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政府に売られた、「幸せの国」ブータンの若者たち 外国人留学生の闇(2) - 出井康博 (ジャーナリスト)

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今、日本への留学をめぐって、政府高官を巻き込んだ大スキャンダルが巻き起きている国がある。「幸せの国」として知られ、今年8月の秋篠宮家の訪問先としても注目を集めたブータンがそうだ。

ブータンは2017年から18年にかけ、政府主導で日本への留学制度を推進した。その結果、700人以上の若者が日本の日本語学校へと留学することになった。80万弱という同国の人口を考えると、その数は決して小さくない。

政府主導の制度とはいえ、留学生は費用を借金に頼っていた。その額は日本円で100万円以上に上る。20代のエリート公務員の月収でも3万円程度というブータンでは、かなりの大金である。

ブータン人留学生たちには母国からの仕送りが望めない。借金を返済しつつ、日本での生活費や学費も自ら稼いでいかなければならなかった。借金漬けで来日し、アルバイトに追われる生活を送る点で、ベトナムなどの“偽装留学生”と同じ境遇だ。

ただし、ブータン人たちは“偽装留学生”とは異なり、勉強を目的に来日していた。また、日本で待ち受ける生活についての予備知識もなかった。結果、彼らは日本で不幸のどん底を味わうことになる。

慣れない夜勤の肉体労働に明け暮れ、病を発症した者も少なくない。将来を悲観し、自ら命を絶った青年までいる。本来、留学ビザの発給対象にはならないはずの彼らに対し、日本政府が入国を認めてきた末に起きた悲劇である。

公務員以外には就職先がほとんどない

ブータン人留学生問題が起きた経緯を振り返ってみよう。

ブータンでは若者の失業が社会問題となっている。とりわけホワイトカラーの仕事が足りない。民間の産業が育っておらず、公務員以外には就職先がほとんどないからだ。そんななか、ブータン政府は2017年、失業対策の一環として日本への留学制度「学び・稼ぐプログラム」(The Learn and Earn Program)を始めた。

留学生集めからビザ取得までの実務は、「ブータン ・エンプロイメント・オーバーシーズ」(BEO)という斡旋業者が独占的に担った。BEOはこんな言葉で留学希望者を募っていた。

「日本に留学すれば、日本語学校への在籍中でもアルバイトで1年に110万ニュルタム(当時の為替レートで約178万円)が稼げる。大卒者には日本語学校の卒業後に就職が斡旋され、最高で年300万ニュルタム(同約480万円)の年収が見込める。希望すれば大学院への進学だってできる」

こうした甘い誘い文句を信じ、職にあぶれた若者がプログラムに殺到した。

BEOに騙された

しかし、来日した留学生を待っていたのは厳しい現実だった。日本語の不自由な彼らができるアルバイトは、夜勤の肉体労働ばかりである。母国では見たこともない弁当の製造工場や宅配便の仕分け現場などで、夜通し働く日々を強いられた。しかも留学生に許される「週28時間以内」という就労制限を守っていれば、借金の返済や翌年分の学費を貯めることもできない。彼らには、法律違反を承知で働くしか選択肢はなかった。

筆者は昨年3月からブータン人留学生の取材を続けている。彼らの生活は、来日当初から悲惨だった。日本語学校が「寮」として用意した3DKの一軒家に、20人以上の留学生が押し込んでいたケースもあった。夜勤バイトを続けているため、顔色が悪かったり、体調に異変が起きている留学生も当時から多かった。

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