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改めて考えたい皇室と軍の絆

即位礼正殿の儀 出典:首相官邸

島田洋一(福井県立大学教授)

【まとめ】

・即位の儀での宣明の言葉に国民の幸せと世界の平和への願いとある。

・戦前の日本の皇室や現在の英国の王室には軍との深い関わりがある。

・平和を宣明する皇室と軍の関係が認められない現在の日本は不自然。

10月22日、即位礼正殿の儀が厳かに行われた。皇族方の立ち居振る舞いは終始立派であり、天皇陛下の「国民の幸せと世界の平和を常に願い、国民に寄り添いながら、憲法にのっとり、日本国及び日本国民統合の象徴としてのつとめを果たすことを誓います」との宣明の言葉も心に響いた。

ただ、明治以降敗戦に至るまでの日本や現在までのイギリス王室のあり方と一つ顕著に異なる点がある。

即位礼正殿の儀にも参列した英国のチャールズ皇太子と故ダイアナ妃の間に生まれたウィリアム王子、ハリー王子は、いずれも自らの結婚式に軍服で臨んだ。そこには実質的裏付けがある。

▲写真 結婚式に軍服で臨むウィリアム王子 出典:flicker photo by the british monarchy

例えばハリー王子(1984年9月生まれ)は、米国女優との結婚ばかりが話題にされがちだが、次のような軍歴を持つ。

2005年5月、20才でサンドハースト王立陸軍士官学校に入り、特に装甲偵察の訓練に時間を費やした後、2007年末から約2ヶ月間、アフガニスタンでタリバン掃討作戦に従事している。

王子が任務を終えて帰還後、英王室は、「ハリー王子は、同僚兵士たちと共に携わった作戦で祖国に貢献し、訓練の成果を発揮し得たことを誇りに思っている」との声明を発した。

▲写真 結婚式のハリー王子 出典:英国王室公式サイト

王室全体として、軍に関わりうることを誇りとするとの姿勢を明示したものである。その後、王子は陸軍航空隊でパイロットとしての訓練も受け、2012年9月から数か月間、アパッチ・ヘリコプターに乗務する形で、再度アフガニスタンでの軍務に着いた。帰還後は、負傷兵の心身回復プログラム策定などの業務に当たり、2015年3月、10年に及ぶ軍務にひとまず区切りを付けて名誉除隊した。

兄のウィリアム王子(1982年6月生まれ)の軍歴も引いておこう。2006年にやはりサンドハースト王立陸軍士官学校に入り、その後英空軍でパイロットとしての訓練を受けた。ウィリアム王子の場合は、主に英国周辺海域における捜索救難業務で7年半を過ごしている。その間、156回の捜索救難飛行に参加し149人の救出に貢献したという。軍パイロットとしての飛行時間は1300時間を超えた。任務の性質上、荒天を突いて飛ぶ危険な飛行も多かったらしい。

ちなみに両王子の父親であるチャールズ皇太子も、ケンブリッジ大学在学中に英空軍でパイロットとしての訓練を受け、その後英海軍、空軍で約5年の軍務に就いている。皇太子の弟であるアンドリュー王子、エドワード王子も(すなわちエリザベス女王の3人の息子すべてが)軍務を経験している(もっともエドワード王子は海兵隊の訓練期間中にドロップアウトし、少なからぬ批判を浴びた。王族であっても、軍務に就く以上、中途半端は許されないとの厳しさが窺える)。

▲写真 軍服のチャールズ皇太子 出典:英国王室公式サイト

なおエリザベス女王自身も、第二次大戦末期の王女時代に英国女子国防軍に入隊し、軍用車両の整備や運転、弾薬管理などの現場任務に当たっている。

翻って日本の状況はどうか。戦前は、皇族が軍務に就くことが当たり前だった。ところが第二次大戦後、新憲法の「平和主義」の下、皇室と軍の絆は絶たれ、以来そのままとなっている。

しかし、危険で邪悪な勢力が跡を絶たない以上、「国民の幸せと世界の平和」を軍事面で確保する自衛隊と「日本国の象徴」たる天皇および皇室の絆が不自然に絶たれたままでよいはずがない。

「平和への願い」と「実力による平和の確保」は不可分である。天皇に前者の宣明のみを求め、後者との関わりを認めない状態は国として健全ではない。

ロイヤル・ファミリーと軍との関わりの形は、英国モデルが唯一のものではないだろう。しかし皇位継承者たちが、心身の鍛錬の意味も込めて軍務に就く道を頭から塞いでしまうのはおかしい。

イギリス王室は、王位継承者たちが文武両道にいそしむことを今も伝統としている。日本も敗戦とその後遺症がなければ、同様の道を歩み続けたはずである。皇室と自衛隊の関係を新天皇即位にまつわる諸行事の機会に考え直してみたい。

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