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『「中小企業の改革」を進めないと国が滅びる』から考えてみた、扇情的な見出しの弊害

「中小企業の改革」を進めないと国が滅びる的な指摘を見かける機会が増えています。

改めて言うまでもなくの規模の経済性、流通を始めとした日本の産業構造として効率問題や、設備産業的な視点からの大企業と中小企業の効率問題など、大学で経営やマーケティングを選択された方々にとっては授業で頻出するテーマでもあり表面的には同意される方も多いだろうと推測します。

ただ、零細企業の立場からすると、その非効率なシステムは誰が作ったのだ?という疑問が浮かんできます。

更に言うなら、インターネットを初めとしたテクノロジーを活用することで、たった一人であっても世界を相手に稼ぎを挙げられる時代にあっては、大企業のほうがよほど効率が悪い側面もあったりしないか?と考えるのは私だけでしょうか。

こちらの記事では、広告モデルにおける旧来型の産業構造についての疑問が呈されています。

旧来のメディアもそうなんですが、広告という時点で、広告代理店や広告営業など、どんどんオーバーヘッドが乗っかって来るわけですよね。そうすると、直接のコンテンツ制作者に対してはクライアントが出した金額の2~3割が支払われればいいほうです。

テキストメインのサイトなら、その2~3割から外部のライターさんに対して原稿料が支払われるわけですが、その金額はさらに少なくなる。これってつまり、従来のメディアの構造はコンテンツ制作者に対してのエネルギー変換効率が悪いということなんですよ。

このような構造問題はわたしが20代に仕事をしていた音楽業界のレコードやCDにおいても現存している構造問題と言えます。

更に言うなら、農産物のフェアトレードの問題はどうでしょう?

比較的知られたところとしては、コーヒー豆のフェアトレード問題があるかと思います。

最近知ったところとしては、天然ゴムの問題も。

この番組を見れば、天然ゴムが現代社会において必要不可欠な生産物、それも工業的な代替手段が現在見当たらないにも関わらず、生産者が正当な収入を得られていないという構造問題が見えてきます。

現代社会においては、様々な生産物の先物市場が存在します。資本主義経済は見えざる手がうまく機能してくれるはずなのに、中小の事業者や生産者が蚊帳の外になっている問題はどうするのでしょうか?

わたしは、零細規模ながら会社の形態で20年、フリーの立場を含めると35年仕事をしてきました。

ミュージシャンとしての仕事は、アーティストの事務所との取り引きもありますが、ソニーや東芝EMIといったレコード会社との直接取り引きは普通のことでした。

更に個人であってもレコーディングした作品では隣接著作権が認められるので権利収入も得られるメリットがあります。

会社にした理由は、個人だと契約できる金額の上限があるからとディレクターにアドバイスされたのがそもそものところでした。

会社にしてから忘れられないのは、パナソニックと直接契約をする機会があり、その当時は月末請求で翌月15日に支払いをしてくれる制度があったときには、大変ありがたいと感じてました。

これに対して印刷業界は、30万を超えると手形支払いとかいうナゾのルールがあり...ここから先の言及は自粛

規模の経済性、見えない手やら、市場原理からすれば「中小企業の改革」を進めないと国が滅びる的な指摘は妥当な面があることも事実だとは思います。

ただし、そこには資本主義の問題なのか、市場原理の問題なのかを特定することはわたしにはできませんが、このテクノロジー時代に『小さいものを大きくすれば解決』というロジックは今のご時世からるすると、あまりセクシーな感じがしないのですが、皆さんはいかがでしょう(苦笑)

申し分のない、学歴、ビジネスキャリア、学者や政治家経験をもったひとたちが、我々が生きる社会を成功に導くこともあれば、破綻寸前にしてしまうこともあります。

『知の逆転』という書籍で、チョムスキーはこんな指摘をしています。

アメリカは資本主義の国ということになっているが、コンピュータやインターネット、飛行機やら薬など人々が使うほとんどのものは公共部門が関係し、税金が使われて開発されたものだと。

つまり市場原理と言いつつ、多かれ少なかれ政府の援助を受けて生き残っている面があり、資本主義とは何なのかということになる。と指摘しています。

他方、唯一市場原理だけで動いているのが金融部門で、だから何度も破綻するのだとも。

そして、引用したいのがこの箇所。

ゴールドマン・サックスの例を見てみましょう。彼らは、破綻するとわかっていた住宅ローンを基に有価証券を発行しました。その際自分たちのコストはカバーされているようにして、相当な利益を得ましたが、外部性については考慮していなかった。

中略

彼らの住宅ローンの失敗が、システム全体を崩壊させるという外部性をはらんでいるのに、市場原理の中ではその部分は考慮されないのです。だから金融危機を招くことになった。

「中小企業の改革」を進めないと国が滅びるという主張が市場原理に照らして合理的であるならば、同じくチョムスキーのこの指摘も大変興味を引くものとなります。

そもそも市場原理が破壊的なので、企業というものがデザインされたのです。企業自体がもう既に市場原理に反しているのです。

今日は国が滅びるというお題からヒント得たので、同書でのジャレド・ダイアモンドが主張する『文明が崩壊する5つの要素』を紹介します。

  1. 環境に対する取り返しのつかない人為的な影響
  2. 気候の変化
  3. 敵対する近隣諸国との対立
  4. 友好国からの疎遠
  5. 環境問題に対する誤った対処

歴史を見ればこれら要素全てが起きる必要はなく、1つの要因から崩壊した文明があることにすぐ気がつくことができます。

つまり、原因はさまざまなところにあり、ひとつのことだけに着目すれば問題が解決することはないという事です。

そういう意味で以下のジャレド・ダイアモンドの指摘は様々な場面で参考になると思います。

よく人は、「幸せな結婚生活を送るために一番大切なことは何ですか」と聞くわけですが、幸せな結婚にとって一番大切なことは「結婚における一番大事なこと」を探さないということです。

なぜなら、幸せな生活のためには、セックス、子供、経済面、相手の家族といったさまざまな三八余りの要素がそれぞれにうまく機能していかなければならないから。

同様に、ある社会がうまく機能していくためには、三八余りの要素がそれぞれにうまく機能していく必要がある。一番大事な一つのことに絞り込めないのです。

毎度繰り返しで申し訳ありませんが、扇情的な見出しは確かにクリック数を稼ぐことは可能かもしれませんが、物事の本質を誤って認識させる可能性があることを、見出しをつけるメディア側はもっと認識する必要があると思います。

逆説的に個々人が表面的な見出しに流されずに考える力を備えることの重要性であったり、メディア・リテラシーを身につける重要性という話にもなる訳ですが...

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