- 2019年10月27日 10:22
人生の目的は見つけるものじゃない。いま、やるべきことにベストを尽くすだけ──ティール組織 著者の天職との出会い方
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「自分の人生の目的はなんだろう?」
生きていくうえで、自らにこのような問いかけをする人は多いのではないでしょうか。
新しい組織のあり方について提唱し、大きな話題を呼んだ『ティール組織』著者のフレデリック・ラルーさんは、「個人においても組織においても、実現すべき目的は突きつけられるもの。探して見つけるものではない」といいます。
個人や組織は、どのように「目的」と出会い、実現に向けて踏み出していけばいいのでしょうか。 ラルーさんが個人史を交え、目的との付き合い方について語ります。
※この記事は、9月14日に東京工業大学大岡山キャンパスで開催されたイベント「ティール・ジャーニー・キャンパス 」での、ラルーさんの講演を元に作成しました。
トップ大学を首席で卒業。マッキンゼーの仕事は楽しい。でも、人生の目的はわからないまま
『ティール組織』を読んで「今後は組織からヒエラルキーやマネジャーは不要になる」という話に反応してくれる人はたくさんいます。
ですが、この本の真のテーマである「目的の進化、人間の進化」に関心を抱いてくれる人は少ないと感じています。
ですから、今回「わたし自身の人生の目的」をテーマにお話しできることをとてもうれしく思います。

さて、わたしの場合は、「人生には目的があるものだ」と気づくまで、ある程度時間がかかりました。
子どものころは、いわゆる優等生で成績はトップでした。素晴らしいことのように聞こえるかもしれません。でも、当時は周囲に期待されることをやっているだけで、自分自身が何を望んでいるのか、自分が何者なのかについて、考えたことはありませんでした。
高校を卒業した時点でも、自分の人生の目的についてはとくに考えていませんでした。
大学は、ベルギーのトップ大学に入学しました。その大学には、もっとも成績優秀な学生はコンサルティング・ファームで働く、という暗黙のルールがあったので(笑)、わたしも卒業後はマッキンゼーに就職しました。
マッキンゼーの仕事はエキサイティングで楽しいものでした。一方で、ある疑問が芽生えました。わたしの仕事はコンサルタントとして、 投資銀行を始めとする、すでに裕福なクライアントがさらに利益を上げられるようにすることです。「この仕事に一体なんの意味があるのだろう?」といつも考えていました。

「半年以内に自分が本当にやりたいことを見つけ、会社を辞めよう」
そう思っていたのですが、見つからないまま、また半年を過ごす、ということの繰り返しでした。人生で何をやりたいのかがわかってきたのは、働き始めて10年後、33歳になったころでした。
コンサルタントの仕事を通して、大企業という大組織の中で仮面をつけ、自分に正直になれず、苦しんでいる人たちをわたしはたくさん見てきました。「人が組織の中で自分にとって本当に大切なことと向き合うための手助けをしたい。コーチの仕事をしたいのだ」と気づいたのです。
「いま、この瞬間に何をやるべきか」。この問いに気づいてプレッシャーから解放された
マッキンゼーを辞めることを伝えると、周囲には「信じられない。せっかく約束されたキャリアがあるのに、コーチになるなんて」と言われました。でも、わたし自身はとても幸せでした。ついに自分の人生の目的を見つけたからです。
しかし、コーチの仕事を始めて4年後、2011年の春にわたしは大きなショックに見舞われることになります。突然悲しみに襲われ、仕事に対するエネルギーがすっかり失われてしまったのです。
好きな仕事をやっているのに、なぜこんな気持ちになってしまったのでしょうか。

それまでは、大企業で働く人たちが健全な気持ちを保つことができるように、いわば「小さな泡のような空間」をつくり出す仕事をしてきました。でも、クライアントである大企業の本部に足を運ぶと、すべてがとても冷たい、大理石とガラスでできている世界であることがわかります 。
自分の身体が「もうこの仕事を続けたくない」と告げてきたんですね。そして、クライアントに「今進行している仕事をすべて辞めさせてほしい」と伝えました。
すると魔法のようなことが起こりました。人生で初めて自分に問うべき正しい質問がわかったんです。

それは「いまこの瞬間に、私にとってやる意味のあることは何か?」という質問です。
「いまこの瞬間に、やる意味のあることとは何か?」という質問は、「人生の目的は何か」という質問とは意味がちがいます。
この質問を自分自身に尋ねた瞬間に、プレッシャーから解放されました。そして、答えはすぐに出ました。「大企業とはまったくちがう形態の組織を新しい観点からつくることは可能か」を探ること。すなわち『ティール組織』という本を書くことでした。



