諸外国に比べて、日本の子どもたちの「自己肯定感」の低さが指摘されています。「自己肯定感」とは、ありのままの自分を受け止めたり、自分の可能性を信じることができる感覚のことです。子どもたちが学習者・生活者として自立していくうえで大切なものです。
そのため、現在進められている教育改革においても、主体的・対話的に学習を進める上で、重要な要素とされています。また、子どもたちの「自己肯定感」は、意欲向上や学力向上と関連していることも明らかにされています。
では、どうしたら、子どもの自己肯定感を伸ばすことができるのでしょうか。
1.「自分に自信がある」子どもは小学生で5~6割
図1は、全国の小学1年生から高校3年生の子どもたちに、「自分に自信がある」かどうかを尋ねた結果です(小学1年生から小学3年生の子どものことは、保護者に回答してもらっています)。
これをみると、「自分に自信がある」子どもは、小学1年生で6割で、残りの4割の子どもは「自信がない」という結果です。また、学年が上がるとともに「自分に自信がある」の比率は下がり、小学6年生までは5割台ですが、中学生は4割台、高校生は3割台になります。
子どもたちにとって、自分に自信を持つことは、なかなか難しいようです。


2.保護者のかかわりが子どもの自信を持つことに影響
では、どのような保護者のかかわりが子どもたちの自信につながっていくのでしょうか。ここでは子どもへのかかわり方と子どもの自信に関するデータをもとに、考えていきましょう。
(1)失敗したときにはげます
図2をみると、ふだん子どもが失敗したときに、保護者が「はげます」かかわりをしているほど、子どもが自信を持っていることがわかります。子どもの挑戦を認め、失敗してもはげますかかわりが有効だと言えるでしょう。

(2)失敗したときに振り返らせる
また保護者が、「失敗したら何が悪かったのかを考えること」を伝えているほど、自信を持っている子どもの割合は高くなっています。これは、はげますだけでなく、何が悪かったのかを振り返らせることが重要だと言えそうです。

(3)自分の考えを持つように促す
さらに図4より、保護者が「子どもに自分の考えを持つように促す」かかわりをしているほど、子どもが自信を持っていることがわかります。小学生であっても、自分の考えをもつことを促すことは自信につながっていると言えるでしょう。

子どもたちが「自己肯定感」を持ったり、持ち続けたりするのが難しい現状において、保護者や周囲の大人には、子どもたちが自分の良さに気づき、自信を持って未来を切り開いていくための支援が求められます。自信を持っている子どもが比較的多い小学生の時期から、自信をキープしたり、自信を持てるようになるための働きかけやかかわり方をしたいものです。
<調査データ>
・東京大学社会科学研究所・ベネッセ教育総合研究所共同研究「子どもの生活と学びに関する親子調査 2018」(2018年7月~9月実施)
https://berd.benesse.jp/shotouchutou/research/detail1.php?id=5279
※また小中高生の「自己肯定感」(自分の良いところが何かを言うことができる)について分析し、プレスリリースを行っています。合わせてご覧ください。
(https://berd.benesse.jp/up_images/research/20180531release21.pdf)
プロフィール
野﨑友花
ベネッセ教育総合研究所 研究員
初等中等領域の子ども、保護者、教員を対象とした意識や実態の調査研究を担当している。現在は2015年から毎年実施している小学1年生~高校3年生対象の「親子パネル調査」(東京大学社会科学研究所・ベネッセ教育総合研究所共同研究「子どもの生活と学び」研究プロジェクト)を主に担当。