記事

高倉健が「最後に愛した女性」に残された疑問点

1/2

没後5年で明かされた「17年の日々」

11月10日で俳優の高倉健が亡くなってから5年になる。

文藝春秋から、高倉健が養女にしたといわれる小田貴月(おだたか)(54)という女性の手記『高倉健、その愛。』が出版された。


映画『あなたへ』に主演した俳優の高倉健さん。東京都世田谷区で。2012年7月27日撮影 - 写真=読売新聞/アフロ

帯に「人知れず2人で暮らした17年の日々。孤高の映画俳優が最後に愛した女性による初めての手記」とある。

さらに、「高倉からのリクエストはたった一つ、『化粧をしないでください』でした——。」という意味深な言葉も添えてある。


森功『高倉健 七つの顔を隠し続けた男』講談社

彼女にまつわるさまざまな疑問は、ノンフィクション・ライターの森功が丹念な取材に基づいて書いた『高倉健 七つの顔を隠し続けた男』(講談社)に詳しい。

その多くの疑問に、一つでも二つでも答えているのではないかと思って早速読んでみた。

この一文は書評ではないから、はっきり書いておきたい。期待は見事に裏切られた。

私も編集者の端くれだから、この本に私がタイトルを付けるとすれば、『家政婦は見た! 高倉健の私生活』とでもするだろう。

その理由はおいおい書いていきたいと思う。

この本は、私のような健さんファンにとって興味深い本ではある。世田谷区瀬田の高台にある豪邸の中で、高倉健という人間が、どのような生活をし、何を楽しみにしていたのかはよくわかる。

春は鶯、夏は線香花火、秋は小鳥と“一騎打ち”

たとえばこうだ。


小田貴月『高倉健、その愛。』文藝春秋

2階にある3つの小部屋は衣類専用で、南極、北極対応のダウンも毎年のように増えていった。1階の床下収納には寝袋が20枚近く整列していた。

一人だったときは、朝は自分で珈琲を淹(い)れる。スポーツジムに行って、フルーツをジュースにしてもらって飲んだり、腹が減って我慢できなければ、カロリーメイトをつまんだりしていたそうだ。

東映を離れてフリーになってからは、一時期サプリメントに凝って、店を出そうかと真剣に考えたことがあった。

ロケに行くときは、薬屋が引っ越すほどの量を用意した。アルコールは一切やらない。タバコも映画『八甲田山』の撮影の時にやめた。

料理と飲み物は常温か暖かいもの。肉食第一主義で、魚類は好まないが、外食でのすしは例外。

子どもの頃は虚弱体質で、8歳の時に肺浸潤(はいしんじゅん)(結核の初期)にかかり、1年間休学した。心配した高倉の母親は、兄妹3人の食事とは別に、毎日鰻を食べさせたという。そのため長じてから鰻は食べなかったそうだ。

江利チエミが急逝すると、いろいろなことが嫌になって海外へ完全移住しようとしたことがあった。移住先は「ご飯をとれば香港。ハワイは何てったって風だね」。私も同感である。

四方をモチノキや白樫の木々に囲まれ、絶対にのぞかれないようにした家の中では、このような暮らしをしていたそうだ。

「春の訪れは、鶯の幼鳥の鳴き声に告げられ、夏は庭のベッドで海水パンツ日光浴。夜風に吹かれ、愉しんだ線香花火。秋にはピラカンサ(トキワサンザシ)の熟れた実をついばむ尾長に、玩具の銃を手に一騎打ちに挑み、初冬、落ち葉のあまりの量の多さを見かねて、思わず箒を手に加勢してくれた奇跡の落ち葉掃き」

「家政婦は見た」にふさわしいレシピの豊富さ

この本の中で、丹念に書き込まれているのは食事のことである。たとえば、亡くなるまで欠かさず食べていたというグリーンサラダについて、

「葉物の主役はルッコラ。それにレタス、ロメインレタス、サラダ菜、アンディーブ、白菜、などから三、四種類をミックスします。さらに季節によって、マンゴー、メロン、洋ナシ、林檎、葡萄、無花果などの果物を盛りつけ、胡桃、松の実、アーモンド、ビスタチオ、カシューナッツ、ヘーゼルナッツなどから、数種類をトッピングします。ドレッシングは、エキストラバージンオリーブオイルと、イタリア・モデナ産二十五年もの熟成バルサミコ酢、醤油を隠し味に数滴加え、挽きたての黒コショウをブレンドしました」

その他にも、中華メニュー、イタリアンメニューなどの作り方にもかなりのページを割いている。

私が「家政婦は見た」とタイトルを付けたいと考えたのが、おわかりいただけるだろう。

『週刊新潮』(11月14号)で、貴月の義理の母親・河野美津子(86)が、貴月の3度の結婚歴を明かした後、こう語っている。

「詳しい事情は何も知りませんが、健さんにとって貴さんは家政婦だったということでしょう。健さんは、江利チエミさんが亡くなった時、“彼女以外を愛さない”という風に言っていたんでしょう。私は健さんを信じています」

食事のレシピや映画についての記述に比して、高倉健との出会い、どうして一緒に暮らすようになったのか、高倉健の亡くなる時の様子などは、さらっと触れているだけである。

あわせて読みたい

「高倉健」の記事一覧へ

トピックス

ランキング

  1. 1

    総理がメディアに指示? 質疑話題

    BLOGOS しらべる部

  2. 2

    なぜ高学歴なのに低収入になるか

    内藤忍

  3. 3

    徴用工めぐる韓国高裁のこじつけ

    緒方 林太郎

  4. 4

    民主政権の桜を見る会 今と違い

    井戸まさえ

  5. 5

    31歳東大准教授が日本の若手叱咤

    Thoughts and Notes from NC

  6. 6

    山本一郎氏がKAZMAX氏にエール

    やまもといちろう

  7. 7

    雅子さまがまた涙 視線の先には

    文春オンライン

  8. 8

    森田知事巡る問題に舛添氏が苦言

    AbemaTIMES

  9. 9

    子ども愛せず…高学歴男性の離婚

    幻冬舎plus

  10. 10

    居酒屋無断キャンセル逮捕を評価

    宮崎謙介

ランキング一覧

ログイン

ログインするアカウントをお選びください。
以下のいずれかのアカウントでBLOGOSにログインすることができます。

コメントを書き込むには FacebookID、TwitterID のいずれかで認証を行う必要があります。

※livedoorIDでログインした場合、ご利用できるのはフォロー機能、マイページ機能、支持するボタンのみとなります。