記事

そして混乱の舞台は北に移った。

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小池東京都知事が「都民のために戦う!」と怪気炎を上げていた「東京五輪マラソン・競歩札幌移転問題」。

前日には、

「専門家は「IOCはマラソンの中止や東京の五輪開催剥奪という最悪の事態もあり得る」と危惧を示す。」
最悪の場合「東京開催」剥奪も!? 小池都知事、五輪マラソン問題でIOCと徹底抗戦も…識者「都がいつまでも不満述べるなら…」 - ZAKZAKより

などといった記事まで踊っていたのを見て、未だに地元でオリンピックやってほしくないなぁ、と思っている者としては、不謹慎ながら「剥奪されるまで頑張れ!」という気分にもなっていたのだが(苦笑)、残念ながら、ことはあっけなく決着した。

「東京都と国際オリンピック委員会(IOC)、東京五輪・パラリンピック大会組織委員会、政府によるトップ級協議が1日、都内で開かれ、五輪のマラソン・競歩の開催地を東京から札幌に変更することを決めた。都の小池百合子知事は「同意できないが、IOCの決定を妨げることはしない。合意なき決定だ」と述べ、IOCが提案した移転計画を受け入れた。」(日本経済新聞2019年11月1日付夕刊・第1面)(強調筆者、以下同じ)

記事によれば、協議に同席したメンバーは、五輪組織委の森喜朗会長、政府の橋本聖子五輪相で、IOC関係者はジョン・コーツ調整委員長だけだから、日本側で「東京でやる」という意思統一がされていれば、”押し負ける”ような構図では本来ない。

そもそも、IOCがいかに権威を振りかざしたところで、本番まで一年を切ったこの時期に五輪を丸ごと代替開催できるような国や地域は世界中のどこにも存在しないのであって、本来、交渉上のポジションは、開催側として準備を進めている東京都と日本の五輪組織委が圧倒的に有利なはず。

それにもかかわらず、公表から半月、おそらくは最初に打診があってからもそう時間をかけずに「合意なき決定」に甘んじてしまう、というところに、日本が海外でことごとく押し負けてしまう(貿易協定の話しかり、日本企業の海外進出の話しかり・・・)理由の一端が思いっきり見えてしまった気がする。

小池知事にしてみれば、「東京でのマラソン・競歩開催」を守ることに政治生命を賭けるほどの意義を見出せなかったのかもしれないし、追加の経費負担がない、ということを確認できれば、自分の役目は果たしたことになる、という思いだったのかもしれないけど、「そんな無体なことを言うなら、東京都は一切五輪に協力しない」というカードを切って膠着状態に持ち込めば時間切れで勝てる戦だったようにも思えるだけに、なんでそこで”いい子”になっちゃうのかな、というのが、率直な感想である*1

ちなみに、「アスリート・ファースト」云々で今回の札幌移転を支持する声も一部にはあるようだが、この点に関しては、1日の日経朝刊に掲載された北川和徳編集委員のコラムでのコメントが全てだ、と自分は思っている。

「アスリートファーストとは何なのか。アスリートが望むことは千差万別だ。暑さは苦手なのが普通とはいえ、得意とする選手だっている。マラソンランナーなら新国立競技場の大観衆の前でゴールしたいという夢だってある。9月のMGCで東京を走った日本代表は当然、地の利を生かしたい。そんなさまざまな思いをアスリートファーストで十把ひとからげにくくれるわけがない。」

「本当はアスリートに観客、ボランティアまで含めての「健康・安全ファースト」、あるいは最高のパフォーマンスを披露できる「競技ファースト」の視点で考えるべきだ。ただ、それはアスリートそれぞれの意思とは必ずしも一致しない。それを認識しないでアスリートファーストを連発するから、中身のないきれい事に聞こえる。」
(日本経済新聞2019年11月1日付朝刊・第33面)

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