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コミュニケーションが苦手な場面緘黙症と自己診断 友人との距離もつかめない 背景にはいじめや家族不和〜生きづらさを感じる人々31

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「すごく塞ぎ込んでいたときに、ツイッターで見つけたんです」

西日本に住む黒川真弓(仮名、24)は、ツイッター内で「生きづらさ」というキーワード検索をし、筆者のアカウントを見つけた。取材中も、緊張のためかなかなかこちらの顔を見ない。

小学生のときのいじめで漠然とした不安感に襲われる?

「ときどき、漠然とした不安に襲われるんです。理由もなく、月に一度くらいでしょうか。今の自分が情けないですね。話せないと、自己表現できません。誤解を与えてしまい、暗いと呼ばれたりします。気持ち悪いとか、得体のしれない人と思われたりしてしまうんです」

不安を感じても、安心して話す相手がいない。そんな夜にツイッターで私を見つけた。どうやら、その原因は小学校5、6年生のときにうけたいじめではないかと思っているようだ。いじめはどんなものだったのか。

「暴力はありません。だから、自分の体が傷つけられることもなかったんです。いじめを受けるまでも距離は置かれていたとは思います。疎外感を抱くような感じではありました。自分の周囲に幕があるような感じでした」

はっきりとした排除ではないが、いわゆる操作型いじめに苦しんだのだろう。つまりは、言葉によって、周囲をコントロールしようとするものだ。周囲も気がつかないのか、あるいは、気づいていて放置したのか。周囲は真弓の気持ちを無視した。

「周りからすれば、仲が良く見えたりします。だから、いじめとからかいのグレーゾーンのようなものです。一緒に帰ったり、遊んだりはしました。相手からの、『私たちは友達』という言葉でコントロールされるようなものです。『苦しい』と口に出しても、『どうして?』と言われ、相手にされない。自分の苦しみが黙殺されるような感じです」

小5のときの担任は、クラスの人間関係には無関心だった。小6のときの担任は、熱心な教員だったというが、熱心すぎたのか、真弓は担任に自分の気持ちを言えなかった。

ネットで「緘黙症」を知る

いったい、自分は何者なのか。ネットで検索をし、「緘黙症」だと自己診断をした。アメリカ精神医学会の診断基準マニュアル(DSM―Ⅴ)によると、以下の通り。

・他の状況で話しているにもかかわらず、特定の社会的状況で、話すことが一貫してできない。

・その障害が、学業上、職業上の成績または大人コミュニケーションを妨げている。

・その障害の持続期間は、少なくとも1ヶ月(学校の最初の1ヶ月だけに限定されない)である。

・話すことができないことは、その社会的状況で要求される話し言葉の知識、または話すことに関する楽しさが不足していることによるものではない。

・その障害はコミュニケーション症(例:小児期発症流暢症)ではうまく説明されず、また自閉スペクトラム症、統合失調症、または他の精神病性障害の経過中にのみ起こるものではない。

また、世界保健機関(WHO)の「疾病及び関連保健問題の国際統計分類」(ICD)の第10版((ICD―10)では、「精神及び行動の障害」の中にある「小児(児童)期及び青年期に特異的に発症する社会的機能の障害」として分類されている。

医療機関に行く前に、ネットの情報を頼りに、精神医学的な、あるいは心理学的な自己分析をする人は少なくない。真弓も類似のサイトで情報を当てはめた。ただ、中学生の頃からは、学校という場にも馴染んできたようだ。

「中学生のときに、硬式テニス部に入ったんです。そこで話せる子ができました。小6のときにクラスが一緒で、徐々に話せるようになったんです。親近感があって、その子を通して、話せる友達もできました。この頃は、安定していて、部活が私の居場所でした」

なかなか視線を合わせなかったのは、初対面の筆者に緊張していたといよりも、この「場面緘黙症」のためだろうか。

一方、家族には違和感を抱いていたという。

「家族とは、心のつながりが希薄だったんです。どんな悩みを言ったとして、受け止めてくれる人はいませんでした。自分の弱さをカバーしてほしいのに。友達が話をしている『家族』とは違って、毎日顔を合わせるのに、家族の中の距離は遠いままなんです」

高校へ進学すると、他人と比べてしまい、再度孤立する

高校に進学すると、教室へ入れなくなる。進学校のため、「勉強ができる人と比べると、自分は(成績は)普通だ」と感じるようになり、勉強へのプレッシャーがかかった。中学校で改善された人間関係が再度、うまく気づけなくなる。孤立感を抱く。

1年の3学期から3年の3学期まで保健室へ登校していた。高校で進学校に入学したのだから、いい大学へ行きたいとの思いもあったが、現実とのギャップに苦しんだ。

なぜ行けなくなるのかを、親と話をしようとした。しかし、両親に言われたのは、次のような言葉だった。

 「他にも苦しんでいる人がいる」
 「親が食わせているのに」
 「お前はわがままだ」

そのため、真弓のやる気がなくなっていく。そして、自分に残るものがあるのか、を考えていくうちに、「死にたい」「消えたい」という気持ちが強くなっていった。

自傷行為をしたこともある。しかし、「これのどこがいいのか?」と思っただけで、一回でやめた。依存することはなかった。でも、死への気持ちは強くなった。

自分の気持ちをどこに吐き出せばいいのか。学校の先生にも言えない。きょうだいにも言えない。居心地のいい友達もいなくはない。でも、「暗い面を見せると、離れてしまうのではないか」と思って、内面を見せられない。人を頼ることができずにいた。

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