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【年金をめぐる“故意”の空騒ぎ④】逃げ切り世代、肩車図…「世代間格差」という連綿と続く空騒ぎ(海老原嗣生)

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1986年以前は年金にフル加入できない人がかなり多かった

年金受給水準については、所得代替率という指標が使われる。これは、現役時代の収入に比べてどのくらいの年金をもらえるか、を示す。

ただしこの数値は、夫がサラリーマンで、妻が専業主婦を前提とした世帯の年金総額、つまり、夫の年金に、妻の基礎年金(3号保険)を合わせた世帯全体の年金額で計算される。当然、未婚で通せば妻の3号保険分が入らないので率は下がる。そして、40年間フルに加入した想定での数字であり、未納・未加入期間があればやはり率は下がる。

こうした前提で算出された所得代替率が、従来は60%超だったものが、将来50%まで下がっていくというのが検証で示された絵図だ。単純に考えると、60%→50%への低下は2割近くもの年金減額となる。ここからまた、世代間格差が騒がれる。

ただ、過去世代の多くの人はそんなに甘い年金生活をできてはいない。彼らは以下のような理由で、年金に「40年間フル加入」できなかった人が相当に多いからだ。

1)専業主婦の加入義務は1986年から。それ以前は任意加入(企業負担はなく公的負担も少ない)のため未加入の主婦も多かった。義務化前の1985年の国民年金への女性・任意加入者(ほぼ主婦)は705万人。それが3号保険ができた1986年には1093万人と1年で387万人も増えている。このことから、1985年時点でサラリーマン家庭の専業主婦のうち4割程度が国民年金未加入だったと考えられる(図表)。


2)1986年までは30人未満の中小企業は厚生年金加入義務がなかった(1989年まで経過措置あり)。義務化前の1985年の厚生年金加入者は2723万人、経過措置が終了した1990年には3100万人と、この間に377万人も増えている。このことから、1985年時点では、民間法人勤務者の1割強が厚生年金未加入だったと考えられる。

3)1960年台は自営業・農業(のちに農業年金ができる)従事者が多く、2階部分(厚生年金や公務員共済など)への未加入者が多かった。

4)1960年台は国民年金・厚生年金ともに制度が浸透せず、加入率が今より低かった。

5)非正規雇用者(2か月以上の継続勤務者)の厚生年金加入が義務付けられたのが1999年でそれ以前は1階部分のみの加入者が多かった。

以上を勘案すると、過去世代の多くの人の所得代替率は、モデル数値よりもかなり低くなる。

1970年当時では自営業と家族専従員などの1階のみ加入者が就労者の半分弱、二階部分が任意加入だった従業員数30人未満の企業での就労者が約2割にもなるで、厚生年金必加入者は総就労者の3分の1程度だ。当時年金を支払っていた年代の人が受給者の主体となる2006年のデータでは、月20万円(年240万円)以上年金をもらえている人は、全体の16.6%しかいない。

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