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【台風19号水害】病院もスーパーも酒蔵も仏壇も水没。「内堀知事、庶民の被害も視察してくれ」。風で舞う乾いた汚泥、手放せぬマスク、止まらぬ咳~福島県本宮市ルポ - 民の声新聞

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【四国からも職員が応援派遣】

 本宮市内では7人が亡くなった(福島県全体では30人)。市が把握しているだけでも、床上・床下浸水した家屋は1200棟を超える。学校の体育館など6カ所が避難所となっているが、例えば本宮駅前の「モコステーション」(本宮市地域交流センター)には8人、「えぽか」(本宮市民元気いきいき応援プラザ)には70人以上が身を寄せている。「えぽか」には、愛犬と共に救出された男性が「同伴避難」を続けている。

 本宮駅にほど近い住宅では、男性が泥水に濡れた家財道具の仕分けをしていた。「災害ボランティアや友人に手伝ってもらうにしても、彼らにはどれが必要でどれを捨てて良いのか判断出来ないですからね。きちんと分けてからお願いしようかなと思ってやってます」。

 鉄道が好きで、現在も鉄道に関連する仕事をしているが、これまでに集めた鉄道関連の雑誌や時刻表、書籍なども水没してしまったという。「今となっては手に入らないものもあるんです。泥がついたまま乾かすとページが貼りついてしまうと聞いたので、泥を洗い流してから冷蔵庫で時間をかけて乾かします」と男性は話した。

 本宮市には東北自動車道、国道4号線、JR東北本線、阿武隈川が南北に、安達太良川がそれらと交差するように東西に流れている。今回、特に被害が大きかったのは東北本線の線路沿いのライン。スーパーマーケットのヨークベニマル新本宮舘町店も店舗が完全に水没。臨時休業して改修工事を進めている。福島県商工信用組合本宮支店の玄関には、見上げる位置のガラスに泥が残っている。「水がそこまで上がったんですよ」。関係者がため息をついた。

 本宮市役所は混乱が続いており、市職員も連休を返上して対応している。福島県や県内市町村職員も業務を手伝っているほか、愛媛県や香川県、高知県からも自治体職員が応援派遣されている。市民のいら立ちはピークに達しており、窓口で声を荒らげる人も。「怒られる事も多いけど、話をきちんと聴いてあげればかなり怒りも収まる。大変なのは分かっているつもりなので、頑張って傾聴します」と職員の1人。

 ある市民が言った。「本宮はさ、雑誌の『住みよさランキング』で11年連続県内1位なんだよ。それがこんなになっちゃってなあ。残念だよ」。






①②大天狗酒造や谷病院を視察した内堀雅雄知事。駆け足での視察に、本宮市民からは「もっと庶民の被害も見て欲しい」との声も
③医療器具が泥まみれになってしまった谷病院。少しずつ診療を再開している=福島県本宮市本宮南町裡
④異口同音に語られる「『8・5水害』より酷い」。これからは「10・12水害」を教訓として記録しなければならない=福島県本宮市本宮馬場
⑤ヨークベニマル新本宮舘町店は浸水で休業中。再開に向けて全面的な工事が行われている。関係者は「再開のめどは全く立っていない」とため息をついた=福島県本宮市本宮字舘町
⑥今後の相談で市役所を訪れた本宮市民。市民も職員もマスクは欠かせない。住まいや健康など様々な角度からの支援が必要だ
⑦確認出来ただけでも愛媛県や香川県、高知県の自治体職員が応援派遣されている。福島県職員や磐梯町職員も市役所での業務を手伝っている

【内堀知事は足早に〝視察〟】

 この日は、福島県の内堀雅雄知事が本宮市を再び視察。白沢第一揚水機場や谷病院、大天狗酒造の被害を見て廻った。

 谷病院では、職員が片付けや消毒を続けながら、外来診療を再開している。駐車場の一角には、保育器などの泥まみれになった医療器具が並べられている。防災服を着た内堀知事が足早に院内を廻り、車に乗り込んだ。

 車を本宮駅前に停め、徒歩で向かったのが大天狗酒造。創業1872年。150年近い歴史を誇る蔵元も機械類が水没。立て直しを迫られている。「『8・5水害』では浸水しなかったんですよ。だから油断していたというか備えていなかったんですよね…」。同社の女性が肩を落とした。停電で真っ暗になり、隣接する「モコステーション」に避難するのが精一杯。翌朝、蔵の周辺はヒザの高さまでまだ水があり「湖のような状態だった」と振り返る。

 「自衛隊の方々には本当に助けていただきました。自力ではここまで片付けられなかったですから。水没した機械類をどうやって買い直すか、ですね。どのような支援があってどのように活用すれば再建出来るのか。まずは資料を取り寄せたり話を聴いたりしなきゃ。これから検討します。それと、もう雨に対する考え方を改めないといけないですね。どこも安全な場所なんて無いのかもしれないですね」

 内堀知事の本宮市視察は30分ほど。車で足早に郡山市の被災現場へ向かった。政治家の視察は、どれだけ時間をかけても全員が満足するものにはならないが、それでも分刻みのスケジュールに住民からは「え?もう行っちゃったの?」、「もっと庶民の状況も見て欲しいよ。俺の家とかさ」などの声もあった。福島県危機管理課の担当者は「本宮市は10月16日に一度視察している。その時は80分かけて市側から要望のあった避難所や安達太良川などを廻った。今回は県が選んだ場所で確かに分刻みになってしまった。また視察する機会があれば貴重なご意見として参考にしたい」と話した。

 マスクもせず、車で移動した内堀知事には砂塵の苦しみは感じ取れただろうか。

(了)

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