- 2012年06月18日 11:45
生活保護の議論をしっかりと
5月25日に行われた河本氏の記者会見では、15年程前、母親はスーパーの鮮魚店で働いていたが病気になり、ドクターストップがかかって生活保護申請をしたという。
その当時、福祉事務所から河本氏に母親の援助ができるかどうか問い合わせがあったが、河本氏自身、年収100万円程度であって援助できないと回答して母親の生活保護受給が始まったようだ。
その後、テレビに出て売れっ子になり、高額の年収を得るようになっても福祉事務所からは援助できるかどうかの問い合わせがあったが、それでも若干の援助を行った程度であるとのことである。
その後もこうした話題が続いている。お笑いコンビ「キングコング」の梶原雄太氏の母親が生活保護を受給していたことが6月になって国会で取り上げられた。梶原氏の兄が母親と隣のマンションに住んでいることが明かされ、小宮山洋子厚労相も生活保護受給に疑問を呈した。
かっての年金保険料未納問題で、国会議員をはじめ著名人が次々に年金保険料が未納であったと暴露されて、謹慎を余儀なくされた経過と似ている。今後も、著名人の親族が生活保護を受給しているとして指弾される事態が続くかもしれないし、マスコミも面白がって次々に暴露報道を行うかもしれない。
しかも生活保護受給者が遂に210万人を突破したようだ。「今年3月時点の全国の生活保護受給者が前月比1万695人増の210万8096人だったことが13日、厚生労働省の集計で分かった。これにより平成23年度の月平均は206万7252人(概数)となり、戦後の混乱の余波で過去最多だった昭和26年度の204万6646人を超えた。」などと報じられている。今後も、景気の低迷や高齢化の進行で、高止まりの傾向が続くのではないかと思う。
小宮山洋子厚労相も国会答弁では、生活保護をめぐる諸課題に取り組む姿勢を示しているが、この際、モグラ叩きのような単なるバッシングではなく生活保護をめぐって本質に迫る議論をすべきだ。
生活保護法4条2項では「民法に定める扶養義務者の扶養及び他の法律に定める扶助は、すべてこの法律による保護に優先して行われるものとする。」とある。一応、この規定自体が不合理とは言い難いので、まずはこれを遵守すべきであろう。しかし実際のところ、福祉事務所がどの程度、この規定を遵守しているかよく調査する必要がある。
河本氏の場合も梶原氏の場合も福祉事務所がどの程度の援助要請をしていたのか、福祉事務所がケースワーカーを派遣してでも調査すれば、母親の全面的な扶養を求められたのではないか、単に1年に1度の形式的な書面による扶養依頼に止まっていたのではないかとも考えられる。この点をよく調査する必要があるが、仮にそれができていないとすればどこに問題があったのかまで踏み込むべきだ。現場の福祉事務所には様々な課題が残されているように思う。
以前、北九州で生活保護受給が拒否され結局、餓死するという痛ましい事件が発生した。北九州の福祉事務所は、子どもに援助してもらえと言って保護申請を拒絶し続けた結果、老人は孤独の上餓死した。
子どもに援助してもらうことと、だからといってそれまで緊急性があっても拒絶することとは全く別のものである。緊急性があるような事案であれば、まずは保護を行って、その後でも子どもたちに扶養を強く求めるのが筋である。
こうした筋道ができていないとすれば、福祉事務所の怠慢なのか、それとも現場では人員削減などで職員不足で手が回らないのか、社会福祉士有資格者のケースワーカーがどの程度配置されているのかなどきめ細かくチェックが必要だ。
私が受けている印象では、社会福祉士有資格者のケースワーカーの数が不足し、普通の事務職員が決して望んだわけでもないのに厳しい職場環境の福祉事務所に配置され、必ずしも熱意と専門性が十分ではない上に、現場では生活保護申請者やその関係者から時々激しく突き上げられてますます疲弊してしまうという悪循環ではないかと感じている。
公務員人件費削減のしわ寄せが福祉事務所にも及んでいるのではないかと思う。やはり必要な現場には必要な専門家を配置してキチンとした調査や指導ができるような体制をとることがまずは一番ではなかろうか。



