- 2019年10月31日 10:02
日産自動車、53歳の内田誠新社長「第三創業期」に向けた期待と不安
2/2カリスマ独裁経営からの決別で日産は第三創業期へ

このように昭和以来長年にわたる縦型グループ企業群経営から一転、約20年間のカリスマ独裁経営を経験した日産。今回の役員人事刷新はこれらの過去との決別による、いわば第三創業のスタートです。
すなわち、今般指名委員会の判断で選ばれた内田誠社長兼CEOには、早期の「新生日産」再構築が期待されているわけなのです。まず直近に課された最大の課題は、業績の回復と提携先ルノーとの関係改善です。
内田日産はこの難題を解決に向かわせつつ、昭和の日産はもとよりゴーン日産からの脱却による新たな企業風土の醸成を義務付けられている、と言っていいでしょう。
業績の回復に関しては、まずは落ち込みの激しい海外販売の立て直しが急務であり、商社時代の海外経験および日産に移ってからも中国をはじめ国際畑で手腕を発揮した内田氏の実績は、今回の大抜擢人事の大きな評価点であったことは疑う余地がありません。
加えてビジネス上の人間関係構築に定評があるとされる点から、指名委員会はルノーとの折衝役にも適任という判断に至ったのではないかと思えます。
しかし業績に関して申し上げるなら、国際部門だけでなく国内部門に関しても厳しい状況が続いており、主力モデルのフルモデルチェンジまでの長期化や国内ラインアップの減少が足を引っ張っていると言われています。
現実に私個人も先月新車を購入する際に、複数の大手メーカーの車を比較検討しましたが、日産車は技術偏重での売らんかな精神ばかりが強く、利用者目線の車づくりという視点が弱いと感じられ、真っ先に候補から外れることになり事態の深刻さを実感させられました。
このような国内事業の立て直しに、異業種の商社出身で国際畑の内田氏がどのように挑むのか、不安がないといえば嘘になるでしょう。また、内田氏が日商岩井出身で日産社内では完全外様である点は、新たな風土を醸成する上で大きな不安を抱えていると考えます。
日本航空等の再生を見ても分かるように、組織風土の変革が求められる時、外様新リーダー体制移行の有効性は確実にありますが、改革の成否は新リーダーの経験値を元にしたプロパー社員との融合をいかにうまくすすめるか、という点にもかかってきます。
日本航空の場合には会長役を務めた稲盛和夫氏の豊富な経験値が、この点で大きく貢献したと言えるでしょう。今回はただでさえトップの大幅な若返りにより、副COOに内定した関潤現専務執行役員を除く日産プロパー役員の多くがお役御免となるであろう流れにあり、外様トップとプロパー勢との融和問題が新たな経営課題として俎上に上ってくることは確実です。
大企業マネジメント経験のない若い内田氏がこの問題をクリアしていくのは、業績回復以上の難題であるのかもしれません。
社外取締役が中心となる指名委員会人事の妥当性を占う試金石
この点を気にしてか、内田氏は就任に先立って「新体制での経営は、集団型経営陣による新しい経営スタイルになるだろう」と話しています。
すなわちこれは、内田氏とルノー出身のグプタCOO、日産プロパーの関副COOの三頭体制での組織運営を意味していますが、気になるのは融合重視での三行合併の弊害によりライバルに大きく遅れを取ったみずほ銀行のような例です。
融合を重視するあまり、ルノー、三菱自工を含めた社内外勢力との融合策にも気を奪われ、前向きな戦略進展に支障が出る懸念もまた払拭しきれません。
世界規模での事業戦略遂行に加え、100年に一度と言われる業界大変革「CASE」化への対応策としての同業提携、異業種連携等、歴史的最難局を迎えている自動車業界の舵取りは容易ではありません。
53歳の内田新社長兼CEOは、若さに裏打ちされた行動力と柔軟な発想に大きな期待が寄せられる半面、その若さ故の経験不足、思慮不足が足を引っ張ることにはなりはしないかという不安が内包されていることもまた事実です。
日産指名委員会が選んだ内田新社長兼CEOの経営手腕の如何は、今後日本でも盛んになるであろう社外取締役を中心とした指名委員会人事の妥当性をはかる試金石でもあり、大いに注目が寄せられるところかと思います。



