習近平体制下での改革派知識人への弾圧はとどまるところを知らない
「一党独裁下の中国では政経不可分である」
「習体制下では抑圧は増す」
「中華人民共和国の歴史よりも長く時代の荒波を生き抜いてきた『茅老』の口すらいま封じられている」

以上のような記述はきわめて常識的である。だが朝日新聞としては珍しい。

吉岡記者はさらに習近平体制の弾圧について日本に触れて次のように書いていた。

「ひとごとだろうか。中国史を研究する北海道大学の教授が9月から中国で拘束されている。理由が判然とせず、日本の学界に衝撃が走る。中国への出張をとりやめる動きも広がっている。内政と外交は地続きだ。国家の安全を理由に中国内で自由や人権に配慮せず、敵視する相手を力ずくで封じ込める姿勢を見てきたからだ。高度な自治を認めた『一国二制度』の揺らぎに直面し、激しいデモを続ける香港の人々にも共通する恐怖である」
▲写真 中国の招きで訪中した中国史専門の教授が拘束された。写真は北海道大学。出典:Flickr; Susumu Kurihara

この部分は「力ずくで封じ込める姿勢」を「見てきた」という文章の主語がだれなのか、曖昧な点もあるが、おそらく「日本の学界」ということなのだろう。とすると日本の学界が香港の人々と共通の恐怖を抱いているという意味になり、迫力のある描写とも響く。

▲写真 マスク禁止法に反対するデモ隊と警官隊の対峙。(2019年10月6日 香港)出典: Flickr; Etan Liam

そのうえで結びとして同コラムは次のように述べていた。

「日中関係は改善の基調にあるという。習氏も来春、来日する予定だ。ならば今こそ、日本政府は中国の言論や人権の問題に目を向け、意見を言うべきだ。それは日本人の安全にも深くつながっている」
▲写真 安倍首相と習近平国家主席による日中首脳会談(2018年10月26日 北京)出典: 首相官邸ホームページ

まさに適切な主張である。ただし習近平主席の来賓としての来日に反対はしていない。だが日本政府は中国の人権弾圧に抗議せよ、と訴えている。確かにそうだろう。日本政府はその抗議を明確にしてこそ初めて習近平主席を招くべきだと、その訪日に明確な前提条件をつけるならば、もっと適切な主張となっただろうが、そこまでは述べていなかった。

日本政府は首脳や高官同士の会談で人権弾圧への懸念を伝えたと発表しているが、公開の場で抗議を表明しなければ、効果はない。中国への批判的な姿勢の強化を朝日新聞にまで求められるとは、安倍政権の対中スタンスもよほど融和的にすぎる、ということだろう。

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