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DJ主催のデモがハロウィンの夜をジャック ~#1026渋谷プロテストレイヴ レポ ~

・DJ主催のデモ「渋谷プロテスト・レイブ」がハロウィンの夜をジャック

10月26日(土)、ハロウィンで賑わう渋谷にて、プロテスト・レイヴ『We Dance Together. We Fight Together.』が開催された。テーマは「ダンスは抵抗である」。DJが主催するサウンドデモだ。出演したのはMars89、Mari Sakurai、yahyelのメンバーとしても知られるMiru Shinodaの3名。



Mars89のプレイを見るのは、渋谷WWWの年越しイベント、VENTで行われたC.Eのパーティ、記憶に新しいTHE M/ALLに続き、今年4度目。今回はサウンドデモを行うと聞き、期待に胸を膨らませて渋谷へと向かった。


キャットストリートに位置するギャラクシー銀河系から出発し、表参道ヒルズを通過して、約1時間半ほどかけて代々木公園に向かうコース。集合時刻の17時半に出発地点に集まっていたのはざっと100人ほどであったが、街を練り歩くなかで人々をまきこみ、合計で1000人近くの人が参加したようである。

・The ProdigyやBjörkの曲で表参道は異次元の熱気に

今回のデモで特徴的だったことは、シュプレヒコールやスピーチがなかったことだ。サウンドカーによるDJだけでデモを成立させ、行進に参加した人々を最後まで盛り上げることができたのは、今回出演したDJたちの力量が卓越したものだったからだと思う。隊列のなかからも「あ、今日アタリだ」という声が聞こえてきたが、まさに「アタリ」のパーティに参加したような感覚を覚えた。ある種のデモに伴う辛気臭さや悲壮感といったものとは真逆の雰囲気だったように思う。

ラフォーレ原宿前で群衆を沸かしたMari Sakuraiのプレイは圧巻であった。

The ProdigyやBjörkのビートによって、普段歩いている渋谷の街が全く異なる風景に見えたことに、筆者も少なからず感銘を覚えた。普通のデモ行進では、決して体感できないような経験だったと思う。また、デモ隊への途中参加者が後を耐えなかったことも興味深い点だと思う。オーディエンスであると同時に、ハロウィンの街を歩く人々にアピールするアクターとしても振る舞う群衆の姿に、多くのひとが魅了されたのではないだろうか。その意味で、今回目立っていたのは「フロアの人間たち」であり、DJはあくまで裏方に徹していたように思える。リーダー不在のままに群衆がひとつの主体へと形成される可能性を、今回のサウンドデモで垣間見たように感じた。


・渋谷とサウンドデモ「言うこと聞くよな奴らじゃないぞ」

渋谷でサウンドデモが行われたのは、当然今回が初めてのことではない。今回のプロテスト・レイブも、その歴史的蓄積の上に成り立っていると考えるべきだろう。社会学者の毛利嘉考によれば、渋谷のデモに転機が訪れたのは2003年、イラク戦争の反対運動が起こった時だという。

2003年3月19日、アメリカ合衆国を中心とする多国籍軍がイラクに侵攻する。それを受けて世界中の都市で反戦デモが巻き起こった。東京も例外ではない。ロンドンのように50万人という規模ではないにせよ、芝公園には5万人もの人が集まった。このデモの特徴は、あまり政治に関心がないと思われていた若者や女性たちが多く参加していたことだった。またシュプレヒコールを中心とする従来の市民運動と異なって、サウンドカーが音楽を流し、それに合わせて踊る若者や、カラフルな衣装を身にまとった参加者が多かったことも、新しい時代のデモが登場したことを印象付けていた。のちに「サウンドデモ」と呼ばれる形式が一般化していくのは、ちょうどこの時期である。

(毛利嘉考『ストリートの思想』、日本放送出版協会、P.174、2009年。)

この2000年代中頃のサウンドデモのアンセムとなった曲に、ECDの「言うこと聞くよな奴らじゃないぞ」がある。このタイトルは、デモ隊の仲間が逮捕された瞬間に群衆の誰かが叫んだセリフだという。

オタマジャクシで街を埋めつくし
オダマサノリで道をハメはずし
通りは踊り場 用事は放り出し
ポリは怒り出す 総理に言いつけろ
ありえない景色 かつてないクライシス
渋谷どーなる 知るかグローバル
ひびけ一斗缶 たたく3時間
反戦 反弾圧 反石原
言うこと聞くよな奴らじゃないぞ

(ECD「言うこと聞くよな奴らじゃないぞ」、 final junky、2003年。)

「言うこと聞くよな奴らじゃないぞ」は、デモのアンセムになるべくしてなっているような楽曲だ。なぜなら、「ある特定の意思・主張をもった人々が集まり、集団でその意思・主張を他に示す行為」という辞書の上での定義には収まらない、デモの本質にそれが触れているからである。哲学者の國分功一郎は、デモが盛んに行われるパリの事例を参考にしながら、デモ隊が発するメッセ―ジの本質を次のようにまとめている。

デモにおいては、普段、市民とか国民とか呼ばれている人たちが、単なる群衆として現れる。統制しようとすればもはや暴力に訴えかけるしかないような大量の人間の集合である。そうやって人間が集まるだけで、そこで掲げられているテーマとは別のメッセージが発せられることになる。それは何かと言えば、「今は体制に従っているけど、いつどうなるか分からないからな。お前ら調子に乗るなよ」というメッセージである。

(國分功一郎『民主主義を直感するために』、晶文社、P.17、2016年。)

「サウンドデモ」のような抗議運動に対する批判として、「騒ぐだけでは何も意味がない」といったシニカルな声を耳にすることも少なくない。しかしそのような冷笑的な姿勢は、「調子に乗るなよ」と体制へと警告し、自らを取り巻く環境を改善すべく主体的に働きかける己の能力を、前もって無化してしまうだけのようにも思える。今回のデモのテーマは「ダンスは抵抗である」だったが、なぜダンスが抵抗になり得るのかについてのヒントがここにあるのではないか。#1026渋谷プロテストレイヴは、デモの本質的な意義を再確認させてくれたという点でも大きな意味のある「レイブ」であったと思うし、提示されたテーマや論点は今後も継続的に思考されるべきだと思う。

原宿警察署の前を行進するデモ隊を導くMars89。

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