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放送批評懇談会セミナー2019 発言要旨~ラジオ・テレビの処方せんを考える~

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総務大臣政務官任期中に取り組んだ放送改革が、NHKのインターネット同時配信の承認とともににわかに注目を集めています。先日は「放送に関する批評活動を通じて、放送文化の振興を図り、放送の発展に寄与すること」というユニークな目的を掲げるNPOである放送批評懇談会に招かれ、放送改革をテーマに、理事長を務める上智大学の音好宏先生と対談を行いました。

今回の対談の背景には、毎年7000億円という安定かつ非常に大きな受信料収入に支えられるNHKが、資本力をフル活用して、ドキュメンタリーや報道にとどまらず、バラエティやドラマを製作し、さらに今回、地上波放送のインターネット同時配信をスタートすることに対しての、民放各社からの民業圧迫ではないかという批判。加えて、民放、特に地方局はインターネットの普及と人口減少に伴う視聴者の減少、それに伴う広告収入の減少に、将来の不安を覚えているということがありました。

この対談で私が伝えたかったことは、

  1. NHKはガバナンス改革に真摯に取り組むべし
  2. インターネット同時配信は、NHKと民放の協業によってグローバルにスケールさせるべし
  3. NHKは受信料収入に上限を設け、増収の際には受信料そのものを安くすべし
  4. 民放は、放送局からコンテンツ制作流通事業に転換すべし
  5. 放送は社会の安定装置として存続すべし

の5点です。長くなりますが、以下、議事録を公開しますので、放送改革の重要性と背景について広く知っていただき、私たち国民の生活に必要な情報流通機能として、放送が健全に発展するよう、見守っていただきたいと思います。


音:NHKの同時配信が承認されました

小林:私が政務官になった2017年から、本気でこれに取り組んだと言っていいと思ってるのですが、ずっと動かなかったこの話がなぜ今回動いたのかというと、2つの背景に整理できます。一つは放送業界の皆さんが、どうしても国内市場だけを見て戦っていること。もう一つは民業圧迫とNHKが言われたときに、いやいや、その可能性はありませんと断言できる仕組みがなかった、やはり懸念を払拭できなかったということだと考えています。

民放の皆さんがネット配信するのは民間ビジネスですから、株主の皆さんや自社の営業成績で考えていただければいいと思います。

しかし、日本全体の戦略からすると、この国内のシュリンクするマーケットだけで戦っていては、経営的にも伸びないですから、一緒にグローバルに見ていただきたいので、これは国としても、また私も政治家としても方向性を示す必要があると思っていまして、その1つが今回の改革とつながっているのです。

キー局各社との議論の過程で、ネット動画配信は同じプラットフォームじゃないと困るとおっしゃった。一方で、NHKは独自でやるということだったので、それは一緒にやりましょうと提案しました。一緒にやることで、NHKもグローバルに展開でき、同じプラットフォームでNHKのコンテンツも民放のコンテンツも出すことで初めて、インターネット配信やってよかったねという未来が描けると思いました。

音:BBCなどインターネット配信に本当に積極的ですし、放送局ってここまで展開できるんだというようなことを、先を見据えてやっているように思いますが。

小林:NHKには海外配信を頑張ってほしいと政府は思っています。日本のコンテンツ情報が正しく届いてほしいから。でもこれまでは、どうしても地上波志向で、NHKワールドをとにかく各国の地上波のコンテンツとして入れさせてくれと。でもこれは、近隣諸国の資本量を考えると、全く太刀打ちできないから、だったらネット周りに絶対行った方がいいと言ったんです。一方でNHK単独で行く意味があるかというと、全然なくて、むしろ民放さんも頑張って同じプラットフォームでやった方が、スケールするはずです。

音:今回の同時配信承認にあたり、NHKのガバナンス改革を条件にされました。

小林:私は、NHKがどのサイズだったらいいのかということを皆さんと議論したいです。受信料の支払い率を上げることはやはりやるべきですよね。現状、8割の人が払っていて、2割の人が払っていない。それはフェアではないから、100%を目指そうとする動きは正しいと思っています。しかし、100%を目指していくと、現在の受信料収入7,000億がもっと増えていくわけです。そのまま自動的に増えていけば、それは普通に考えると、NHKも事業としては全部使いたいですよね。必ずそれは肥大化を起こすということなのです。ですから、受信料収入の上限を、例えば7,000億で決めるのか。いやもうむしろ5,000億だと決めてしまうことを先にやらなければ、NHKの改革は進まないと思っているんですね。

先日、同時配信を決定したタイミングとともに、受信料の値下げをNHKさんが発表していましたが、これは若干その考え方を理解されたと私は捉えています。要は常に7,000億あって、受信料収入が増えていて、局舎の建て替え積立金以上に内部留保として現金がたまっていく。これ以上収入増やす必要があるかどうか。むしろ払う人が増えた分、頭割りが増えるわけだから、受信料の負担額は減っていくことで、NHKの肥大化はしないという証明にもなる一方で、受信料を払う国民にとっても納得感があるのではないかと思います。

音:私もその意見、半分賛成、半分別なことを思っています。常にこのNHKの受信料収入が増えていくとすると、徴収率が上がって、今回は値下げをするという形で、上限というのを決めて、それより超えたときには値下げをする。値下げをするということで、何かすったもんだするよりは、上限を決めたら残りの部分はどこかにプールしてしまって、例えば放送とか、または新しいメディアの開発とか、または新しい技術の研究とかにお金を回す方がいいんではないのかとも思うんですけれども。

小林:なるほど。その前提の考え方として、まずはNHKの本体の事業としてのサイズを、私はざっくり、5,000億ぐらいで回せるようにしてもらった方がいいんじゃないかと思っています。現状、地上波2チャンネル、衛星で2チャンネルプラス4K、8Kで、ラジオもあって、これはやっぱりどう考えても多いですよね。例えばEテレに関しては、いいコンテンツですが、リアルタイムである必要があるかというと、学校教育で主に使われているので、むしろこれはネット側に持っていった方が役に立つと思います。受信料収入が7000億得られたとして、そんな感じでスリム化することで5000億で経営できれば、その差額の2000億で研究費用やメディア開発に回すというのは悪くないとは思います。

しかしその前にやった方がいいと思っていることがあって、皆さんへの提案でもあるんですが、地方に記者さんが足りなくなってきている現状をなんとかしたほうがよいと思っています。

今回台風被害のひどかった千葉の南房総は報道が極端に少なかった。各局映像を撮りにいけなかったんだと思うんです。これだけ自然災害が頻発することを考えると、NHKと民放で一時情報を撮りに行くクルーを共通化する仕組みがあってもいいんじゃないかと思うんです。それをNHK vs 民放的な発想で民放だけでやるんじゃなくて、むしろNHKに任せてしまって、災害時の映像や国賓の来日とか各局で特徴を出しづらいけれど国民に必要な情報などは、みんなで共益金として払っている受信料で担っていただく、こういう考え方で私はやるべきじゃないかと思います。

音:先日、AbemaTVに出演されて、夏野(剛)さんと一緒に、もう少しネットと放送って協調していろんなことができるんじゃないかとおっしゃっていたかと思うんですけど、まさに今の話ですね。

そうですね。ローカル局の話にもつながってくると思うんですけれども、今私たち、情報を受け取っている側の感覚としては、もう二極化していると思っていて、もう全世界共通及び日本共通の大きな話題をまず知りたいという話と、ものすごくローカルに寄った情報を知りたいということがあると思います。インターネットは、個別に知りたい情報を取りにいくのに非常に優れており、放送が担うのは、前者2つだと思っています。

キー局及びNHKというのは大きな話一方でローカル局はもう本当に〇〇市に特化したコンテンツが欲しいわけですけど、残念ながらそれが少ないんですね。

もう1つは、災害時に感じたんですが、ネットは「今何をすべきか」が伝えているんですね。ユーザーによってそれがさらに拡散していく。放送の多くが、こんなに被害が大変ですと状況を報道していますよね。でも、避難所で待っている人たちとか、家で避難している人たちが知りたいのは、今から何をしたらいいかなんですよ。放送は、本来一斉に情報を届けることが得意なわけですから、本来届けるべき情報コンテンツの整理というのが、放送とインターネットでできれば、もっと役割は再定義されて、価値は上がるんだということです。

音:先ほどNHKのサイズという話がありましたけど、片方でよく言われるのが、関連会社についてはどう考えていますか。

小林​:これはもう今日この場ですから話をしますけれども、このNHKの同時配信を議論するとき、総務省の皆さんに私から提案をしたのは、やっぱりこれを機にNHK改革をやると。そのときに必ず世の中から批判があるのは、グループ会社の話、民業圧迫の話、そして受信料収入の話ということがあったわけです。ですから、これはきちっと整理するということを条件とすることにしました。複数社、もう整理するということになっていますので、よかったと思っていますが、まだやれるところが私はあると思っています。

一方でこれは、NHKの中での人事とか給与の話とかなり密接に絡むと思いますので、そこはやっぱりNHKの中で整理するのに時間かかると思いますが、しっかりやっていただきたいということは伝えていますし、進捗をチェックしていくことも必要だと思っています。

ひとつ明確にしたいのですが、何でこんなにNHK改革にこだわっているかというと、私、NHKはとても大事だと思っているんです。民主主義にとって、国民の共くこ通認識を作るという意味で、全国に共通の情報が届くというのはとても大切なことです。そのNHKが、やっぱりスクランブルにした方がいいんじゃないかとか、もう要らないんじゃないかと言われるので、これ国として危機的な状況だと思うんですね。ですから、国民から見て、ああ、このNHKだったら必要だよねと言われる状態にすることが、私はすごく重要なミッションだと思っているので、NHKの皆さんも本質はそう思っていただいていると思いますが、お互いに合意できる方向に、しかも明るい未来が開ける方向に改革をしたいと思っていますので、一緒にやれたらなと思います。

音:ありがとうございます。話は変わりまして、5Gなんですけれども、本格化していく中で、通信放送の内容が相当変わっていくと思いますが、政策的にはどういう形で展開すべきだと思っていらっしゃいますか?

小林​:立案時点で総務省がこだわったのは、都市部だけがネット環境がよいというのはやめようということです。今までは人口カバー率というのでキャリアに規制をかけていたんですが、そうすると、5年間で50%カバーしてください、としたら、東名阪やったらカバーできちゃうんですね。それはフェアじゃないので、今回は、日本全土を10キロメッシュで区切って、この10キロメッシュをいつまでに何%カバーしてくださいとして、都市部だけが埋まるということにならないようにしています。5Gはローカルのデジタルデバイドを解決するチャンスがあり、インターネットの価値が出やすいので、ローカルにこそ5Gを展開したいということを言っています。

もう1つ、このキャリアが展開する5Gに加えて、日本が注力するのは、ローカル5Gです。これはラジオ局さんやテレビ局さんも独自で5Gを展開することができるという仕組みです。今でいう、一般的になったWi-Fiを、このホテルのエリア環境にしますね。同じようなことを5Gでやろうということです。ですから皆さんが持っている局舎内とか、もしくは中継に入るゴルフ場だけを、ある局が5Gエリアにして、そこにテレビカメラ持っていて、ライブ配信でテレビカメラからの映像を5Gで本局に飛ばして、どんどん映像を流していくみたいなことができる。こういうことをやっていきたいと思いまして、これに対して、さらに設備投資は減税するということをやろうとしています。

音:先日、長野の須坂に行ったんですけど、まさに今の、5Gの実証実験をやっていて、全然遅延しないですし、スポーツ中継も全然いいですし、絵もきれいですしというので。ローカルから5G化していくというのは、すごく可能性があるなと――まさにそういうことですよね。

小林​:放送業界には5Gの力を過信して不安な方もいらっしゃるかなと思うので、説明しておきたいのですが、5Gで、無線のところはとても早くなります。高速・多数接続で低遅延で、いわゆる早いということなのですが、その電波で拾った後の情報は、光回線で送ります。ここの光回線が抜群に速くなるわけではないので、詰まります。ですから、放送が全部5Gに取られるという幻想は捨てていただいた方がいい。

一方で、例えば、特定のスタジアムの中だけだったら、電波と基地局だけで折り返せますから、すごく速くなります。そのスタジアム内で映像をどう使うかというのはとても便利になるし、もちろん今よりも5倍、10倍は一般の方も、5年、10年以内に早くなるので、今やっているラグビーワールドカップみたいなリアルタイムのライブ発信が見やすくなります。だからといって、放送波が要らなくなるというわけではなく、むしろ皆さんがつくり上げたコンテンツの出口が増えるし、そして活用方法が広がると思っていただいて、どう使うか考えていただくといいと思います。


音:私もローカルをすごく大事にしていかなきゃいけないと思うんですけど、人口が減少していく中で、東京のような首都圏も減少するでしょうけど、ローカルも減少していって、県庁所在地にどんどん人が集まっていくというのが、ますます進んでいくのではないか。とすると、放送が今まで担っていた広くあまねくの問題と、それからもう片方で、今のローカルでBWAみたいなものを使っての5Gができる。だけどその5Gができるのは、ローカルの中で、とは言いながら、比較的県庁所在地に象徴されるような、比較的ローカルの中の人が多いところに行ってしまって、「ポツンと一軒家」的なところというのが取り残されてしまうんじゃないかのかという感じがするんですけど、その辺りはどういうふうにお考えですか?

小林​:論点は幾つかあると思いますが、一方で、そういうところをまさに無線でやろうと今、舵を切っているんですね。NTTが課されているユニバーサルサービスといって、どこでも固定電話がつながらなきゃいけないというふうになっているわけですけど、今、実はそこ、無線でもいいじゃないかと法改正しようとしています。どんどん無線を使おうとなっている。むしろそういうところが拾われるようになれば。

一方で、地方局こそこのインターネット、5G時代はチャンスがあると見ていまして、先ほどのベタベタのローカルコンテンツがみんな欲しいのです。ベタベタのローカルコンテツは今までは圏域にしか流せなかったのが、5Gで世界中に流せるようになるんです。

TVerで観られるというのは第一段階でしょうけど、AmazonプライムとかHuluとかNetflixにどんどん載せていけばいいと思いますね。動画コンテンツのプラットフォームで、世界中にコンテンツを売れば、インバウンドに効果があって地域経済にも貢献できる。すでに北海道のローカル局がアジアにコンテンツ売って、今、北海道にアジアからの観光客増に貢献している。自治体とビジネスモデルを組んで、来た観光客の収益は自治体だけでなく放送局にも入る仕組みにすれば、ひとつの売り上げソースとして確立できると思います。自治体から受託をして、観光客何人以上呼んだら幾ら以上の報酬、みたいな契約をどんどんやるといいと思うんですね。

私の地元、福山市の例でいくと、福山市主催のマラソン大会に約7,000人参加するんですが、スポンサープログラムで、一番高いのが、30万くらいなんです。一方で、一昨年から始めた、せとうち福山-鞆の浦トライアスロンは、2年目で300人ぐらいの参加なんですが、民間に営業かけていたら、通信会社さんに300万、化粧会社さん300万のスポンサーがつきました。何を言いたいかというと、自治体主催のローカルのリアルイベントって、たくさん集客力があってコンテンツ力があるのに、広告を取ってくるノウハウやコンテンツを展開するノウハウは自治体はもちろんないので、機会損失しているんですね。もし自治体からローカル局が受託をしたら、全部企画して、広告取って、映像撮って、ネットで流して、放送して、その映像を再利用するなど、ビジネスに展開できるはずなんですね。

ご自身を放送事業者の枠にはめずに、コンテンツをどうお金に変えられるか考えると、放送事業者じゃなくて、情報事業者になっていただいて、情報をつくるところから世界に持っていくところまでやろうとすれば、放送のビジネスチャンスはもっと広がると思っていて、放送の未来は明るいと私は思っています。

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