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続・大阪夢洲カジノ構想の悲劇

「まあ結局こうなりますよね」としか言いようがないですが、産経新聞が以下のような大阪IR構想に関して以下のように報じています。

潮目変わった大阪IR誘致 事業者が横浜と両天秤、府市「困った」
https://www.sankei.com/west/news/191029/wst1910290022-n1.html

大阪府の関係者は、横浜市がIR誘致に名乗りを上げたことで「大阪に参入意向を示していた7事業者が3社に減り、残った事業者の発言力が強まった。府市は『困った』と感じている」と打ち明ける。

府市はIR事業者に対し、夢洲までの鉄道整備に200億円の拠出を求めている。だが、ある事業者は「府市が要請したから了承したにすぎない」と冷ややかで、条件が厳しすぎるとの本音をにじませる。

大阪IR構想は当初7社が関心を示していたのですが、ラスベガスサンズ社、メルコリゾーツ社、ウィンリゾーツ社とグローバルな大手企業の撤退表明が相次ぎ、結局現在はMGMリゾーツ社、ギャラクシーエンターテイメント社、ゲンティン社の3社が関心を示して留まるのみとなりました。

最終的にはそのうち1社のみが選定されるワケで、有力な1社だけ残ってれば良いではないかという擁護論も未だ大阪維新の支持者を中心にチラホラ見られますが、そうではないからこそ府市が「困った」と発言しているのを報じたのが上記のニュース。複数の有力事業者が一つの権利を巡って競争をしているからこそ、選ぶ側に立つ府市は事業者に高い要求を出来るワケで、その競争がなくなってしまえば逆に民間側に要件交渉の主導権が移ってしまう。それが判っているからこそ、大阪府市は大変「困った」状況になっているワケですし、もっというと僕の所にはこれ以上の事業者流出を防ぐ為に大阪府市が「なりふり構わなくなってきている」なんて話も様々聞こえてきています。

私自身は、当初から大阪の夢洲構想の「難しさ」を訴えて来た立場で、寧ろこれだけ難しいのだから謙虚かつ丁寧にプロジェクトを進めなければいけないと申し上げ続けて来たワケですが、ここに至って「何がこんなに大阪を『間違わせて』きたんだろう」と思いをめぐらすと、結局、大阪商業大学が「商経学会論集」として2009年に発表した「カジノ開設の経済効果」と称して発表した市場規模予測につきるわけです。

この論文が発表された翌年となる2010年には、私自身はこの論文が行っている日本のカジノ市場規模予測の問題点を指摘し、その後も事あるごとに「この論文の推計する市場規模を参照するのは危険」ということを繰り返し論じて来ました。ところが、この論文は結局「大阪エンターテイメント都市構想研究会」(座長:橋爪紳也)と名付けられた団体に持ち込まれ、それが大阪IR構想の骨子の一部として取り込まれ、その骨子が関西経済同友会、大阪府/市へと引き継がれてゆくことで、現在の構想にまで発展してきたのが実情です。要は、初期の頃に大きすぎる予測値を元に、大きすぎる期待を持ち、大きすぎる構想を描いてしまったことが今の「間違い」に繋がっているワケで、その辺の詳細に関しては以前(というか遥か昔に)「大阪夢洲カジノ構想の悲劇」と題して別エントリにまとめたことが有りますのでそちらをご参照ください。

【参照】大阪夢洲カジノ構想の悲劇
http://blog.livedoor.jp/takashikiso_casino/archives/9191881.html

さて今後の大阪IR構想の展開ですが、競争者の数が絞られてきたことで交渉力が増す民間事業者側に対して、大阪府/市側はどこまで当初の「思惑」を守り切れるかというせめぎ合いの戦いになってきます。そのせめぎ合いの結果として、出て来た府/市側の譲歩が先日報じられたばかりのコレ↓。

IR用地、賃貸で対応 松井市長「主導的立場を維持」

https://www.nnn.co.jp/dainichi/news/191018/20191018032.html

大阪市の松井一郎市長は17日の定例会見で、事業者に対して土地は売却ではなく、賃貸を軸に検討を進める方針を明らかにした。継続して土地の所有権を保有することで、主導的な立場を維持することが目的という。

「継続して土地の所有権を保有することで、主導的な立場を維持することが目的」などと説明されていますが、IR整備は一般の民間開発と違って国から認定を受ける主体はあくまで行政側であり、土地所有の有無に関わらず最初から「主導的な立場」は行政側にあるもの。IR法制の建て付けが判ってる人間からすると正直、意味不明な説明であるワケですが、要は様々ある事業者との要件交渉の中で、ここは府/市側が「引くところ」として判断がなされた結果であると言えるでしょう。

一方で府市として絶対に譲れないのが、冒頭で産経新聞も報じている「夢洲までの鉄道整備に200億円の拠出」という項目。ここを譲ってしまうと、2025年に同じく夢洲で予定されている大阪万博の開催が暗礁に乗り上げてしまうわけで、ここを最低限の防衛ラインとしながらその他様々存在する各種要件の詳細確定が行われてゆくものと思われます。

いずれにせよ、私が遥か昔から予言(?)をしてきた「夢洲構想の悲劇」は現実のものになってしまったわけで、大阪府/市の皆様方におかれましては、せめて今手元に残って大阪への参入意向を示してくれている3社とのコミュニケーションを重視し、丁寧に対応をしてあげて下さい。引き続き宜しくお願い申し上げます。

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