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- 2019年11月04日 14:10
【台風19号水害】「市営住宅に入れたけれど…」郡山市は布団も浴槽も無し。いわき市は風呂付、本宮市は布団やヒーター用意。「そこまで手が回らない」負担増で悲鳴あげる被災地職員
2/2【本宮市はヒーターや布団など用意】
いわき市住宅営繕課の担当者も「建物だけ提供して、家財道具は入居者に用意していただいています」と話す。「東日本大震災の時は日赤から『家電3点セット』(洗濯機、電子レンジ、テレビ)がありましたが、今回は無いようです。家財道具も水没して使い物にならなくなってしまっているという事情は良く分かっているのですが…。今回はあくまで一時的な入居という事で、3カ月間で民間賃貸住宅に移っていただくように考えています。せめて布団だけでもというのも分かるのですが、今のところ市で用意する予定はありません。冬を前にして朝方は特に冷え込みますしね。被災された方のお気持ちはよく分かるのですが…」
ただ、郡山市と違うのはお風呂。せめて入浴だけでも出来るようにと浴槽設置済みの新しい市営住宅を用意した。「風呂を準備しろと言うのはちょっと厳しいかなと考えました」といわき市の担当者は話した。
一方、本宮市は浴槽や照明、ガスコンロ、ファンヒーター、人数分の布団を用意するという。
連休返上で対応にあたっている市建設課の担当者が取材に応じた。
「市営住宅は元々、入居するにあたって初期費用が必要です。浴槽、照明、カーテン、エアコンなどなどは入居者が用意します。そして、退去する際にも全て片付けて入居時の状態にしてもらいます。そういうものなのです。しかし、今回はこういう状況なので市が最低限のものは購入します。なるべく早く対応したいと思いますが、購入もあるので入居出来るのは早くて11日以降になると思います」
つまり、住んでいる自治体によって行政の支援も市営住宅の抽選倍率も全く異なる。どの自治体も「福島県の民間賃貸住宅借り上げ制度(原則1年間)を利用してアパートで暮らすまでの緊急入居」としているが、これとて、各市町村での受け付けが始まった後に自力でアパートを見つけて契約してしまうと「自己資力あり」とみなされて家賃補助(上限6万円)の対象とならない(水害発生から受付開始日までに被災者自身で契約した場合は対象となり得る)。
災害弱者への県の冷たさが表れているが、ある自治体の担当者は「被災された方から『冷たい』と言われます。県は市町村と違って日頃、住民と接する機会が少ないからではないでしょうか」と語った。

【追いつかぬ罹災証明発行】
とはいえ、被災自治体職員の負担増も深刻。郡山市職員は「罹災証明が無いと住まいに関する支援を受けられないのですが、その発行が全然追い付いていません」と悲鳴を上げている。「罹災証明の発行を待っている人が既に5000人ほどに上っています。発行するには現地調査をして浸水や損壊の状態を見極めないといけません。しかし、1日に廻れる数には限界があります。他市職員の応援ももらって休日返上で取り組んでいますが、なかなか進まないのが実情です。そうなると現在、市営住宅に入居している方がアパートなどに転居するにも時間がかかってしまい、入居を希望する被災者がいつまでも入れない悪循環になってしまいます。入居している市民へのケアまで手が回らないのです」。市営住宅に空きが生じた場合には高齢者や母子世帯が優先されるという。
「職員の数にも限りがあり、通常業務をこなしながら水害対応もしなければいけません。しかも、今回は県議選もあります。選挙業務に携わる職員数は既に部署ごとに割り振られているので人を充当しなければいけません」
本宮市の「本宮市安達郡選挙区」は、定数1に対して立候補者も1人。現職の佐藤政隆氏が無投票で当選を決めた。有権者が1票を投じる権利を行使する事無く当選者が決まってしまうのは民主主義の理念に反するが、ある本宮市議は「たまたま無投票になったから良かったけれど『選挙どろこじゃない』というのが正直な気持ちです。候補者も出陣式はやりましたが、後は注視しましたからね。それどころでは無いですよ」と話す。
通常業務に加えて水害対応、それに選挙。被災自治体任せの現状では、とても市営住宅に入居した市民の布団や浴槽まで用意出来ないという職員の気持ちも理解出来る。国をあげて取り組む「有事」なのだ。
(了)
- 鈴木博喜 (「民の声新聞」発行人)
- フリーライター



