記事

「韓国ホワイト国外し」の裏にある米中貿易戦争

1/2

経済ヤクザだった現役時代、私は石油のビジネスをしていた。取引額が巨大な石油取引には証券や債券を使うことが多く、資金移転を脱税やテロ資金に応用する者もいた。私は石油を通じて、国際金融の現実の裏と表を知ることとなった。

覇権争いのステージは変わった

現在、国際金融は巨大な混乱に向かっていると私は確信している。原因は2018年に開戦した、米中貿易戦争だ。当初は、関税や輸出規制を武器にしたモノの勝負だった。

元山口組系団体組長 猫組長氏

政治的制裁と誤解されがちな韓国に対するホワイト国外しも、アメリカの中国に対する輸出規制の一環だと私は分析している。後述するが対象品目が韓国から第三国に渡ったことを覚知することができるのは、金融の流れを監視している唯一の国アメリカしかないからだ。米中貿易戦争の実体は超大国同士の覇権を巡る戦争なのだから、対象がモノだけで終わるはずがない。為替や株式などカネの勝負へと移行していくのは当然だ。

それを決定的にしたのが19年8月5日の米財務省による、中国の為替操作国認定だ。第2次世界大戦後、すでに物理的な戦争から費用対効果の高い経済的な戦争へと変わってはいるものの、改めて、戦争のステージがカネ、すなわち金融へと移行したことへの布告にほかならない。

相次ぐ株価の乱高下は二大国がモノで争った表層で起こったことにすぎない。経済の血液であるカネそのものを使っての戦争は、社会そのものを揺るがすことになる。混乱を生き抜く最良のツールこそ、インテリジェンスを基にした合理的で冷静な視点だ。こう断言できるのは、私自身が暴力と金が連座する、混乱が日常の黒い経済の世界を生き抜いてきたからにほかならない。

現在発売中の拙著『金融ダークサイド』(講談社)は、国際金融の生々しい現実を知る最良のテキストだと自負している。すでに金融が混乱することは宣誓されている。今こそ国際金融の現実を知るべきときだと言えるだろう。

9.11と金融監視

ネット通販が当たり前になった現在では、多くの商品を個人輸入することができる。決済はクレジットカードだが、世の中の貿易のすべてをカードで行えるはずがない。ドルでしか決済できないうえ、取引金額の大きな石油や穀物、また鉄鋼、車などの輸出入取引で決済するときの送金手段として用いられるのが金融メッセージングサービス「SWIFT」(スイフト)だ。

※写真はイメージです(写真=iStock.com/atakan)

ほぼすべての国際決済が通過するSWIFTは1973年にベルギーのブリュッセルに設立された共同組合形式の団体で、つくり上げたシステムは現在でも、海外送金のスタンダードな方法となっている。

通常、国内銀行間の金融取引は各国の中央銀行を通じて行うが、外国の銀行へ送金する場合には中央銀行が存在しない。ということで、通貨ごとにコルレス(Correspondent=遠隔地の取引先の略)銀行という中継銀行が指定されている。

現在日本では東京銀行を吸収合併した三菱UFJ銀行や、SMBC(三井住友銀行)などがコルレス銀行になっている。日本の地方の銀行から、アメリカのユタ州の銀行口座にドルを送金する場合、まず三菱UFJ銀行やSMBCを通じて米ドルのコルレス銀行にテキストメッセージが送られ、そこからユタ州の銀行口座へとテキストメッセージが伝送されるということになる。その後、SWIFTが銀行に対し支払いを指図するという流れだ。

すなわちSWIFTには誰がいつ、誰宛てにどこの銀行でいくらをどういうふうに送ったかという膨大な世界中の送金記録が収められている。麻薬の国際取引などで決済する場合など、黒い経済人たちもSWIFTを使って送金を行っていた。汚い金がやり取りされていることがわかっていたのだが、一方で金融というデリケートな個人情報であることから、犯罪捜査のためにSWIFTをこじ開けることは倫理面から躊躇されてきた。この倫理を破壊したのが、アメリカだ。きっかけになったのが01年9月11日に起こった、アメリカ同時多発テロ事件である。

実行犯のリクルートから、生活費、武器の調達、訓練費用、逃走費用、残された家族へのケアに至るまで、テロの実行には莫大な資金が必要になる。SWIFTを開示することは人権を踏みにじる行為であり、常識的に考えれば許されなかったが、「9.11」という未曽有の事態に直面したアメリカは、力で押し切りSWIFTを開示させた。最初は9.11事件の捜査目的だったが、「テロ対策」ということであらゆるテロリストや、犯罪者の金の流れを規制・監視しているのが現在だ。

「ホワイト国外し」に米国の影

韓国のホワイト国外しの背後にアメリカの存在を確信する根拠もこれだ。日本から韓国に輸出した兵器転用可能なモノが、第三国などを経由して北朝鮮と関係の深い、シリアやイランに渡ったことがホワイト国外しの表向きの理由だ。

だが、お世辞にも海外に送ったカネやモノの監視機構が優れているとは言えない日本が、韓国を通じてシリア、イランに渡るモノを追いかけることができるとは考えられない。一つ一つのモノにGPSを付けていたというのならわかるが、生産企業にそのような指示は出されていないだろう。

すると導き出される答えは1つ、モノの取引について回るカネの動きを追うことだ。そして世界の中でカネの動きを把握できる唯一の国こそアメリカだ。


報道された順番が違うのだが、今回のホワイト国外しのきっかけになったのは、韓国の半導体メーカー、サムスン電子やSKハイニックスが、日本から輸出されたフッ化水素を中国工場で使用していた件だったという。韓国半導体メーカーによる中国輸出を問題視した正体こそ、最先端技術の生産基盤を中国から自国に取り戻したいアメリカだった。アメリカが中国と戦争を始めた動機の1つが「知的財産権の侵害」だ。もっとも問題視したのは、最先端技術を中国が盗用しているという点だ。半導体の生産工場はその流出元になっている。

19年7月下旬にはサムスン電子とSKハイニックスが揃って、生産体制にアメリカを追加する新長期プランを検討していることが報じられている。アメリカであれば、日本がフッ化水素を輸出できることが理由だ。

すべての点と線はアメリカの国益で結びついている。はじめにあったのは、シリアでもイランでも、ましてや日本でもなく中国だったということだ。ホワイト国外しにアメリカの関与があるという私の疑念は、もはや確信に近いものとなっている。

あわせて読みたい

「対韓輸出規制」の記事一覧へ

トピックス

ランキング

  1. 1

    山中教授が「被害者」になる日本

    やまもといちろう

  2. 2

    神奈川HDD流出 社長辞任させるな

    山口利昭

  3. 3

    支持率に影響出ない桜見る会問題

    非国民通信

  4. 4

    糖質制限を覆す研究 Nスぺに驚き

    NEWSポストセブン

  5. 5

    「人のせいにする」ことの大切さ

    紫原 明子

  6. 6

    HDD転売事件が世界最悪級なワケ

    新倉茂彦 / ITmedia オルタナティブ・ブログ

  7. 7

    グレタさんCOP25で西側政府糾弾

    ロイター

  8. 8

    行き詰まる韓国 中国に寝返るか

    ヒロ

  9. 9

    神戸限定で人気 子供バッグの謎

    清水かれん

  10. 10

    麻生大臣が「安倍4選」に初言及

    文春オンライン

ランキング一覧

ログイン

ログインするアカウントをお選びください。
以下のいずれかのアカウントでBLOGOSにログインすることができます。

コメントを書き込むには FacebookID、TwitterID のいずれかで認証を行う必要があります。

※livedoorIDでログインした場合、ご利用できるのはフォロー機能、マイページ機能、支持するボタンのみとなります。