



■丸くなったハウジング部
AirPods Pro本体は、従来のAirPodsよりも「ずんぐり」とした見た目に変わりました。
従来のAirPodsで「うどん」や「チンアナゴ」などとも呼ばれたステム部(棒状の部分)は短くなったことからデザイン的なバランスが良くなり、耳に装着した際の見た目の違和感がかなり軽減されています。





AirPods Proのハウジング形状が、若干大きくなり丸みを帯びたのには理由があります。
従来のAirPodsではインナーイヤー型を採用していたことからハウジング部を耳に収まるサイズにする必要があり、小型化に適したバランスド・アーマチュア(BA)型と呼ばれるドライバーユニットを搭載していました。
AirPods Proではカナル型を採用したことでハウジング部のサイズ制限が緩和され、有線式のEarPodsと同じくダイナミック型のドライバーユニットを採用しています。

BA型とダイナミック型の音質の特徴は「繊細」と「迫力」の違いなどとよく言われます。BA型では非常に小さな振動素子を用いますが、その振動周波数幅が狭いために、それぞれの音域に合わせて複数のドライバーユニットを使用します。そのため音の分解能が高く、繊細な音が再現しやすいのが特徴です。
一方ダイナミック型は一般的なスピーカーでも採用される方式であり、非常に帯域幅の広い音再現が可能です。音の一体感が高い上にバランスの良い音作りも得意な方式であり、柔らかさと迫力を同時に感じられる音になります。
実際のAirPods Proの音質評価については、後日別途レビュー記事にて書きたいと思います。

■ユーザーの要望に応えたカナル型。価格のみがネックか
従来のAirPodsも驚くほどに完成度が高く、その使用感で不満が出ることはほとんどありませんでしたが、一部のユーザーや購入を躊躇している層から「カナル型が欲しい」、「ノイズキャンセル機能も欲しい」といった声が多くありました。
AirPods Proはそういった声に応える形で登場した製品であり、従来型のAirPodsと合わせ、まさに「かゆいところに手が届く」ラインナップになったのではないでしょうか。
一方、ネックがあるとすれば価格です。インナーイヤー型の第2世代AirPodsは17,800円から購入できるのに対し、1万円の価格差があります(Qi対応専用充電ケース付きの第2世代AirPodsと比較すると5,000円の差)。
元々AirPods自体が、現在の価格下落の激しい完全ワイヤレスイヤホン市場において、かなりの高級機扱いとなるほどの価格設定である上に、さらなる高級機という位置付けである点をどう評価するのかによって、本機の魅力は左右されるように思われます。
しかし、H1チップによる快適な接続性や遅延の少なさ、そして何より「装着するだけでつながる」というシンプルすぎるほどの使用感は、一度使ったら手放せないものです。その上で、自分の用途にアクティブノイズキャンセリングが必要なのか、またカナル型イヤホンが合っているのかを検討する必要がありそうです。
記事執筆:秋吉 健