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新『おっさんずラブ』 #牧ロスで考える「ヒットドラマに“カップル萌え”」の法則 阿部寛×夏川結衣に、木村拓哉×松たか子…… - 上村 由紀子

 その夜、SNSは燃えた――。

【写真】『結婚できない男』阿部×夏川コンビ

 11月初週にスタートしたドラマ『おっさんずラブ-in the sky-』。語るまでもなく、2018年に同枠でオンエアされた『おっさんずラブ』の新作である。


『おっさんずラブ-in the sky-』公式ホームページより

 2016年に単発ドラマとして放送され、2018年の連続ドラマ大ヒットを受けての映画化、そして今回の新作と、これまでに類を見ない形で快進撃を続ける『おっさんずラブ』シリーズだが、新作の初回放送後、ネットでの評価は大きく割れた。

 なぜか。

 もっとも大きな理由は「そこに牧凌太がいないから」だ。

地上から空へ “恋の乱気流”に突入した新作の「おっさんずラブ」

 18年版の『おっさんずラブ』で描かれたのは都内の不動産会社「天空不動産」で巻き起こる四角関係。田中圭演じるモテない独身男・春田創一が、上司の黒澤武蔵(吉田鋼太郎)と同僚の牧凌太(林遣都)から想いを寄せられ混乱する中、同じく上司の武川正宗(眞島秀和)も、かつての恋人・牧への想いを断ち切れず……と、おっさんたちの恋愛ストーリーが炸裂。

 結果、春田は黒澤を振り切り、牧と結ばれて、この関係は映画版にも踏襲されたのだが、新作『おっさんずラブ-in the sky-』では春田と黒澤の基本キャラクター設定のみ同じで、その他はすべて刷新。舞台は航空会社「天空ピーチエアライン」となり、新たに副操縦士・成瀬竜(千葉雄大)、整備士・四宮要(戸次重幸)らが“恋の乱気流”に参戦する。

「男同士なんておかしい!」がない、優しい世界はそのままに

『イン・ザ・スカイ』の第1話を観てまず思ったのは「あの優しい世界はしっかり引き継がれている」ということ。16年の単発ドラマでは「男性が男性に恋すること」に、周囲の人間たちが100%肯定的でない描写もあったが、18年の連続ドラマでは登場人物の誰もがそのことに疑問を抱かず、春田の幼なじみ・ちず(内田理央)はもちろん、武蔵の妻・蝶子(大塚寧々)でさえ夫の恋を受け容れ、最終的には離婚までして彼らを応援するという展開に。

『イン・ザ・スカイ』でもその優しい世界観はそのまま共有されており、自分が想う男性と成瀬との関係を問い詰めようと鼻息荒く乗りこんできた女性ですら「男同士なんておかしい!」などとは決して叫ばない。また、全体的にコメディー色も強く、特にラスト3分間はグレートキャプテン武蔵の身もだえ乙女苦悩、シノさんの雄たけび、成瀬のドS網ドン、ひたすらうろたえる春田と、メイン4人からフルスロットルな演技が繰り出され、ボルテージは最高潮に。

 その凄まじいエネルギー量を受け『イン・ザ・スカイ』はドラマの放送中、Twitterの国内トレンドで1位、放送終了直後には世界トレンド3位を獲得。視聴率もテレビ朝日・土曜ナイトドラマの枠では過去最高の5.8%を記録し、ザ・テレビジョンが独自の集計でデータ化している視聴熱では日々上位に名を連ねる。

 と、全体的に追い風モードの『おっさんずラブ-in the sky-』だが、この状況をすべて好意的には受け容れられない視聴者もいる。

「人が人をピュアに愛すること」を体現した“牧春”はどこ?

 そう、18年の連続ドラマ『おっさんずラブ』で牧と春田の純愛に心を持って行かれた人々……通称“牧春民”である。 

 さまざまな紆余曲折を乗り越え、涙でボロボロになりながら「人が人をピュアに愛すること」を体現した牧と春田に気持ちを寄せ、胸の苦しみと戦いながら応援し続けてきた“牧春民”にとって、牧がいない新作は「パラレルワールドとして観て欲しい」と言われても簡単には納得できない事態。SNSで怒りや哀しみの声をあげたり、『イン・ザ・スカイ』に対し「これは私たちが待っていたおっさんずラブじゃない!」と、前作&“牧春”への愛の強さに裏打ちされた感想をつぶやいてしまうのも必然かもしれない。

 『おっさんずラブ』の“牧春”に限らず、ヒットドラマにおいて“カップル萌え”“カップル推し”現象はまま起きる。

夏川結衣に松たか子……ヒットドラマに“カップル萌え”あり

 たとえば、阿部寛主演の『まだ結婚できない男』。これは2006年に放送された『結婚できない男』の続編だが、阿部演じる建築家の桑野とアシスタントから共同経営者になった村上(塚本高史)と妹夫妻、母親以外のキャストは総入れ替え。中でも桑野と時に反発し合いながら関係を深めていった医師の夏美(夏川結衣)の枠が弁護士・まどか(吉田羊)に替わったことで、前作ファンの視聴者からは「なんか、違う」「夏美先生に出て欲しかった」との声も多く上がっている。

 また、『時効警察』『帰ってきた時効警察』に続き、12年振りに続編が作られた『時効警察はじめました』。こちらは『時効警察』シリーズお馴染みのキャストがほぼ再集結。総武警察時効管理課の霧山(オダギリジョー)と三日月(麻生久美子)のコンビも健在だ。が、新加入の彩雲(吉岡里帆)に対して「霧山と三日月くんの掛け合いに割って入って欲しくない」「2人の空気を壊さないで」という意見もかなりの数見受けられ、吉岡のインスタグラムにネガティブなコメントを書き込んだ視聴者に対し、吉岡本人が返信するという事態も起きた。

 平成の時代なら『HERO』で木村拓哉演じる久利生の相手役が雨宮(松たか子)から麻木(北川景子)に替わった時の戸惑いを思い出す。第1期の最終回、雨宮がカメルーンのサッカー代表選手の名前を全員暗誦したシーンで得た多幸感を第2期でバッサリ切り捨てられたようなあのやるせなさ。

 ドラマにおける“カップル萌え”“カップル推し”のエネルギー量は、視聴者の作品に対する思い入れの強さに比例する。適当に流し見しているドラマであれば、続編や新シリーズで登場人物が替わったり、設定に大きな変更があってもさほど気にはならないものだ。

ガチ勢の哀しみと痛みが生み出すエモーショナルな熱

 そういう意味でも『おっさんずラブ-in the sky-』は、内包する熱量が非常に高いドラマである。SNS等で評価が分かれるのも、単純な「肯定派」VS「アンチ」の構図ではなく、前作&“牧春”に思い入れが強いガチ勢の哀しみと痛みとが生み出すエモーショナルな熱があってのこと。一見ネガティブに見える書き込みも、底に流れているのは作品や登場人物への深い愛、なのである。

 愛、といえば、単発ドラマ時代から春田への叶わぬ思いを胸に抱き、輪廻転生を続けている武蔵にもそろそろ幸せになって欲しい。その相手が誰であっても、祝福する準備はできているお。

(上村 由紀子)

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