米ホワイトハウスの奪還を狙う民主党の大統領候補として、エリザベス・ウォーレン上院議員の台頭がめざましいです。
The Economistの最新号の表紙はウォーレン議員の写真の上から赤いテープ=Red Tapeが貼られたもの。
Red Tapeは非効率なお役所仕事で物事が進まないことを指すので、大きな政府を志向する彼女が大統領になると企業のダイナミズムがなくなり政府の非効率な監督がはこびると言いたいようです。
New York Timesは、Joe Biden or Elizabeth Warren? New Polls Differ on Who’s Leading 2020 Race(バイデンかウォーレンか。最新の世論調査で結果別れる)の中で、アイオワ州で民主党の最初の党員集会の開催を3か月後に控えて行われた世論調査のうち、CNNが実施した調査ではバイデン前副大統領が34%、ウォーレン上院議員が19%で15ポイントもの差をつけた一方で、クイニピアック大学の調査ではウォーレン上院議員が28%、バイデン前副大統領が21%で、反対にウォーレン上院議員が7ポイントの差をつけてトップランナーだったと報じています。
どちらの調査でも3位はバーニー・サンダース上院議員で、心臓発作の影響はなく、AOC=アレクサンドリア・オカシオコルテス下院議員らの推薦に支えられたとしています。
信頼性の高い2つの世論調査で正反対の結果が出たことについて、多くの有権者がまだ誰を支持するのか決めかねているからだとする専門家の声を紹介しています。
The EconomistのElizabeth Warren wants to remake American capitalism(ウォーレンは米資本主義を根本から変えようとしている)の中で、オクラホマ州の裕福でない家庭に生まれたウォーレ氏がハーバード大学法学部のスター教授に上り詰め、1970年代にシングルマザーとしてフルタイムで働き、ツイート政策がまかり通る現代に政策通で今や民主党の大統領候補のフロントランナーだということは特筆するべきだと報じています。
同時に米資本主義を根本から変えようとしているウォーレン氏の野望もこれまた特筆するべきだとしています。
「政策の核心は規制と保護主義への依存であり、アメリカの課題の解決策になり得ない」と結論づけています。
一部に彼女を「社会主義者」とレッテルを貼る向きもあるが、国営企業や資金の管理を求めているわけではないとしながらも、金融機関を商業部門と投資部門に分割し、フェイスブックのような巨大テック企業も分割されて電力会社のように規制され、シェールオイルの開発が禁止されて再生可能エネルギーの導入が義務づけられ、健康保険は公営化されるとしています。
これを企業に対する「再規制化」と呼んでいます。さらに、保護貿易主義の政策がとられ、ドルの動きを「積極的に管理」するとしています。
ウォーレン氏の政策の問題として、▼政府に対する信頼が高すぎ、実は非効率的で1970年代に政府の規制が強かった通信会社や航空会社の非効率性を思い出さないといけない、▼企業を悪者にしすぎて、中間層の押し上げへの貢献を評価していないと指摘しています。
「アメリカの繁栄の核心のイノベーションやダイナミックな企業活動を認めなければならない」と締めくくっています。
Washington Postは、ウォーレン氏があらゆる政策について詳細に語る一方で、国民皆保険(Medicare-for-all)を提案しながら財源を明確にしていないと指摘し、多くのエコノミストがアイディアを出して支援していると報じています。
討論会で何度聞かれても明確にこたえなかったが、政策として問題なく、なおかつ国民にわかりやすい提案を次の討論会までに用意するということです。
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- 2019年10月29日 09:16