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「身長5フィートの巨人」が逝く

 5フィートとは約1m52cmであり、去る10月22日に92歳で亡くなられた緒方貞子さんの身長だった。緒方さんは女性初の国連公使、日本人初めてのUNHCR(国連難民高等弁務官事務所)高等弁務官、JICA(国際協力機構)理事長を務められた。特に高等弁務官の際は旧ユーゴ崩壊やルワンダにおける民族対立に伴う難民支援、イラクに抑圧されたクルド人難民の救済などに、まさに命を張って駆け回られた。世界各国からは、小柄な日本人女性がとてつもなく大きな仕事を果たしたとして、尊敬を込めて「5フィートの巨人」と称された。

 緒方貞子さんとはいくつかの接点があった。緒方さんの曽祖父の犬養毅総理の秘書官を、昭和6年から私の祖父・船田中が務めていた。当時祖父は衆議院議員になったばかりだったが、その頃は国会議員と公務員を兼ねることが出来たようだ。五・一五事件(昭和7年)の日は、たまたま選挙区に戻っていて難を逃れたと聞いている。

 私が緒方貞子さんに直接お会いしたのは、UNHCR高等弁務官を務められていた平成3年夏だったと記憶する。当時私は自民党外交部会長として、半年前の湾岸戦争の現場を視察したのち、ジュネーブに立ち寄り高等弁務官を表敬訪問した。また緒方さんがJICA理事長の時、ODA予算が減額されようとしていたが、わざわざ私の事務所にお出でいただき、予算の重要性を切々と訴えられた。

 緒方さんのご活躍を支えていたものは、「人間の安全保障」という理念に基づく強い信念と、徹底した現場主義だったと思う。現場に立って、現場を見た経験が何よりも強いことを、緒方さんはよく理解していたようだ。危険な場所に赴く時は、ヘルメットと防弾チョッキまで着けて乗り込んだと聞く。

 緒方さんのご功績には、「女性初の」とか「日本人初の」という形容詞がつきまとうが、私はそういうものも飛び越えて、一人の人間としてとてつもないことを成し遂げたとするのが、正しい評価だと思っている。とは言いながら、最近の日本人は海外に出たがらず、務めたくないという傾向を感じ懸念している。緒方さんが切り開いた道を歩む日本人が、どうか後に続いて欲しいと切望している。

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