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「写り込み」権利制限規定の拡充をめぐる同床異夢?

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日経新聞の土曜日の夕刊に、著作権法改正絡みの記事が登場した。

「文化庁は2日までに、スマートフォンでのスクリーンショット(画面保存)やインターネット上の生放送・生配信に他人の著作物が偶然写り込んでも違法とならないことを、著作権法で明示する方針を固めた。2019年の通常国会で同法改正案の提出を目指す。」(日本経済新聞2019年11月2日付夕刊・第10面)(強調筆者、以下同じ)

「スクリーンショット」が強調されているあたりに、今春一大騒動になった「ダウンロード違法化」問題をかなり意識しているのだろうな、ということが推察される記事なのだが、実は、その「ダウンロード違法化」に関するパブコメの募集が先月30日で締め切られた*1タイミングを見計らったかのように、令和元年10月30日付の「写り込みに係る権利制限規定の拡充に関する中間まとめ」に対する意見募集が10月31日から開始されている(期間は11月30日まで)*2

平成29年4月の文化審議会著作権分科会報告書*3で、「三層構造」を基調とする権利制限規定の在り方論が打ち出され、さらにそれを踏まえた平成30年著作権法改正によって、少なくとも「権利制限」の分野に関しては著作権法は”柔軟化”の方向に大きく舵を切ったと言える。

そして、その流れを引き継ぐかのように、「写り込み」に関しても、極めて評判が悪かった平成24年著作権法改正で出来あがった条文を修正するための議論が、著作権分科会法制・基本問題小委員会で進められている、というのが今の状況である。

現行法の写り込みに関する規定(30条の2)は、

第30条の2
写真の撮影、録音又は録画(以下この項において「写真の撮影等」という。)の方法によって著作物を創作するに当たつて、当該著作物(以下この条において「写真等著作物」という。)に係る写真の撮影等の対象とする事物又は音から分離することが困難であるため付随して対象となる事物又は音に係る他の著作物(当該写真等著作物における軽微な構成部分となるものに限る。以下この条において「付随対象著作物」という。)は、当該創作に伴って複製することができる。ただし、当該付随対象著作物の種類及び用途並びに当該複製の態様に照らし著作権者の利益を不当に害することとなる場合は、この限りでない

というものだが、このうち青字部分の要件の見直しについて検討した結果を整理しているのが、パブコメにかかっている前記「中間まとめ」。

そして、そこに記されている改正の方向性を簡単にまとめると、以下のようになる。

◆ 「写真の撮影」「録音」「録画」への対象行為の限定
・「典型例として想定された3つの方法以外にも、日常生活等において一般的に行われる行為であって、写り込みが生じ得るものについては、権利者に与える不利益の程度に特段の差異がないのであれば、技術・手法等を限定せず広く対象に含めることが適当である。」(3頁)
※ 新たに対象に含める具体例として、「生放送・生配信」「スクリーンショット、模写等」が挙げられており、さらに(写り込みとは若干場面が異なる、という留保を付しつつも)「自らが著作権を有する著作物が掲載された雑誌の記事を複製する際に、同一ページに掲載された他人の著作物が入り込んでしまう場合」も許容される対象に含めることが提案されている(4頁)

◆著作物創作要件
・「固定カメラでの撮影等の場合にも、不可避的に写り込みが生じる場合が多く想定されるところ、本規定の主たる正当化根拠は、権利者に与える不利益が特段ない又は軽微であるという点にあるため、著作物を創作する場合か否かは必ずしも本質的な要素ではないと考えられる。このため、著作物を創作する場合以外も広く対象に含めることが適当である。」(5頁)

◆分離困難性・付随性
・「本規定の正当化根拠については、その著作物の利用を主たる目的としない他の行為に伴い付随的に生じる利用であり、利用が質的又は量的に社会通念上軽微であることが担保されるのであれば、著作権者にとって保護すべきマーケットと競合する可能性が想定しづらい(したがって権利者の利益を不当に害しない)という点に本質があるものと考えられるところ、これを担保する観点からは、「付随性」が重要な要件であると考えられる。」
・「一方で、「分離困難性」については、「付随性」を満たす場合の典型例を示すものではあるが、この要件を課することが、本規定の正当化根拠からして必須のものとは考えられず、「付随性」や「軽微性」等により権利者の利益を不当に害しないことは十分に担保できると考えられる。このため、日常生活等において一般的に行われている行為を広く対象に含める観点から、この要件は削除することが適当である。」(以上6頁)

◆軽微性
「軽微な構成部分といえるか否かが上記のような総合的な考慮によるものであることを明確化し、利用者の判断に資するようにするため、法第47条の5第1項の規定(「・・その利用に供される部分の占める割合、その利用に供される部分の量、その利用に供される際の表示の精度その他の要素に照らし軽微なものに限る」)も参考にしつつ、考慮要素を複数明記することが適当である。なお、ここでいう「軽微」については、利用行為の態様に応じて客観的に要件該当性が判断される概念であり、当該行為が高い公益性・社会的価値を有することなどが判断に直接影響するものではないことに注意が必要である。」(7~8頁)

◆対象支分権
「「公衆送信(送信可能化を含む)」、「演奏」、「上映」等を広く対象に含める観点から、第2項と同様に、「いずれの方法によるかを問わず、利用することができる」という形で包括的な規定とすることが適当である。」(8頁)

果たしてどんな表現になるのか、今一つ予測しづらい書きぶりになっている箇所も一部見受けられるものの(後述する「留意事項」まで念頭に置くと、なおさらそう思う)、これだけ見れば、相当なレベルでの”柔軟化”が志向されている、と理解するのが素直な読み方、ということになるのだろう。

ここまで徹底的に条文を修正しなくても、「対象行為の限定」や「対象支分権」等に関しては、現場レベルではすでに「類推適用」で正当化することが多かった*4

また、そこまで難しく考えなくても、閉ざされた世界の中での、著作権者の利益と正面から衝突しない付随的かつ軽微な利用なら、現実に問題が起きることはあり得ない、という前提で行動するのが自分は正しい在り方だと思っているので*5、法改正に頼らないと動けない、というのでは、ちょっと情けないような気もする。

ただ、世の中の”寛容”さが失われつつある昨今の状況に鑑みると*6、「30条の2の要件見直し」という王道路線での対応には、やはり大きな意味がある、ということになるのだろう。

・・・で、ここまでの話なら、メデタシメデタシ、で済むのだが、今まさにこの論点が議論されている法制・基本問題小委員会の議事録を見ていたら、若干気になるところもあったので、もう少し突っ込んで取り上げておくことにしたい。

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