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海自派遣の裏にサウジの凋落

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■ エネルギー支配力減退

第2はエネルギー市場支配の終焉である。かつてサウジは石油市場を牛耳っていた。世界最大の原油輸出国でありサウジ産の原油供給を代替できる国は存在しなかった。それゆえに特別な地位を占めていた。石油の安定供給が崩れれば世界経済は混乱する。だから何をしても許される。また何かあれば厚遇される国となったのだ。しかし、ここにも衰えが見える。エネルギー分野でも存在感は低下しているのだ。

まずは非中東産石油の発達がある。海底油田、ヘビータール、オイルサンド開発拡大やシェールオイル登場である。それによりサウジ産ほか中東石油の市場支配率は低下した。

天然ガス普及による石油需要減少も大きい。安価でありCO2排出量も少ないため石油からの転換が進んだ。またガス田分布は中東に偏在していない。これもサウジ以下の産油国の価値を引き下げている。

写真)ペンシルバニアでのシェールガス採掘。シェール革命は石油採掘も可能とした。それにより米国の石油採掘量は増加し原油輸入の必要はなくなった。最近の中東無関心や米大使館のエルサレム移転もその影響があるといわれている。
撮影)Ruhrfisch CC BY-SA 3.0

今後は再生可能エネルギーも拡大する。これも石油の価値を減ずる。サウジの力を削ぐ要素となる。

その結果どうなるか?サウジの特恵的地位は弱体化する。エネルギー支配力を失ったサウジは普通の産油国となるのだ。

■ 将来性の見通し不良

第3は将来性の見通し不良である。サウジはこれらの低落傾向を覆せるだろうか?それは難しい。改革による回復は上手くはいかないからだ。そもそも支配体制と改革の相性は悪すぎる。サウジは支配層が権力を独占する体制である。政治も経済も支配階層が完全掌握している。

経済改革はこの支配構造を危うくする。新興経済層が政治支配層の経済独占を崩す形となる。支配階層は経済権益を損なうのだ。その点で改革は実施しがたい。改革は国益を生む。だがそれは支配層が独占してきた経済利益の毀損を意味する。政治権力を独占する従来支配層にとっては受け入れがたい選択肢なのだ。

実際にも改革は進捗していない。例えば現体制は3年前に改革案としてビジョン2030を発表した。しかしその後に進捗は聞かない。低落傾向からの脱出は難しい。長期的見地でもサウジの地位低下は続くのである。

写真)「少女は自転車にのって」のYOUTUBEに挙げられた英語版予告編。
改革の進捗としては「女性が自動車を運転できるようになった」以外は聞かない。なお以前は映画『少女は自転車にのって』で描かれるように女性は自転車に乗ることも抑制された社会である。
  出典)YOUTUBEに挙げられた英語版予告編から。

以上がサウジの地位低下のあらましである。そしてイラン対立回避を選択した原因の一つでもある。イランと対立するサウジの重要性は低下した。結果、イランの相対的重要性が向上した。(※3) これも日本の選択を促進した一要素である。

(※1) 以前の日本政府は米国に対しても毅然と政経分離の原則を貫いていた。交易の自由や経済性追求を主張し革命キューバから砂糖を輸入しニクソン訪中以前の新中国から各種の物産を輸入していた。また米国への再輸出規制といった圧力にも反論をしている。例えば大連産エビ加工品再輸出の圧力には「中国産大正エビは日本輸入時に尻尾を切って識別する」で切り抜けている。

(※2) 「米制裁とイランの原油と天然ガス開発動向」『オイル・リポート』2019年10月9日号(オイル・リポート,2019)pp.4-8. イランのムサビ報道官による「日本から提案を受けている」旨の発言を紹介している。

 その仔細は"Japan extends credit line to Iran for oil purchases"
https://persiadigest.com/en/news/7665/japan-extends-credit-line-to-iran-for-oil-purchases

としても報道されている。(オリジナルはNHK WORLDのニュース:掲載期限切れ)

(※3) 踏み込んで述べれば「『地域における将来の覇権はどちらが握るか』といった視点からの判断もありえた」だろう。

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