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キャッシュレスで泣いた業界、笑った業界――ATMと人員を削減できる「銀行」が一人勝ち? - 森岡 英樹

 10月1日からの消費増税に伴い導入された、キャッシュレス決済のポイント還元で各業界が揺れている。2%の割引対象となったコンビニではキャッシュレス決済比率が急激に高まっている。ファミリーマートでは「増税前の20%弱から増税後の6日間で25%程度まで上昇した」(澤田貴司社長)という。


キャッシュレス還元のポスター ©共同通信社

 経産省の推計によれば、キャッシュレス決済のポイント還元制度で1日平均10億円分が消費者に還元されているという。この調子でいけば2800億円の当初予算は来年3月末までに枯渇する見通しで、財務省は追加の予算措置を検討し始めた。

 一方、還元対象とならず売上減に直面する大規模事業者からは「消費増税が逆風になっている」(サイゼリヤ・堀埜一成社長)と怨嗟の声が挙がる。イオンの岡田元也社長は「めちゃくちゃなことが堂々と行われた。不公平であることに反省がない、政治が崩壊している」と痛烈に批判。ポイント還元は来年6月末までの時限措置だが「延長されないという保証はない」(ライフコーポレーション・岩崎高治社長)と身構えている。

 悲喜こもごもの小売業や外食産業だが、それを尻目にほくそ笑んでいる業界も。

キャッシュレスで銀行が潤う理由

「ポイント還元で表面的に潤っているのはキャッシュレス決済の事業者やクレジットカード会社だが、その裏で銀行が実質的な利益を得ています」(経産省幹部)

 実は、キャッシュレス決済を利用するため、消費者が自分の銀行口座からQRコード決済アプリに入金する際、銀行は決済事業者から手数料を徴収している。また銀行の口座情報を参照する家計簿アプリでも、データをやりとりするための利用料を事業者が支払う仕組みとなっている。さらに、現状、キャッシュレス決済の9割を占めるクレジットカード会社の大半は、実質的に銀行のグループ企業にほかならない。

 メガバンク幹部が明かす。

「キャッシュレス化が進めば、いずれ銀行はATMを設置する必要がなくなるでしょう。ATM1台あたり毎月30万円かかる現金の保有・デリバリーコストが削減できるほか、店舗も大幅に縮小できるのです。その分、銀行員もいまほどいらなくなり、失職者も出ますが、経営的にはキャッシュレス化は願ったりかなったりなんです」

 キャッシュレス決済によるポイント還元の裏で、密かに肥え太る銀行だが、公取委は見逃してはいない。金融機関は優越的な立場を乱用して決済事業者から過大な手数料を要求していないか、実態調査に乗り出す方針だ。銀行の一人勝ちは許されない。

(森岡 英樹/週刊文春 2019年11月7日号)

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