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【vol.1】 教員の働き方改革の行く末とは

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働き方改革関連法が成立したことにより、日本社会では急激に「働き方」の変革が求められました。社会の急激な変化に伴い、学校の先生たちを取り巻く環境も大きな転換期を迎えています。学校へ求められる期待が高まる一方で、当事者たちは残業代なしの長時間労働に疲弊している現実があります。授業のみならず、子どもたちの生活指導やいじめ問題にも取り組まなければいけない……。

せっかく子どもたちの将来のために先生を志した人が、情熱を失うことなく教育に取り組むために、できることは何なのでしょうか?

そこで今回は、名古屋大学准教授の内田良先生をゲストに迎え、教育の未来についてお話しました。

3回に分けてお届けするvol.1では、「ブラックすぎる教育現場の実態」について。長時間労働の問題や法律の改正を軸に、教員の現状についてお届けします。

※ご了承いただき、動画の内容を記事にしております。

中学校教員の6割が過労死ラインを超えている


―普段はどんな研究をされているんですか?

 教育学を専攻・専門としているんですけれども、特に学校の中で起きる子どもの色んな不利益ですよね。元々はいじめや学校の中の事故、体罰などやっていたんですけど、そこから「先生もけっこう大変だよね」ってことで、働き方とかにも関心が出てきて。「学校リスク」と呼んでいますが、学校の中の子どもや先生、保護者に影響が出てくるリスクのことを調べています。

―今、教育は大きな転換期を迎えていると思いますので、先生に根ほり葉ほり伺いたいと思っています。

たかまつさんが、思いっきり、教育現場を伝えてくださり、火を焚きつけてくれてますから。現場の声を聞き取ってくださって、本当にありがとうございます。

―教員の働き方改革について、色んなところで話題になっていますね。中学校の先生の6割が過労死ラインを超えて働いていると聞いて、本当にびっくりしました。平均で月80時間残業。こんなブラックな業界ないなと。

時間数にすると、一日当たり約11~11時間半は学校にいる。しかもそれは平日。土日も行っていますからね。土日がつぶれるってキツイんですよね。

―働き方が変わらないと、どういうことが問題になるんですか?

若い先生に特に多いんですが、「平日も遅いし土日もない。大変だとは思っていたけど、ここまでなのか」と長時間労働の話を聞きます。若いと転職も選択しやすいですから、「仕事を変えようかと思っています」という相談が届きますね。

「子どもに授業を教えたい、触れ合いたい」と思った人が、子どもとの関係がうまくいかずに辞めるならまだしも、長時間労働で辞めるという、本当にこんな悲しいことはないですよね。

教育学者は多忙化に鈍感すぎた


―教育学部の学生さんから、働き方に関しての声は聞きますか?

僕だけじゃないと思うんだけど、ほとんどの教育学者は多忙化問題にこれまでは鈍感だったんですよ。教育学は子どものための学問なんです。

だから僕自身、「このようなことを、子どものためにやってください」「先生方、こういう資料を読んでください」と押し付けてきた側面があるんですよ。教育学者自身が、反省しないといけない。

僕も、今年度から授業のやり方をガラリと変えました。ツイッターのハッシュタグを使いながら学生の声をリアルタイムに授業に反映させて、学生も常に考え続ける授業を作っていく。たとえば「遅くまで頑張ってこそ先生」という教育文化から距離を置いて考えられるように、学生に考える力をつけさせるスタイルにしました。

―子どものことが好きな先生が、過労死で亡くなってしまったり、うつになってしまうって、本当に悲しいと思います。

そうなる先生というのは、元気な方が多いんです。好きでこの仕事をやっているからこそ、仕事が増えて最後は倒れてしまう。

残業代0円というブラックさ


―それが「子どものために、命を尽くすまで頑張った」みたいな美談に終わってしまいますよね。

「公務災害でしょ」って言いたくなるんだけど、美談で終わってしまうんですよね。お金や時間関係なく、子どもを思ってこそ先生という。

―働き方改革関連法によって、今、注目されているということですか?

それは民間企業の労基法の話なので、厳密に言うとそうではないです。
先生たちの働き方というのは、給特法があるために、定時以降の残業は労基法が適用されていないんです。給特法は学校の先生の仕事は特殊であり、どこまでを仕事とみなしていいか不明確だから作られました。特殊だからこそ、当時の先生の平均の残業時間から一律、基本給に上乗せするかわりに、残業代を0円にするという法律が作られたんです。

法律に「教育職員については、時間外勤務手当及び休日勤務手当は、支給しない」と明記されています。だから、いくら労基法に罰則を付けようが、この給特法がある限りは、公立校には適用されないんです。

半世紀ぶりに給特法改正


―半世紀ぶりに給特法が改正されようとしていますが、どう受け止めればいいんでしょうか?

中央教育審議会(中教審)の答申が今年1月に出ました。
これまでの給特法では、ある程度、残業を先生の自発的労働、つまりボランティアだとしていました。それをこの度の文科省は「自発的というのは間違いでした。これは一応、勤務です」としました。ただ依然として、給特法は定時以降を自発的労働と言っている。このダブルスタンダードの溝をどう埋めていくのか、ですよね。

考えなければいけないのは、中教審の答申にある「一年単位の変形労働時間制を導入してもいい」ということ。

―引っ越し業者が「引っ越しの多いシーズンとそうじゃないシーズンで、勤務時間を変えましょう」というのと同じですね。

これは基本は、残業が法律的に存在している民間企業の論理なんです。残業代は平日で1.25倍、土日で1.35倍払わないといけないのを、通常の定時までの労働分1倍で移し替えようと。使用者にとっては非常に都合のいいやり方です。

先生も8月は暇に違いない、という前提で変形労働時間制を取り入れようとする動きがあります。そのために給特法を改正する必要がある、ということですね。

―8月も研修や合宿、水泳教室とかで忙しいし、残業していますもんね。そもそも残業代を払わない、というところが変わる見通しはないんですか?

残念ながらね。本当に僕も悔しい。先生たちは、次から次へとくる仕事を夜遅くまで頑張っているのに、労働じゃないって。

変形労働時間制は単なる時間の操作であって、自発的労働を法律上の労働にするということではまったくない。

―国会で通るんでしょうか? 議論が白熱するんでしょうか?

法改正をしたところで、すぐに各自治体がすぐに導入するかどうかは各自治体の判断になってくるので、議論にならないかもしれないという危機感もあります。だから法律の段階で一回、考え直してほしい。自治体が変わらない可能性もあるので、もっと盛り上げないと。

―裁量労働制とかすごく議論されていたので、給特法も議論になるのかなと……。

議論にしてください(笑)

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