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介護にAIを導入することは夢物語ではなく大いに期待できることです - 第101回土居丈朗氏(後編)

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東京商工リサーチによると、2019年上半期の介護事業者の倒産件数は55件。介護保険法が施行された2000年度以降最多を更新した。その9割が資本金1,000万円未満の小規模事業者で、人手不足の影響や業界内での淘汰の加速が窺える。そんな介護業界の現状を慶應義塾大学教授・土居丈朗氏はどう分析するのか?

取材・文/ボブ内藤 撮影/公家勇人

介護事業者は小規模のデメリットをなくしていくべき

みんなの介護 社会の高齢化がますます進んでニーズが高まっている中、伸び悩んでいる介護業界が発展していくには、どのような策があるでしょう?

土居 まずは「スケールメリット」という経済用語の説明をしましょう。これは規模の経済といって、経営規模が大きくなればなるほど生産性や経済効率が上がることを指します。

介護業界の事業者の多くが、小規模であるがゆえに、このスケールメリットを享受できていないことが大きな問題のひとつだと思いますね。

膨大な事務処理に関する経費は、小規模の事業者には負担が重くなります。人手不足が深刻化している中での人材確保、それから人材育成にかける研修費などについても同じことが言えます。

みんなの介護 経営難にあえぐ小規模事業者は、合併して力を合わすしか道はないのでしょうか?

土居 単に「合併」と口に出して言うのは簡単ですが、そうできない事情もいくつかあると思います。

介護保険制度では、介護が必要な方を5段階に分類していますが、きめ細やかなケアをするには規模が小さいほうが個別のニーズに対応できるでしょうからね。

ですから、介護サービスと直結しない、事務処理とか人材確保といった部分だけを切り分けて、「業務提携」とか「共同事業」という形で運営し、スケールメリットを享受できるようにするのが望ましいと思います。

医療と介護の連携が進む中、貴重なデータが集まりつつある

みんなの介護 介護現場の生産性を高める手段として、ICT(情報通信技術)やAI(人工知能)にも期待がかかっています。土居さんは、どう評価していますか?

土居 そのような技術を「夢物語だ」と否定する意見もあるようですが、私は大いに期待しています。

例えば、先ほど申しました、きめ細やかなケアプランということに関して言えば、認知症のある人とない人、自分で歩ける人とそうでない人ではケアの仕方がまったく違うわけで、AI任せにして自動化するわけはいかないと思う人が今は多いのかもしれません。

ただ、AIの技術は入力したデータが多くなっていくのに比例して精度が上がっていきます。介護保険制度が始まったのは2000年度からですが、その間、地域包括ケアシステムが進んで医療と介護の連携が進みつつあります。

医療機関で脳卒中や心疾患、生活習慣病などの病気の治療をした人が、“その後、どんなプロセスを経て要支援から要介護に移行していったのか”、といったデータが今後、日本の各地域から集まれば、ケアプランを提案するAIの精度も上がっていくでしょう。

みんなの介護 「人生100年時代」は、人類がかつて経験したことのないことですから、そうしたデータをできるだけ早く蓄積していかなければなりませんね。

土居 今や「待ったなし」という状況と言えるのかもしれません。もちろん、マイナンバーを使ってすべての国民のデータを追跡するといったことは、プライバシーの問題から抵抗感を持つ人が多いでしょうね。

それから、医療から介護まで、うまくいったケースだけを集めるのではなく、うまくいかなかったケースのデータも集めることで、AIの「どんなケアが適切なのか」という分析能力を高めていく工夫も重要です。

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