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- 2019年10月28日 17:00
Spotifyスタッフはどんなことを考えている? a flood of circle佐々木が対話してきた
2/2佐々木:ユーザーにはまだ知られてない機能ってありますか?
芦澤:機能ではないですが、「バイラルチャート」ってご存知ですか?
佐々木:それは急上昇チャートみたいなものですか?
芦澤:いえ、バイラルチャートはSpotiftyからソーシャルメディアでシェアされ、再生された数をベースにしたランキングで、「いまソーシャルメディアでバズっている曲」が分かる指標と言えます。すべてシステムで算出されているので、どうやったら1位になるのかという正確なギミックは実は誰もわかっていません。
佐々木:コントローラブルなものじゃないんですね。
芦澤:バイラルチャートをチェックしていると、これから来るものをいち早くキャッチできるかもしれません。Spotifyのプレイリストを作成しているエディター達もバイラルチャートを注目してみています。バイラルチャートをきっかけにエディターの目に留まり、プレイリストにピックアップされて人気が広がっていくこともあります。世の中の動きを反映することも多く、去年秋にクイーンの映画が公開された際は、チャートの上位がクイーンの楽曲で占拠されていたこともありました。
佐々木:ああ、ミスチルのカタログ配信開始の時とかもそうでしたね。
芦澤:これまでなかったものが加わり、急激にシェアされるとバイラルには入りやすいようですね。バイラル以外では、再生回数ランキングをプレイリストにした「トップ50」も日々更新されていますが、こちらはあまり変動がないのがストリーミングの特徴です。
佐々木:確かに、ずっとあいみょんや髭男ですよね。
芦澤:逆に言うと、一度ストリーミングでヒットすると長い間ずっと聴かれるということですね。DAOKOの「打上花火」も2年ぐらい上位にいましたし、エド・シーランの「シェイプ・オブ・ユー」もそうでしたね。CDはパッケージ購入のランキングなため、発売初週にドンとチャートを上昇し、翌週以降大きく下がっていくと思うんですけど、ストリーミングチャートは実際に聴かれている回数がベースになるチャートなので、一度ヒットした曲は長期間聴かれ、チャートの上位にとどまる傾向があります。
佐々木:前とはチャートの考え方が変わってますよね。
芦澤:たとえばあいみょんが話題になり、ある曲が人気を呼ぶと、あいみょんに興味を持ったリスナーがアーティストページで他の曲も調べて聴いたため、複数曲が一気にチャートにランクインしました。そそれが今は髭男で起きています。そうしたロングテールな聴かれ方がストリーミングの特徴ですね。瞬間瞬間で見るとCDの利益率に比べて儲からないと言われていますが、中長期的に見ていくべきビジネスモデルかなと思います。
佐々木:そこでさっきのキャンバスの話に繋がってきて、もう1回聴いてもらうための工夫をしていくことが、ミュージシャン側にも必要になっていきますね。
芦澤:そうですね。
佐々木:でも、チャートで長く残っていくっていうのは今っぽいなと思うけど、それが貧富の差になっていく可能性はあるかなと思います。完全に移行したらまた話は別なのかもしれないけど、今はいずれにせよ過渡期なのかなと。
芦澤:おっしゃる通り今は過渡期ですが、単純にストリーミングのリスナーが今の10倍になったらまた全然状況も違うわけですよね。まずは日本の中でストリーミングで音楽を聴く人を増やしていきたいと思います。
クロダ:ただ、たとえばアメリカと比べると、人口が違うので仮にクラスでひとりが聴くような音楽でも、リスナーの数は全然変わってきますよね。そして、アメリカやイギリスでチャートの1位になったアーティストは、ある程度他の国でも聴かれるようになりますが、日本では必ずしもそうではない。
芦澤:はい。
クロダ:日本でストリーミングが浸透したとして、それでアーティストは食べていけるようになると思いますか?
芦澤:それで言うとK-POPが世界のスタンダードになったように、日本のアーティストにも大いにチャンスはあると思います。BTSやBLACKPINKなどのK-POPアーティストを見ていると、韓国語のまま歌い、世界中にリスナーを広げていっています。こうした国境を超えたオーディエンスの獲得はストリーミングがあったからこそ成し遂げられたのではないかと思います。ストリーミングはプレイリストやAIによるレコメンデーションを通じ、国内だけではなく様々な国の、様々な趣味嗜好のリスナーに音楽を届けることができます。国内のみならず海外にもリスナーを広げられれば、状況はさらに変わっていくのかなと思います。
クロダ:少なからず世界に目を向ける必要がありますね。
芦澤:どのアーティストにもその必要があるとは言わないですが、世界も視野に入れたほうがより大きく道が拓けるとは思います。ストリーミングは国境やジャンルの垣根を簡単に越えさせてくれます。よく日本はガラパゴスだとか島国だとか言われますけど、ストリーミングでは逆にボーダーレス、ジャンルレスに音楽が聴かれるようになっています。
佐々木:そうですね。
芦澤:K-POPが何故あそこまでいったかと言うと、国内市場の限界を考慮し、みんな初めからグローバルスタンダードになろうと頑張ったと聞きます。日本の音楽市場においては依然CDの構成比が大きいですが、ストリーミングが普及するに従い、今世界規模での成功を意識するアーティストも増えてきいるように感じます。
クロダ:リスニングスタイルがストリーミングに移行していった中で、アーティストの作る曲が変わっていった事実はありますか?
芦澤:曲の作り方は千差万別だと思いますが、リリースのやり方は多様化してきたかもしれません。前はアルバムを中心に考えて、そのアルバムから先行シングルを切っていくという考え方をしていたと思うんですけど。今は曲をコンスタントにリリースする中で、リスナーの反応を見ながらアルバムの方向性を調整していくアーティストも出てきています。
佐々木:様子を見ているってことですね。
芦澤:また海外では、多様なプレイリストにピックアップされるように、いろんなジャンルのアーティストをフィーチャリングしたり、様々なバージョンのリミックスを出すアーティストも増えています。エド・シーランはその最たる例かもしれません。それによって今まではリーチしていなかったリスナーにも音楽を届けられるのです。そして、何曲かトラックをリリースした後に、集大成としてアルバムを出す。つまりアルバムというものが、今までのような1枚のものを作るという感じではなくなってきたのかなと思います。
佐々木:ストリーミングの特性を活かしたビジネスプランがないといけないと。
芦澤:そういう側面はありますね。
佐々木:最後にサウンドについて少し聞きたいなと思います。Spotifyで配信される時に、サウンドは変化していますよね?
芦澤:マスタリングに関して言うと、ラウドネス・ノーマライゼーションっていうものをかけています。マスタリングによって音圧は当然バラバラなわけですが、リスナーが聴いた時にある曲は小さくて、ある曲は大きいってなると聴きづらくなるので、そこは均等に聴こえるようにノーマライゼーションをかけています。でも、それぐらいです。基本的にはなるべくいただいた音源に必要以上の手を加えることはしていません。
佐々木:ノーマライズされる数値的な基準はあるんですか?
芦澤:アーティストや関係者向けに情報を提供している専用サイト「Spotify for Artist」上に記述されています。エンジニアの方に見ていただくと、参考になるかもしれません。
佐々木:ノーマライゼーションに罪はないですけど、超音圧あるぜ! を売りにしていてもSpotifyだと難しいというか。これからはサービスごとに向いているマスタリングを変えなきゃいけなくなりますね。
芦澤:そうですね。とりあえず…… 音圧は突っ込み過ぎない方がいいかもしれませんね(笑)。
Edited by Ryutaro Kuroda
佐々木亮介
a flood of circle(ア・フラッド・オブ・サークル)のフロントマン佐々木亮介。2016年にソウルの聖地メンフィスで現地のミュージシャンとセッションして作り上げた1stミニアルバム『LEO』をリリース。2017年、ライブ会場限定で発売された『大脱走E.P.』では逆にすべての楽器をすべて自分で担い、トラップビートなどを取り入れたR&B/ヒップホップシーンとの同時代性を意識した内容の作品を制作。
2019年2月にはシカゴのClassick Studiosで4曲を録音。ミックスエンジニアはChance The Rapperなどを手がけるElton Chueng(エルトン・チャン)が担当。さらに東京でも4曲を録音し、こちらは共同プロデューサーとしてROTH BART BARON(ロット・バルト・バロン)三船雅也が参加。何にもラベリングできないポップミュージックアルバム『RAINBOW PIZZA』を作り上げ8月21日にリリースする。
◾️バックナンバー
Vol.1「a flood of circle佐々木亮介が「面白いこと」を求め仲間募集」
<リリース情報>
a flood of circle
『HEART』
発売日:2019年11月6日(水)
価格:2500円(税抜)
=CD収録曲=
1. スーパーハッピーデイ
2. Lucky Lucky
3. Lemonade Talk
4. 新しい宇宙
5. Stray Dogsのテーマ
=Live Bonus track=
6. シーガル
7. Buffalo Dance
8. エレクトリック ストーン
9. 僕を問う
10. ラバーソウル
11. 博士の異常な愛情
12. Paradox
13. アンドロメダ
14. 噂の火
15. 水の泡
※初回プレスのみ”LUCKY LUCKYビンゴジャケット”仕様
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抽選イベント内容や、景品詳細などはオフィシャルサイトを確認ください。
※商品にはダミージャケットカバーがかけられております。
<ライブ情報>
a flood of circle
「Lucky Lucky Tour 2019-2020」
=ツアー日程=
2019年11月14日(木)千葉LOOK
2019年11月29日(金)札幌BESSIE HALL
2019年12月1日(日)仙台MACANA
2019年12月6日(金)広島CAVE-BE
2019年12月7日(土)福岡CB
2020年1月11日(土)大阪梅田CLUB QUATTRO
2020年1月13日(月祝)名古屋CLUB QUATTRO
2020年1月17日(金)渋谷CLUB QUATTRO
2020年1月19日(日)渋谷CLUB QUATTRO
※全公演ワンマンライブ
チケット:3900円(D代別)
オフィシャルサイト:afloodofcircle.com
- Rolling Stone Japan
- 音楽カルチャーマガジン米Rolling Stone誌の日本版



