- 2019年10月25日 18:07
イタリア料理の従業員がパスタ2品注文の客を「侮辱」「ファミレスではない」と痛烈批判したのは正しいか?
2/2店構え
次に入店前の期待値の差を説明します。
該当のレストランは、リストランテ、つまり、最高級クラスのイタリア料理店を標榜しています。
東京都内であれば、ディナーではコースが中心となっており、1万2000円から2万円くらいでしょう。ワインも含めると、客単価はフランス料理と同じように2万円を軽く超えるところも決して少なくありません。
このイタリア料理店はリストランテという業態で営業しており、東京ではないので、東京に比べると7割から8割くらいの値段になるかと思いますが、それでも地元にあっては非常に高価であることには変わらないでしょう。
そうであれば、明らかに高単価であることを示すためにも、あえて、入店しにくい店作りをするものです。
たとえばゴージャスなビルの上層階や、風情のある一軒家、もしくは、普通の路面店であれば、わざとアプローチを設けて店の入口まで到達しにくいようにします。
こうすることによって、たまたま間違えて入ってしまう客をフィルタリングするのです。
ただ、件のイタリア料理店は、そのようではありませんでした。数階建てのビル1階に入居しており、エントランスは道路にすぐ面しており、どこからでも見えるので、たまたま見つけてふらりと入店してしまえます。
ファミリーレストランのように、ハードルが低くて、簡単に入れるようであれば、ファインダイニングとしての営業は難しいかもしれません。
メニュー体系
メニュー体系について考えてみましょう。
リストランテのディナーでは、コースしか提供していないところもあります。アラカルトを提供しているところもありますが、それでもやはり、料理人のクリエイティビティを発揮できるコースが勧められます。
飲食店としては、基本的にコースの流れを楽しんでもらいたいという考え方があるだけに、アラカルトでも通常のコースと同じような流れを客に期待するのは仕方ありません。それが、日本の定食屋やピッツェリアとは異なり、リストランテでの食べ方であるからでしょう。
ただ、コースではなくアラカルトを注文した客に対して疑義を呈し、客を厳選するような本当のリストランテであれば、アラカルトは用意しない方がよかったのかもしれません。
もしくは、アラカルトだけ注文されると採算が厳しい場合には、普通はアラカルトの値段を非常に高くしているものです。それが、飲食店を経営する上での知恵であり、法則であったりします。
パスタは日本人にとって理解しやすく、食べやすいメニューなので、単品で注文される蓋然性が高いもの。そうであれば、アラカルトからパスタを外すのは難しいとしても、もっと値段を上げる必要はあったかと思います。
また、アラカルト単品の値段を上げるだけではうまくいかず、どうしてもコースのような食べ方をしてもらいたい場合もあるでしょう。
そうであれば、最低でも前菜、メインディッシュ、デザートを注文する必要があると明示しておくべきだったのではないでしょうか。
いずれにせよ、コース、アラカルト、プリフィックスなど、メニュー体系の不備があったように感じられます。
入店制限
ファインダイニングであれば、小学生以上、10歳以上、高校生以上など、年齢制限を設けることが一般的です。
これは、アラカルト1品だけ注文できたり、コースを注文できなかったりする年齢の客を排除するためです。これに関しては、目指している1席あたりの売上があるので、全く問題ありません。
ただ、件のイタリア料理店では、子連れ客を制限していないにもかかわらず、子供を歓迎していないのは問題であるように思います。
子連れを許容するのであれば、子供にも全力でホスピタリティを尽くすのがプロフェッショナルというものです。
しかし、もちろん、ヨーロッパのファインダイニングのように、子供を容認しないのであれば、大人向けにホスピタリティを磨けばよいだけでしょう。
大人だけを対象にするか、子供も対象にするかによって、売上やメニュー構成はもちろん、サービスもテーブル配置も変わってくるだけに、ここはよく考えておくべきです。
子連れに関しては多くの問題が発生するだけに、飲食店の方針と、スタッフの意識を揃える必要があると考えています。
料金
ファインダイニングでは通常、サービス料が設けられており、最低でもチャージ料は設定されています。
件のイタリア料理店では、規定の料金に届かなければチャージ料金を加算するとありますが、こういったシステムは不明瞭なので、あまり賛同しません。
というのも、飲食店は金額ベースではなく、料理ベースで客の食体験に応えるべきであると考えるからです。
リストランテであれば少なくとも、前菜、プリモピアット、セカンドピアット、デザートを食べてもらいたいと思うものでしょう。そうであれば、最低でもこれらを注文することをルールとし、値段は二の次にしなければなりません。
なぜならば、もしも例えば、全て前菜だけを注文し、最低の金額を超えていたとしても、そのイタリア料理店にとって嬉しいと思わないからです。売上さえ増えれば、客が前菜しか食べていなくても喜んでいるようであれば、リストランテを標榜する資格がありません。
リストランテは料理人が考えた流れで料理を提供し、客に喜んでもらう業態です。
金額ベースで考えるのは飲食店にとって、不毛であるように思います。客の食体験を高めることを考えた料理を提供することは、飲食店にとっても客にとっても非常に意味があることであると思います。
飲食店と客、互いの理解
今回の問題は、冒頭でも述べたように、飲食店と客の求めることの差によります。さらにいえば、期待値の差でしょう。
他の記事でも述べているように、「お客様は神様ではない」かつ「飲食店は弱者ではない」と考えており、飲食店が自らコンセプトやルールを定めて運営していくべきであると考えています。
飲食店は、客がいなければ飲食店は潰れてしまうので、客に感謝する必要はある一方で、客は飲食店の料理やサービスが多大な努力や苦労によってもたらされていることを少しでも気付くべきであると思っています。
日本でこのような飲食店と客とのミスマッチを少しでも減らすためには、飲食店から客、および、客から飲食店への理解を少しでも高める必要があると考えています。
※Yahoo!ニュースからの転載



