- 2019年10月26日 06:00
「俺の話は長い」生田斗真vs.清原果耶の途切れない会話 脚本・金子茂樹のセリフが心に染みる - 田部康喜(コラムニスト)
「きょうは会社休みます」(2014年、日本テレビ)や「もみ消して冬~我が家の問題なかったことに~」(2018年、同)などで、ドラマに新しい風を吹かしている、脚本家の金子茂樹がまたユニークな作品を送り出した。「俺の話は長い」(日本テレビ、毎週土曜日午後10時)は、何気ない日常の会話を重ねながら登場人物の人生の真相を描いている。今冬ドラマの秀作のひとつである。
[画像をブログで見る]主人公の無職のニートの岸辺満に生田斗真、私立中学校の通う姪の秋葉春海にドラマや映画に活躍が著しい、清原果耶を起用している。満の母・房枝に原田美枝子、姉の秋葉綾子に小池栄子、その再婚相手の光司に安田顕らが配されて、金子の脚本の魅力が画面にあふれている。
姉一家が建て直しのために、実家に3カ月の約束で同居を始める。母の房枝は、亡くなった夫が経営していた、軽食喫茶をひとりで切り盛りしている。息子の満もいったんは、別の場所で喫茶店を開いたが、経営に失敗してニートなってから6年が経つ。姪の春海(清原)は成績が優秀であるが突然、不登校になる。
ドラマは1回に2話という異色の形式である。第2話(10月19日)は「焼きそばと海」と「コーヒーと台所」である。晴海の不登校の原因と、ニートから抜け出そうと苦闘している満の姿が明らかになってくる。
「焼きそばと海」――満(生田)は学校に行こうとしない春海(清原)に、昼食の焼きそばを作ってやる。前の週から学校へ通い始めたのに再び、登校しようとしないのだった。満の説得に応じて、午後の授業にでることになった春海は、満に乗用車で送ってもらうことになる。春海は片思いだった、同級生の高平陸(水沢林太郎)を親友に奪われたのが、不登校のきっかけとなった。
春海 (親友に)相談してたら、とられちゃって。
満 これから海でも行くか?
春海 昔の人はどうして失恋すると海に行くのよ?
満 行くとわかるよ。
春海 だったら連れて行ってよ。
満 そのうちな。
学校の守衛から不審者と誤解されながらも、満は春海の体育の授業風景をひそかに見た。それは、体育祭を控えたフォークダンスだった。春海が片思いの高平と手を取るのが嫌で、しかも高平を奪った親友が仲良く手を取り合っているのを見るのが嫌だったことを、満は知るのだった。
学習塾から帰宅する春海を満が乗用車で迎えに行くことになった。ふたりはちょっとドライブがてら海に向かった。
満 なんとなくわかったか?
春海 なにが?
満 人が失恋するとなぜ海にくるかって。
春海 なんとなく。失恋して自分をみつめるのは悪くないかも。やっぱ、先に動かないと。こんなに後悔するとは思わなかった。人生の大事なことに限って、誰も教えてっくれないんだよね。
満 たまには教えてくれるひともいるんだけど、大事なこととは思わないんだ。たいていのことは、傷ついてから学ぶしかないんだよ。
春海 そんなのつらすぎる。
満 若いうちだけだよ。
春海 そうだといいんだけど。
過去を捨てられない葛藤を対話で描く
「コーヒーと台所」――昼夜逆転したような生活を送っている、満も朝の5時半には必ず起きて、台所でコーヒーを入れて母の房枝(原田)に飲ませるのが日課になっている。そんな満を姉の綾子(小池)は「コーヒーを入れるよりも、就職したほうがお母さんを安心させられるでしょう」と非難する。さらに、満が喫茶店を営んでいたころの道具とコーヒー豆を捨てられないでいることにも、綾子は我慢がならない。
満は「喫茶店には未練はない。道具も近々フリーマーケットで売るつもりだ。迷惑なら、明日からコーヒーは入れない」と言い切った。
その夜、満は綾子の夫の光司(安田)と行きつけのバーに行った。光司はいま教材会社の営業部員だが、かつてはバンドを率いてメジャーデビューしたこともある。バーのマスターの駒野海星(杉野遥亮)もバイトの千田小雪(きなり)も、光司のバンドを知っている。綾子が再婚する際に、光司に命じたのは使っていたベースギターをすべて捨てることだった。バーに現れた光司は1本のベースを持って現れる。これだけは友人に預かってもらっていたが、その友人が田舎に引っ込んだので、駅のコインロッカーに入れていたというのである。
光司 満君がコーヒーの道具を捨てられない気持ちに共感している。
満 自分でもわからない。またコーヒーショップをやりたいのか。それでもコーヒー豆の新製品が出ると気になってしまう。
駒野(マスター) それでいいんじゃないんですか。気持ちがふっきれるまでそのままでいいんじゃないかな。
光司 どうして、僕の言いたいことがわかるの?
清新な演技で注目を集めている、清原果耶の実年齢に近い役が初々しい。連続テレビ小説「なつぞら」(4月1日~9月28日)では、広瀬すず演じる、奥原なつの妹役の千遥役で娘を持つ30代までこなして、その演技力は驚かされた。金子茂樹の脚本は、清原の新しい魅力を引き出している。
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