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【読書感想】もっとさいはての中国

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 どうやらカナダの南京問題がらみの騒動は、中国共産党に支援された秘密結社・洪門が議員たちを操っているといった、単純な構図だけではなさそうだ。

「僕たち台湾出身者は、日本に対しては是々非々の立場だ。日本は台湾を植民地にしたが、インフラの整備などよいこともたくさんやった。過去の日本は中国を侵略したが、戦後は多額のODAを投じて中国の復興を援助してきた。一面的な視点だけで批判するべきじゃないし、それをカナダの政治に結びつけるのもどうかと思うね」

 エリックは言葉を継いだ。

「しかし、特に中国大陸の出身者たちはそれができない。彼らは最も悪い形の民族主義をカナダに持ち込んで政治化しているんだ。だから結果的に、民主的ではない国家(=中国)が、民主主義社会を背後から操るような構図も生まれてくる」

 南京問題をめぐって、華人議員たちと洪門や中国共産党をつなぐ線は意外に薄い。

 むしろ問題の背後にあるのは、民主主義的なカナダ社会における移民問題だ。中国系住民の増加によって選挙民の民族構成が変わることで、中国大陸出身者の論理や、香港の中華民族主義者たちの論理が政策に反映されやすくなっているのである。

 民主主義国家が多数決の原則に従うかぎり、「民主主義的ではない集団」が、その数で、「民主主義的ではない政策」を進めていくことができるのです。

 なぜカナダやアメリカで、「日本批判」的な政策や条例が成立するのかというと、「それを支持する中国系の人たちが多いから」なのです。 「海外で生活していて、バラバラになっていきがちな中国系の人たちの民族的なアイデンティティを刺激し、自分たちに投票してもらう」ために、「反日」が利用されている面もあるようです。

 このまま中国の影響力が世界にさらに浸透していけば、日本にとってはやりづらい時代になっていく可能性は十分にありそうです。

 もっとも、中国は国内に高齢化や格差という大きな問題を抱えており、これからは、内政が重要になっていきそうではあります。

 人間は、「安全」が確保され、経済的に豊かになると、次は「自由」を求めていくものでしょうし。

 「怪しいところも併せ持った大国」でもある中国の魅力が詰まった本だと思います。

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