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ホームレス経験のある世界的著名人たち。「家がない」という状態は、本人の人となりを表すものではない

日本では「ホームレス中学生」だった芸人が有名だが、世界を見渡せば、ホームレス経験を経た後に偉業を成し遂げた著名人は決して少なくない。多くの人々から敬愛・賞賛され、世代を超えて“崇拝”されている人たちも、華やかな世界からかけ離れた路上生活やそれに近い状態を経験したことがある。その事実から言えることは、「ホームレス」という言葉はあくまで家がない「状態」を指すのであって、決してその「人」を表すことばではないということだ。

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ロンドンの公園のベンチで眠っていたある若い男。当時、彼のことを気に留める通行人はいなかった。この青年が後に、映画『007シリーズ』で諜報員ジェームス・ボンドを演じ、映画史に名を残すことになるとは、誰も知る由もなかったのだから。

ジェームス・ボンド役で億万長者となり、世界何百万人ものファンに崇拝される存在となった英国人俳優ダニエル・クレイグにも、公園のベンチで夜を明かしていた時代があったのだ。あるインタビューの中で彼は、「生きるためになんだってしてきた。なにせお金がなかったからね」と無一文からトップスターに上り詰めるまでの日々を振り返っている。


写真:Liam Mendes / Wikimedia Creative Commons
キャプション:ダニエル・クレイグ、 『007 スカイフォール』の豪プレミア会場にて。


※『ビッグイシュー日本版』203号(SOLD OUT)では表紙を飾っている。
https://www.bigissue.jp/backnumber/203/

米国のスーパースター、シルベスター・スタローンも、映画『ロッキー』で伝説のボクサー役を演じ、大成功をおさめた俳優だ。しかし、夢を追ってニューヨークのバス停留所に降り立った若かりし頃の彼は、もちろん全くの無名。
アパート代が払えなくなり、そのバス停付近で寝起きしていたこともある。お金が底をつき、苦楽をともにしてきた愛犬を売りに出すという、誰であれ気後れしてしまう行動にまで出たという。幸いこの二人は、後にスタローンが書いた『ロッキー』の脚本が売れたため、3千ドル(現在の為替で約32万円)でその愛犬を買い戻すというハリウッド風ハッピーエンドを迎えることができたが...。しかも、その愛犬もロッキーシリーズの2作品に登場し、有名“犬”となった。


写真:Wikimedia Creative Commons: Towpilot
キャプション:シルベスタ・スタローン。ハリウッドスターとして売れるまで、ニューヨークのバス停で暮らしていた時期がある。


サイレント映画の巨人のチャーリー・チャップリンも、誰もが知る存在だ。人々を笑わせ、感動の涙を流させてきた彼だが、若い頃の日々は笑える境遇ではなかった。父親をアルコール依存症で若くして亡くし、母親は頻繁に精神病院に入院する生活を送っていた。チャップリンはワークハウス*1や貧困者向けの学校で過ごし、ロンドンの路上を無一文でぶらついていたという。

後年、彼は代表作『チャップリンの失恋(原題:The Tramp)』で、品格ばかりを気にして恋に敗れる放浪者を演じるなど、世界的に有名なコメディアンとなった。1977年に亡くなった時点での財産は4億ドル(約430億円)にもなっていた。

*1 自立して生活することが難しい人に住まいと仕事を与えていた施設。
*2 出典


米国の起業家スティーブ・ジョブスも、経済的成功をおさめた代表人物だ。2011年に56歳で亡くなった時点での純資産は102億ドル(約1兆1千万)*。人々は彼をアップル社の共同設立者でコンピューター界のカリスマと認識しており、貧困やホームレス状態とひもづける人はほとんどいない。
「ほら見ろよ、ジョブスがまた空き缶集めをしているぞ」なんてセリフは想像しがたい。が、それこそ、若かりし日のジョブスがやっていたことなのだ。公園のベンチ暮らしこそ免れたものの、友達の家の床で夜を過ごすことも多かったという。菜食主義の彼は、週に一度、温かい食事を無料で提供していたヒンドゥー教寺院まで何マイルも歩いて通ってもいた。

*出典


写真:Matt Yohe / Wikimedia Creative Commons
スティーブ・ジョブズ 


カーネル・ハーランド・サンダースは、世界で2万店舗以上を展開するファストフード現象を起こし、何百万羽もの鶏をフライドチキンにした男だ。
1952年にケンタッキーフライドチキン(KFC)を設立した時、「カーネルおじさん」はすでに62歳。それまでの人生の大半はホームレス状態だった。車で寝泊まりしながら、レストランにチキンのレシピを売りこんでいたのだ。今日では、ケンタッキーの袋やバスケットには漏れなく、彼の似顔絵が描かれている。

この他にも、ホームレス状態で苦労してきた著名人はたくさんいる。1999年にノーベル文学賞を受賞したギュンター・グラスは、独デュッセルドルフで暮らしていた若い頃はほぼ無一文で、大変苦労した。美術学校に通いながら、「聖フランシスコ・貧しい兄弟の家」で寝起きしていたという。彼の友人で、のちに世界的に名を知られることとなる彫刻家ギュンター・ユッカーも同じようなものだった。


写真:Wikimedia Creative Commons
ノーベル文学賞受賞者ギュンター・グラス


80年代末のニューヨークでは、後にオスカー俳優となるハル・ベリーがホームレス用シェルターで生活していたし、「パンクの女王」とも呼ばれるパティ・スミスも、路上や公園、地下鉄の駅で夜を明かしていた。

米国の大物政治家にもいる。もちろんトランプ大統領ではない。彼は生まれつき裕福なのだから。その人物とは、アメリカ合衆国建国の父の一人と讃えられるベンジャミン・フランクリンだ。フィラデルフィアに降り立った若かりし頃の彼は、路上生活者同然だったそうだ。

By Arno Gehring
Translated by Catherine Castling
Courtesy of fiftyfifty / INSP.ngo

関連記事:
児童養護施設、母子世帯、ホームレス、いじめを経験してきたサヘルさんからのメッセージ
└数々のテレビ番組に出演するかたわら、女優として活躍するサヘル・ローズさんにも、ホームレス状態になった経験が。(『ビッグイシュー日本版』340号より)

幼少期のホームレス経験、女性蔑視の映画界、Me Too運動の“その後”を語る:ローズ・マッゴーワン
└(『ビッグイシュー日本版』358号より)

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