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予備校今昔 - 片桐由喜

◆大学受験予備校

ユルい高校に通った私は自発的に勉強することができず、一浪して大学へ入った。浪人中は予備校へ通い、「高校の時、こんな風に教えてくれたら、私もできたのに」と自分の馬鹿さ加減を棚に上げて、高校の教師を恨んだものである。そのくらい、予備校講師の教え方は上手であった。

後年、自分が予備校講師のアルバイトをするようになって合点がいった。講師の授業の様子とそれを聞く予備校生の表情が録画され、予備校職員が監視、評価。予備校生も講師の授業評価をする。そして、評価の低い講師は次学期から姿を消す。わかってもわからなくもよい授業なんかできないのである。

しかし、私はこれまた自分の不出来は見ないふりをして、予備校産業は時代の徒花で、遠くない将来、なくなるだろうと思った。教室で講師らが放つ強烈な営業モードと、彼らの心ここにあらずの雰囲気に嫌気がさしたからかもしれない。実際、私が通った予備校はもう地元にはない。なにより、大学全入時代を迎え、予備校は厳しい経営を強いられているのだろう。

◆公務員予備校

それに代わって、今、隆盛を誇っているのが公務員予備校である。バブル崩壊後、安定を求めて公務員志望の大学生が激増し、その傾向は続いている。大学の授業が公務員試験に対応していないのは当然である。ここに商機ありと見込んだのが、公務員予備校なのであろう。今では、公務員予備校に通わないと公務員試験には合格できないと大半の学生が考えているし、実際、公務員予備校が果たす合格への貢献度は高い。

辛いのは親である。大学の授業料に加えて、予備校の授業料を払うことが求められる。少しでも親の負担を減らそうと学生たちはアルバイトをする。公務員予備校に通い、空いた時間にアルバイトして、いったい、いつ大学へ来るのか? そう、来ないのである。

「先生、公務員予備校の授業があるから休みます」と言ってくる。そんなとき、絶対許さいと言おうものなら、パワハラ、アカハラ(アカデミックハラスメント)と言われかねない。なにより、「先生のせいで公務員試験に落ちた。一生、恨んでやる」などと泣かれたら、寝覚めが悪い。そこで、大学教員は学生のためではなく、わが身の保身のために学生の欠席届を受け取るほかない。

  

◆予備校から学ぶこと

一方で、予備校講師の理解度を上げる教え方、テクニックからは学ぶ点が多い。彼らは教えるプロであり、そのプロとしての能力が身分の安定と収入を保障する。

翻って大学は、とはいわない。ただ、私たち大学教員もまた「教員」と呼ばれる以上、教えること、わからせることに無頓着であってはならないことだけは間違いない。

と、今日、私が担当した前期の授業評価を受け取って痛感した。そこには、「板書の字が汚い」、「早口」、等々。同じことがこの十数年、書かれている。予備校の講師なら、とっくの昔に教壇から放逐されている。

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片桐由喜(小樽商科大学商学部 教授)

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