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日本男性が家事を死ぬほど嫌がる真の理由3つ

共働き家庭が増えているのに、家事をしない男性が多いのはどうしてなのか。それは、家事労働の本当の価値に気づいていないから──。家事・育児分担のあり方を研究する筒井淳也先生が“家事をしない男性”の脳内に迫ります。


※写真はイメージです(写真=iStock.com/akasuu)

「無償労働は価値がない」という思考

近年は「男性も家事参加を」という機運が高まってきてはいますが、世界的に見ると、まだまだ日本人男性は家事をしない傾向が強いと言えます。国内の調査では、家事労働に価値を見出していない男性が多いという結果も出ています。一体なぜなのでしょう。

まず挙げられるのは「家事は労働ではない」と考えている可能性です。家事をしない男性にとって、労働とは会社でする仕事のこと。収入ややりがいが得られるものであり、それこそが労働の価値だと思っています。この考え方からすれば、収入ややりがいが高ければ高いほど、労働の価値もまた高いということになります。

それに比べて、家事は収入に直結しません。収入にならなければやりがいも感じられないので、労働としての価値はゼロになります。しかし現実的には、家事は必ず誰かがやらなければなりません。時間も労力もかかる立派な「労働」であり、会社での仕事との違いは有償か無償かという点だけです。

会社での仕事は有償労働、家事は無償労働。どちらも労働であることには変わりないのに、家事をしない男性はそこに気づいていないのです。家事に労働としての価値を感じられなければ、やりがいも感じられなくて当然。では、こうした男性は、どうすれば家事に価値を見出せるようになるのでしょうか。

家事をしない男性が気づくべき3つの価値

結論から言えば、家事労働には大きな価値があります。まず1つめは、家族が心地よく生活していけるようになるという価値。つまり、家事をするのは家族のためだという視点です。「自分が稼いでいるのは家族のため」と言う男性も多いと思いますが、その点では家事も同じなのだと気づく必要があります。

金銭が発生する労働も、発生しない労働も「家族のため」という点で等しく価値がある。この事実に気づくことができれば、やりがいも見出せるようになるはずなのです。

掃除も洗濯も料理も、誰かがやらなければ心地よい生活は望めません。では自分がやるのか、それとも妻がやるのか。そう考えればおのずと、一方に押しつけるのは恥ずかしいことだとわかります。

2つめは、家族関係を円滑にするという価値です。女性は家事にもこうした意義を見出しているという研究結果がありますが、男性の多くはまだこの意義に気づいていないようです。家族関係は、仕事はもちろん人生にも影響を与えかねません。家事分担も家庭円満の秘訣の一つなのだと、ぜひ知っていただきたいと思います。

3つめの価値は、家事は会社での仕事を支えているという事実です。誰かが食事の支度や洗濯をしなければ、会社に行く体力も着て行く服もなくなります。家事という無償労働があるからこそ、会社で有償労働ができる──。家事をしない男性には、このつながりを見ようとしない人が多いのです。もっと視野を広げて、今の生活を支えている「もう一つの労働」にも目を向けるべきでしょう。

「男らしさ=稼ぐこと」という価値観が家事を遠ざける

3つの価値についてお話ししてきましたが、これらを理解している男性の中にも家事をしない人はいます。例えば、アメリカの研究報告の中には、妻と平等に家事分担してきた男性が、失業したとたんにまったく家事をしなくなったという事例がありました。

この男性は、家事をしながらも頭のどこかで「男らしさ=稼ぐこと」と思っていた可能性があります。稼げなくなり、男らしさを発揮できる場がなくなった時、家事だけをするのは男としてのプライドが許さなかったのかもしれません。

こうした“男らしさ・女らしさ”の意識は、家事をしない男性やさせない女性を生み出す原因にもなります。夫婦とも、頭では家事分担したほうがいいとわかっているのに、いざ行動に移してみるとなぜかうまくいかない。次は、この原因について考えてみましょう。

家事がアイデンティティになっている女性の問題点

会社での仕事を男らしさと捉える男性がいるように、女性の中にも家事を女らしさと捉える人がいます。もし、男性側が家事を分担したいと思っていても、女性側が家事をすることで自分のアイデンティティを満たしているタイプであれば、効率的な家事分担は難しくなるでしょう。

効率的な家事分担とは、できるほうができる時にやるということ。女性側が家事にアイデンティティを求めていると、自分の知らないうちに済ませてあること自体が不満の種になります。また、相手に自分と同じレベルを求めている場合も、これまた不満の種になります。

世界的に見て家庭で最も機能していない日本人男性

では現状の日本で、男性が家事を分担すると、女性は本当に負担が減るのでしょうか。以前、これについて定量調査をしたところ、結果は「NO」でした。男性が家事労働を増やしたとき、その妻である女性が家事の量を減らすことができているのかをみたところ、負担が減った女性はほんのわずか。つまり、男性が家事をしているつもりでも、女性にとっては戦力になっていないのです。世界的に見ても、日本の男性は家庭で最も機能していないと言われています。

私が家事を本格的にしはじめたころ、「家事ってゲームみたいだな」と思ったものです。食事の準備をするにしても、ただ単に食材を買いに行って、料理して……といったシンプルな作業ではダメなのです。まずは、自宅にどんな食材があるのか、消費期限はいつか、家族が家で食事をする頻度は当面どれくらいか、などの情報を総合的に判断してから買い物をしないといけません。その段取りに慣れるまで、少し時間がかかりました。

“男家事”は非効率なもの

夫が家事を分担する気になった、けれど慣れていないという場合は、どうか長い目で見てあげてください。会社に入ってきた新人と同じように考えてはどうでしょうか。新人は、入社してすぐにあなたと同じ仕事ができるようにはなりません。家事にも同じことが言えると思うのです。

一般的に“男家事”は非効率です。料理をするとなったら、冷蔵庫の中身も確認せずに大量の食材を買いこんできたりします。その場合も「買い物はいいから料理だけして」などと単発的に訓練するのではなく、夕食の一連の工程をドカンと任せましょう。家事の価値を理解している男性なら、後は経験さえ積めば戦力になっていくはずです。ぜひ、勇気を持って任せてほしいと思います。

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筒井 淳也(つつい・じゅんや)
立命館大学教授
1970年福岡県生まれ。93年一橋大学社会学部卒業、99年同大学大学院社会学研究科博士後期課程単位取得満期退学。主な研究分野は家族社会学、ワーク・ライフ・バランス、計量社会学など。著書に『結婚と家族のこれから 共働き社会の限界』(光文社新書)『仕事と家族 日本はなぜ働きづらく、産みにくいのか』(中公新書)などがある。
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(立命館大学教授 筒井 淳也 写真=iStock.com/akasuu)

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