記事

45年連れ添った妻が残した『七日間』という詩 夫婦の交換日記

1/2
夫・宮本英司さんが振り返る、45年間連れ添った妻・容子さんとの歩み

当時の初任給は3万円ほど。貯金は少なかったが、容子さんの姉の後押しがあって、25才で結婚した

休日には弁当を持って川べりに行き、バーベキューをしたり、土手滑りや水遊びをして一日中楽しんだ

成長した子供たちがサッカーに夢中になってからは、ふたりの時間を楽しんだ。富士山の麓や長野県などに2泊3日で出かけるなど、各地を旅行した

 最愛の妻の旅立ちから1年8か月。妻が残した『七日間』という詩を、夫は事あるごとに読み返している。そして、今なお変わらぬ思いを詩に託し、天国の妻に贈る──。

【別写真】若かりし頃の結婚式の2人

「妻にほめられることが、私のモチベーションでした」。思い出を慈しむように、宮本英司さん(72才)は語る。神奈川県川崎市、高台にあるマンションの一室。妻と愛犬とで暮らしていた頃を思うと、部屋がなんだか広く感じられる。食品メーカーを退社した後、ドールハウス作りや陶芸などの趣味で充実した日々を送り、その都度、妻からの感想を聞くのを楽しみにしていた。2人の息子家族は毎月訪ねて来てくれるが、妻不在はやはり寂しい。英司さんは、妻・容子さん(2018年1月、小腸がんで逝去。享年70)のことを、気づけば考えている。

「葬儀も済んで、気持ちが落ち着いてきた頃、ふと思いました。このままみんなの記憶から容子のことが薄れていくのかなぁ…と。そう考えると居ても立ってもいられなくなり、容子が存在していたことを示したくなりました。私の中では、まだ何も終わっていないんです」

 2年半に及ぶ闘病中、夫婦は病室で交換日記を始めていた。出会いから結婚、出産、子育て、引っ越し、転勤、新居での生活…五十余年の日々を思いのままに綴った。

「容子の言葉を書き記したノートの中に、詩があったことを思い出しました。容子が習っていた洋裁の先生が新聞投稿していたことも思い出し、彼女が最後に残したものを形にできないかなと思い、私も投稿してみたんです」

 2018年3月9日付の朝日新聞に載った『七日間』は大きな反響を呼び、共感の輪が広がった。その後、楽曲化され、歌手・クミコが歌い、CD化もされた。

「私たち夫婦の平凡な歩みが、多くのかたの共感を呼ぶなんて、正直、びっくりしました。人は、亡くなっておしまい…本当にそうでしょうか。肉体はありませんが、日常生活の中で容子を感じる瞬間はたくさんあります。もう死んでしまったんだ、という実感はありません。“いつまでもくよくよしたらダメだよ”と周りの人は励ましてくれますが、私の中ではなかなか割り切れません。今でもしょっちゅう夢に出てきます。ふたりでかわいがっていた愛犬・小春を連れ、ドライブしてたりします。そして、朝目覚めると、夢だと気づき、泣いてしまうこともあります」

 妻・容子さんとの歩みを振り返りながら、英司さんの尽きることのない思いを聞いた──。

『七日間』

神様お願い この病室から抜け出して 七日間の元気な時間をください

一日目には台所に立って 料理をいっぱい作りたい あなたが好きな餃子や肉味噌 カレーもシチューも冷凍しておくわ

二日目には趣味の手作り 作りかけの手織りのマフラー ミシンも踏んでバッグやポーチ心残りがないほどいっぱい作る

三日目にはお片付け 私の好きな古布や紅絹 どれも思いが詰まったものだけど どなたか貰ってくださいね

四日目には愛犬連れて あなたとドライブに行こう 少し寒いけど箱根がいいかな 思い出の公園手つなぎ歩く

五日目には子供や孫の一年分の誕生会 ケーキもちゃんと11個買って プレゼントも用意しておくわ

六日目には友達集まって 憧れの女子会しましょ お酒も少し飲みましょか そしてカラオケで十八番を歌うの

七日目にはあなたと二人きり 静かに部屋で過ごしましょ 大塚博堂のCDかけて ふたりの長いお話しましょう

神様お願い 七日間が終わったら 私はあなたに手を執られながら 静かに静かに時の来るのを待つわ 静かに静かに時の来るのを待つわ

【夫婦の交換日記から】
※《 》内は容子さんが、〈 〉内は英司さんが記したものです。

あわせて読みたい

「結婚」の記事一覧へ

トピックス

ランキング

  1. 1

    満員電車ゼロ 小池知事は今やれ

    藤田孝典

  2. 2

    反権力は正義か マスコミに疑問

    BLOGOS編集部

  3. 3

    橋下氏 感染数より死亡数を見よ

    PRESIDENT Online

  4. 4

    東京の緊急事態対応は「まとも」

    木曽崇

  5. 5

    安倍嫌いでも協力を 医師が訴え

    中村ゆきつぐ

  6. 6

    キスも…慶応研修医の集団感染

    文春オンライン

  7. 7

    藤浪感染で残念な私生活が露呈

    NEWSポストセブン

  8. 8

    よしのり氏 政府の持久戦を支持

    小林よしのり

  9. 9

    政治を動かした医学専門家の責任

    篠田 英朗

  10. 10

    感染爆発の米NY 市長が問題発言

    Rolling Stone Japan

ランキング一覧

ログイン

ログインするアカウントをお選びください。
以下のいずれかのアカウントでBLOGOSにログインすることができます。

コメントを書き込むには FacebookID、TwitterID のいずれかで認証を行う必要があります。

※livedoorIDでログインした場合、ご利用できるのはフォロー機能、マイページ機能、支持するボタンのみとなります。