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愛する人の薬物依存との戦いを描く『ビューティフル・ボーイ』の壮絶

ビューティフル・ボーイ (字幕版)
発売日: 2019/08/14
メディア: Prime Video
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マーシーこと田代まさしがまたも逮捕された。しみけんとこの人は本当にもう…という感じだが、SNS上にも「信じていたのに…」「またか…」という失望や落胆の声が上がるとともに、薬物依存の恐るべき「逃れがたさ」を思い知ったという声が多く寄せられていた。

ただ、個人的にはこうした感情を数日前に味わっていた。映画『ビューティフル・ボーイ』を鑑賞していたからだ。今をときめくティモシー・シャラメ、スティーヴ・カレルが父子役で共演する本作は、父親の目線から、息子の薬物依存に向き合う姿を描く。

言ってしまえば、映画は同じ展開の繰り返しである。ニックが薬物に溺れる、デヴィッドが更生施設などなんらかの手立てを打つ、ニックは依存から立ち直ったか、に思えたが…やはりまた薬物に手を出してしまう。この展開が幾度となく繰り返される。

もちろん、そのループ構造そのものが、依存症との対決の実情なのだろう。終盤でカレル演じるデヴィッドが、「疲れた」とこぼすシーンは、それまでのプロセスを目撃していた観客の誰も否定できないだろう。

脇を固める演者もいい。デヴィッドの再婚相手カレンを演じたモーラ・ティアニー。彼女にも印象的なシーンがある。薬を買う金欲しさにデヴィッドの家に侵入したニックとその彼女。2人の車を自身の車で追いかけていたカレンだが、運転しながら涙を流し、しまいには車を止めて追うのをやめてしまう。どんなに距離を縮めて、ニックを捕まえたとしても、「距離」は縮まらない。彼女の涙はそのことを悟った涙なのだろう。

映画は、いまのデヴィッドとニックの姿を映すとともに、依存症と無縁だった頃の素直でかわいい少年ニックとデヴィッドの姿をカットバックで描く。そうすることで、父がどれだけ息子を愛していたかと、現在のニックの姿がどれだけ彼にとって悲痛なものかを観客に追体験させる。ちなみに、タイトルの『ビューティフル・ボーイ』はジョン・レノンの楽曲であり、幼いニックを流すためにデヴィッドが歌う子守唄だ。

終盤には、娘を薬物依存で亡くしたという女性が登場し、「娘が死ぬもっと前から、私は喪に服していました」と告白する。もしかしたら、デヴィッドも同じような心持ちだったのかもしれない。かつての、彼が「すべて」と評した息子の姿はもうそこにない。

本人のみならず、家族をも苦労させる薬物依存との戦い、徒労を本作は教えてくれる。子どもを持つ親ならより身につまされるものかもしれない。

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