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「ママごめん。私は死んでいく」英国の冷凍コンテナ39人死亡 中国人なりすましベトナム人密航者25人か

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26歳のチャー・ミーが残したダイイング・メッセージ

当初、中国福建省を拠点にする密航あっせん犯罪組織「蛇頭(じゃとう)」絡みの密航者大量死とみられてきた事件は、ベトナム人権団体HRS関係者の連続ツイートをきっかけに急展開、一気にベトナム人密航ネットワークに焦点が移ります。

「“ママ、パパごめんなさい。私の海外渡航はうまくいかない。ママをとても愛している。私は死んでいく。息ができないから。私はハティン省のカンロックから来ました。ごめんなさい、ママ”。26歳の女の子から発信された最後のテキストが、娘があの39人の中にいると家族を心配させている」
「テキストは10月22日午後10時半(英国時間)に送られてきた。ファン・チー・チャー・ミーは中国に渡り、フランス経由で英イングランドに行くことを計画していたと彼女の家族は私に語った。家族は39人の中に彼女が含まれているか確かめたがっているから助けてあげて」
「39人はすべて中国人だと報道されているが、チャー・ミーの家族は彼女がその中にいるのか確かめようとしている。最期を知らせる彼女からの死のテキストはタイミングがピッタリだからだ。私たちに提供された情報では冷凍コンテナの中に他にもベトナム人が乗っていた恐れが膨らんでいる」

色白で少しぽっちゃりしていてチャーミングなチャー・ミーさんからダイイング・メッセージが送られてきたのは冷凍コンテナがベルギー・ゼーブルッヘ港を出発して英国のテムズ川河口近くのパーフリート港に到着するちょうど2時間前でした。

英BBC放送やデーリー・メール紙によると、チャー・ミーさんの家族は、彼女を英国に密入国させるため一番安全な“VIPチケット”として3万ポンド(約418万円)を密航業者に支払い、最後に連絡のあった場所はベルギーだったと話しています。

家族は次のように証言しています。「チャー・ミーは10月3日ベトナムから中国に飛び、2~3日過ごした。そしてフランスに向かった。同月19日にも英国に密入国しようとしたが、捕まって送り返された。彼女は目的地に着くたびに連絡してきた」

チャー・ミーさんの密航ルート(グーグルマイマップで筆者作成)

「チャー・ミーからの連絡は同月22日(英国時間)を最後に途絶えた。私たちは彼女がトレーラーの中にいたのではと心配している。彼女(の遺体)が帰国できるよう英国の警察に協力を申し出ている」。チャー・ミーさんは子供3人の末っ子で身長1.5メートル、体重46キロと小柄です。

両親は2人で月に約400ドル(約4万3500円)稼ぐのが精一杯。人権活動家によると、彼女は日本で3年間働きましたが、家族の借金を返すため英国に密入国し、不法就労して実家に仕送りする計画でした。家族は渡航費用を用立てるため自宅を担保に入れたそうです。

密航業者は密入国が失敗に終わったため、一部の家族に渡航費用を返しているそうです。

「現代の奴隷」の被害者の多くは若者や子供

英大衆紙デーリー・ミラーによると、冷凍コンテナのドアが開かれた時、関係者は何十もの死体が積み重なっているのを見てショックを受けました。ドアの内側には血まみれの手形が付いていたそうです。

エセックス警察やアイルランドの警察はこれまでに殺人や過失致死、人身売買の容疑で5人を逮捕しています。

(1)北アイルランド出身のトレーラー運転手、モーリス・ロビンソン被告(25)=過失致死、人身売買、不法移民、マネーロンダリング(資金洗浄)の罪で起訴

(2)イングランド北西部ウォリントン出身の男(38)=過失致死と人身売買容疑

(3)イングランド北西部ウォリントン出身の女(38)=過失致死と人身売買容疑

(4)北アイルランドの男(48)=過失致死と人身売買容疑

(5)20代の男=英国への密航者を運んだトレーラー3台のうち1台を運転していたとみられている

エセックス警察によると、冷凍コンテナは10月22日午後2時50分ごろ、ゼーブルッヘ港に到着。輸送船に積み込まれ、パーフリート港に到着。ロビンソン被告は10月23日午前零時半ごろ、コンテナをピックアップして午前1時5分ごろ、パーフリート港を出発しました。

ロビンソン被告が近くの工業団地でトレーラーを止めてコンテナの中を確認したところ39人が死んでいました。

英内務省の「現代の奴隷」年次報告書2019年版では、昨年の「現代の奴隷」の被害者は英国人が最も多く、前年の819人から1625人に増加。それに欧州連合(EU)非加盟のアルバニア人、ベトナム人、中国人が続いています。


プロテスタント系慈善団体・英救世軍の最新報告書「『現代の奴隷』被害者の支援」によると、英国で救世軍に助けを求めてきた「現代の奴隷」被害者は18年7月から今年6月まででアルバニア人が最も多く535人(うち女性が468人)、次がベトナム人の209人(同55人)。3位は中国人の148人(同79人)でした。


「数日ごとにしか食物と水をくれなかった」

「現代の奴隷」問題に取り組む国際人権団体「アンチ・スレイバリー」によると、ベトナムから英国へと、社会的に不安定な若者の人身売買が行われるケースが増加しています。密航者は大麻の栽培所やネイルバー、強制的な売春宿、偽造品の製造所で働かされています。

「家の中に独りで閉じ込められ、大麻への水やりを強制された。数日ごとにしか食物と水をくれなかった。不平を言うと殴られ、逃げ出すと警察に逮捕され、殴られると脅された」と15歳のハイは「アンチ・スレイバリー」に証言しています。

https://vimeo.com/238558417

人身売買された人の多くは非常に若く、時には子供で、「魅力的な仕事につける」という甘言につられて英国に密航して来ます。ベトナムは共産主義の看板を掲げていますが、ドイモイ政策をとり、国家資本主義による目覚ましい成長を遂げました。

おかげでベトナムの貧困は大きく解消されましたが、地方の労働力は余り、海外に働きに出るしか家族を養う手段がないのが現実です。英国はベトナム戦争時にボートピープルを受け入れたため、ベトナム人社会が形成されています。

ベトナムの実家に仕送りするのに十分な仕事はすぐに見つかるのに、英国ではベトナム人の単純労働移民は認められていないため、密航が激増しているようです。

欧州へのベトナム人の典型的な密航ルートは飛行機でベトナムからロシアに行き、ベラルーシ、ウクライナ、ポーランド、チェコ、ドイツ、オランダ、フランスを陸路で移動するルートです。ベトナムから南アメリカ経由で欧州に入る新しい傾向も見られるそうです。

以前は中国経由で直接、英国に入国するルートも使われましたが、入国管理が強化され、監視の甘いベルギーからドーバー海峡を渡って英国に密入国するルートに変更された可能性があります。

ゼーブルッヘ港とパーフリート港の保安員は密航者がコンテナの中に隠れていないか熱を検知するサーマルカメラでチェックしています。このチェックを避けるため冷凍コンテナが使われ、今回、温度設定や通気孔の設定を間違えたため密航者全員が死亡した疑いがあります。

日本のベトナム人実習生

法務省によると令和元(2019)年6月末の在留外国人(中長期在留者と特別永住者)数は282万9416人で前年末に比べ9万8323人(3.6%)の増加となり過去最高を記録しました。

(1)中国78万6241人(全体の28%、前年比2.8%増)

(2)韓国45万1543人(同16%、同0.4%増)

(3)ベトナム37万1755人(同13%、同12.4%)

(4)フィリピン27万7409人(同10%、同2.3%増)

(5)ブラジル20万6886人(同7%、同2.5%増)

(8)インドネシア6万1051人(同2.2%、同8.4%増)

ベトナムやインドネシアの在留者が急増しているのは技能実習生の受け入れが拡大したからです。

今年4月から改正出入国管理法が施行され、「技能実習」のほかに新たな在留資格「特定技能」を設けて一定の技能と日本語能力のある外国人に就労の門戸(介護・外食業など14業種)を拡大しました。

19年度は最大で4万7550人、5年間で約34万5000人の受け入れを見込んでいるそうです。高度な試験に合格した「特定技能2号」の在留資格は1~3年ごとに更新でき、配偶者や子供など家族の帯同も可能になります。「技能実習」から、立場がより守られた「特定技能」への移行を促すのが狙いです。

兵庫県警はこのほど、失踪した元技能実習生らベトナム人計124人を人材派遣会社にあっせんしていたとしてベトナム国籍の容疑者(26)を出入国管理法違反(不法就労あっせんなど)の疑いで逮捕。124人は大阪や神戸などの倉庫や建設会社で働いていました。

単純な仕事と厳しい職場環境に我慢できず逃げ出した実習生が闇の労働市場に流れ込んでいるのです。全国で摘発された不法就労は近年では一番少なかった14年の6702件から18年には1万86件と増え続けています。18年に強制退去させられた外国人は98カ国・地域で1万6269人、このうちベトナム人が最も多く4395人でした。

英国で起きた今回の事件は、ベトナム人の単純労働を解禁している日本にとって決して他人事では済まされないような気がします。

(おわり)

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