記事

日本が「配偶者控除」をなくせない本当の理由

2/2

■なぜ政府は配偶者控除を廃止できないか

なぜ、政府というより政治家は配偶者控除を廃止できないのか。実は民主党が政権を取った2009年の衆院選マニフェスト(政権公約)では「配偶者控除を廃止し、子ども手当の財源に充てる」と明記していた。それに伴い2011年度税制改正では縮小も検討されたが、主婦層の反発が予想されるという委員の意見がまとまらず、引き続き検討課題とされた。2012年5月には、当時の民主党の小宮山洋子厚生労働大臣が国会で「働き方や生き方に中立でない制度は改めようと言っている。検討を急ぐべきだ」と発言。配偶者控除の廃止を見直しの議論を加速させる考えを示していた。

だが、その年の総選挙で政権は自民党に交代。第二次安倍政権が発足したが、自民党の「J-ファイル2013総合政策集」(2013年6月)では、配偶者控除を維持すると明記している。つまり、自民党政権になって配偶者控除の廃止は遠のいたことになる。それでも前述したように安倍首相が女性活躍を掲げて見直しを指示したが、結局、税制改正では微修正に終わっている。

■自民党の伝統的家族観が未だになくならない

女性の活躍推進を積極的に提唱しながら、一方では103万円以下に収めることでメリットを生み出す税制を放置しておくことは矛盾以外の何者でもないだろう。

厚生労働省の審議会にも有識者として参加した経験のある大学教授は今後の見通しについてこう指摘する。

「政府は働き方改革や女性の活躍推進の施策を数多く並べていますが、本丸である配偶者控除を廃止しないままであり、安倍政権の政策の整合性がまったく取れてない。

自民党の議員の中にはいまだに妻が家庭を支えるものという伝統的家族観の持ち主も少なくありません。そうした保守的体質は安倍首相が交代しても変わる可能性は低いでしょうし、配偶者控除の廃止は難しいかもしれません」

常に選挙を意識する政治家であれば、本来、専業主婦層よりも共働き世帯に目を向けるべきだろう。しかしそうしないで歴史的役割を終えた配偶者控除が既得権益として残り続けるこの国はどう見てもおかしいと言わざるを得ない。

もちろん女性の就業拡大を阻んでいるのはそれだけではない。年金・医療の社会保険料の支払いを免れ「第3号被保険者」となる「130万円のカベ」と「106万円のカベ」(正社員501人以上等の一定の要件あり)もある。これについては現在、政府が厚生年金適用拡大を検討している最中であり、別の稿に譲りたい。

----------

溝上 憲文(みぞうえ・のりふみ)

人事ジャーナリスト

1958年、鹿児島県生まれ。明治大学卒。月刊誌、週刊誌記者などを経て、独立。経営、人事、雇用、賃金、年金問題を中心テーマとして活躍。著書に『人事部はここを見ている!』など。

----------

(人事ジャーナリスト 溝上 憲文 写真=iStock.com)

あわせて読みたい

「配偶者控除」の記事一覧へ

トピックス

ランキング

  1. 1

    中国ダム決壊危機 世界的影響も

    郷原信郎

  2. 2

    GoToなぜ今か 政府は説明すべき

    青山まさゆき

  3. 3

    れいわ10万円配布案の効果に疑問

    猪野 亨

  4. 4

    松坂大輔が離脱へ 晩節汚すのか

    WEDGE Infinity

  5. 5

    発展に疲弊 シンガポールの若者

    後藤百合子

  6. 6

    感染拡大の裏に軽率さ 医師警鐘

    中村ゆきつぐ

  7. 7

    コロナ楽観予測報道はミスリード

    勝川 俊雄

  8. 8

    西村大臣 PCR陽性率は約5%に低下

    西村康稔

  9. 9

    河野大臣「朝日社説は誤解招く」

    河野太郎

  10. 10

    GoTo開始に国民は混乱「なぜ今」

    内藤忍

ランキング一覧

ログイン

ログインするアカウントをお選びください。
以下のいずれかのアカウントでBLOGOSにログインすることができます。

コメントを書き込むには FacebookID、TwitterID のいずれかで認証を行う必要があります。

※livedoorIDでログインした場合、ご利用できるのはフォロー機能、マイページ機能、支持するボタンのみとなります。