- 2019年11月06日 11:19
書くことは看板を掲げること
2/2文章をお金にしていくということ
一見するとこれでは、書くことをコミュニケーションツールに使っているだけのように思えるかもしれません。でも、お金をもらってコラムを書く人になりたい、という人にも、やっぱり同じことが言えると私は思います。
お金をもらってコラムを書きたい、と言う方に、ではどんなメディアで書いてみたいですか? と尋ねると、案外、具体的な媒体名は出てこないのです。どこで書きたいかがイメージされている方が、当然目標までは近道なのでしょうが、名前が出てこない事情も決して分からないでもありません。というのも実際、ネット発の書き手がコラムの連載をもたせてもらえるようなウェブメディアというのは、今やそんなに多くないからです。

マネタイズの難しさが一向に解決されず、一時ネット上に無数に登場したオウンドメディアも、今年に入り続々と閉鎖しています。これに加えて、質の良いコンテンツを手間ひまかけて作り出せる老舗の雑誌やスキャンダル報道の得意な週刊誌がいよいよネット上で本格稼働を始め、著名人の含蓄ある読み物や、つい見てしまう下世話なスクープがどんどんインターネットに出ています。他方で、Amazon Prime VideoやNetflixなど、さまざまな動画サービスもまた、面白さの計算し尽くされた動画コンテンツを次々と公開します。私達の隙間時間が熟練された時間泥棒にみるみる奪われていく中で、手を伸ばせば届く場所にいる書き手によるコラムというのは、残念ながら、以前ほど必要とされなくなっているように感じます。
書けるメディアがなくなる、メディアで書いても読まれなくなるというのはつまり、文章でお金を稼ぐ=原稿料をもらう、というシンプルな構図でやっていくことが難しくなるということです。だからこそこれから、書いてお金を稼いでいこうと考えるのならば、どこで、何をどんな風に書いて、どうやってお金にするのか、その仕組みそのものを、ゼロから自分で考えなければなりません。幸か不幸か今、日々沢山のウェブサービスが出てきているし、それらを思わぬ形で使った新しい形のコンテンツもたくさん発明されています。
たとえば、YouTubeには最近、LINEのやりとりの体裁でテキストが流れて物語が進む、短編小説のような動画が沢山アップされています。現状、多くはワンパターンの展開で、拙い文章で進みます。でも、だからこそそこに書き手の工夫の余地がないとは決して言い切れないと思います。ライターの夏生さえりちゃんは、随分前からInstagramで写真とともに手書き日記をアップしているし、同じくライターのカツセマサヒコ君も、Instagramで短い小説を書いています。
そういうのは自分とは関係ないインフルエンサーの仕事だから、なんて思うのでなく、物書きだっていよいよ本腰を入れて、新しい表現の場や形、新しいビジネスの形を考えていかなければなりません。そんな私達が、ひとまずのところやっておくべきことというのも、やっぱりまずは、看板を立てることだと思うんです。
自分がどういう考え方を持っていて、どんな世界を提示することができるのか。すでに沢山の人が集まっている場所に、まずはそれが分かるような看板を立てておく。そこで少しでも集まってきてくれたお客さんを大事にして、そこからいずれ、より自分にとって最適な表現ができる場所が見つかれば、そこにお客さんを連れて行く。
私達は毎日忙しく、ネットにはすでに食傷気味になるほど沢山の情報が溢れているけれど、それでも「出会えてよかった」と思えるようなコンテンツとの出会いは決して多くはありません。誰かが真摯に自分と向き合って、沢山の葛藤や煩悶の末、ようやく掘り出した宝物のような文章には、同じように長らくそれを必要としていた人に「出会えてよかった」と、しみじみと言わしめるだけの、強力な力があると私は思っています。だからこそ、そんなあなたの文章との出会いを待っている一人でも多くの人に、しっかりと届くものを作る。そのための努力を、惜しんではいけないのです。
- 紫原 明子
- エッセイスト



