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「女の子は50kg以下がいい」という先入観の正体

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女性が「やせたい」と言い出すのはなぜなのか。文化人類学者の磯野真穂氏は「生まれたときから『やせたい』と思っている人はいない。背景には、『やせている人の方が素敵である』という社会に共有された価値観がある」という——。

※本稿は、磯野真穂『ダイエット幻想』(ちくまプリマー新書)の一部を再編集したものです。


写真=iStock.com/TommL

■女性への「やせ礼賛」が浸透した90年代

私が初めて「やせたいな」と思ったのは中学生の時です。

いまやったら大問題になりそうですが、当時の身体測定は、男女別に部屋を分け、生徒をそれぞれ名簿順に並ばせた後、保健の先生が体重をみんなに聞こえるように大きな声で読み上げており、私はそれが嫌で仕方ありませんでした。

その頃の私の身長は155センチに少し足りないくらい。クラスの中では6番目か、7番目の身長でしたが、体重はもうすぐ50キロに差し掛かりそう。「こんなに小さいのに体重が50キロあるなんて恥ずかしい」と思っていたのです。当時の写真を見返しても全く太っておらず、なぜそう思ったのかはよく覚えていないのですが、とにかく50キロは絶対にダメな体重と思っていました。

後で調べてみてわかったのですが、私が中学生になった90年代は、女性に対するやせ礼賛の風潮が社会に浸透した頃でした。いまでも記憶に残っているのは、(たぶん)和田アキ子さんが司会をしていた夜の特番です。太った女性たち数人がサウナスーツを着て、必死に運動をしていました。プログラムをさぼったり、エクササイズを真剣にやらなかったりする参加者には、トレーナーから叱咤激励の声が浴びせられます。

彼女たちがなぜそこまでしてやせようとしていたのかは覚えていません。ですが、「やせること・やせようとすることは素晴らしい。一方、やせられないのは努力のできない、だめな人たち」というメッセージをその番組からはっきり受け取ったことは確かです。

■「重いことは恥ずかしいことらしい」

もう一つ覚えているのは、友人とその母親が遊びに来ていた時の出来事です。

私と彼女はいつも通り一緒に遊んだ後、母親二人がお茶をしている居間に合流しました。その時、話題はなぜか体重の話になり、いきなり友人が「うちのお母さんの体重は○キロ!」と体重を公開したのです。

友人の母は、慌てふためき、顔が真っ赤になりました。明らかに自分の体重は他人に知らせるようなじゅうぶんに「軽い」ものではないという態度です。私はその体重を聞いても何も思いませんでしたが、その姿を見る中で、「重いことはどうやら恥ずかしいことらしい」というのを学んだのです。

冒頭のエピソードと重なるデータが、2016年から行っている、「からだのシューレ」のアンケート結果から出ています。「からだのシューレ」とは、身体と食べ物を、社会とのつながりから考えるためのワークショップです。これまでに22回開催され、私のほかに、元摂食障害の当事者で、摂食障害の啓発活動を行っている編集者の林利香さん、管理栄養士の鈴木真美さん、プラスサイズモデルの吉野なおさんがいらっしゃいます。

■10代前半で「やせたい」気持ちが生まれる

シューレでは、ご来場の方全員に「初めてやせたいと思ったのはいつか」「なぜやせたいと思ったのか」という2つのシンプルな質問をしており、ご来場くださった女性161名(第1回~11回の合計)の回答を見ると、初めて「やせたい」と思った時期は、小学校高学年から中学までの時期に集中します。

つまり第2次性徴期を迎え、身体が丸みを帯びてくるその時期に、その成長を押さえるような気持ちが生まれているのです。ちなみに男性の参加者は18名しかないのでほとんど参考にはなりませんが、全員大学卒業以降でした。

なぜこの時期に彼女たちはやせたいと思ったのでしょう。「なぜやせたいと思いましたか」についての回答を分類すると、そのきっかけの65%を占めたのが、「比較」でした。この内訳をさらに細分化すると、①他者からのコメント、②自分で自分を比較する、③他人による他人の体型指摘、④洋服のサイズ、という分類が得られましたので、それぞれの中身を簡単にご紹介します。

■「太ったね」「もう少しやせなよ」

①他者からのコメント

ここに入るのは、「すごい太ったね」、「もう少しやせなよ」などの他者からの言葉です。これらコメントを「比較」としたのは、そう言ってくるかれらの頭の中に、過去の彼女たちの体型や、彼女たちよりもっとやせている他者のイメージがあり、それらとの比較の上でこれらの言葉が発せられているからです。男の子から「デブ」とからかわれ続けた、部活の顧問の先生からしきりにやせるように言われたといった経験もここに入ります。

②自分で自分を比較する

これは文字通り、自分自身の中の比較です。以前よりも体重が増えた、写真を撮ったら友人より太っていた、鏡に映った姿を見たら自分が一番太っていると思った、そのような出来事が含まれます。

③他人による他人の体型の指摘

これは友人との会話の中で、「○○ちゃん、太っているよね」とか、「女の子は50キロ以下でいてほしい」といった会話を耳にすることです。これらのコメントは、直接自分に向けられてはいませんが、社会の中でどのような体型がネガティブな評価を受けるのかを学ぶ機会として働きます。

④洋服のサイズ

最後のカテゴリーは洋服です。着たい服が入らない、やせていないとおしゃれに見えないといったことが理由です。着てみたい洋服と自分の体型を重ねるので、これも比較のひとつです。

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