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「神戸のイジメ教師」は、なぜ野放しだったのか

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新卒でも「先生」と呼ばれる歪んだ環境

翻って、学校の先生というのは教員免許を取得し、配属先が決まるとすぐに「先生」と呼ばれてしまう、ある意味いきなりちやほやされる立場になります。そしてそれがずっと定年まで続いてしまいます。新卒をいきなり「先生」呼ばわりしてしまうのって、前座をいきなり「師匠」と呼ぶような感覚でしょうか。

これは、逆に「先生」と呼ばれるだけのコンテンツや実績の備わっていない若い先生方にはつらい環境でもあるはずです。また、そんな状況がずっと続いてゆくと「先生=偉い人=何やっても許される人」という澱(おり)のようなものが、塵(ちり)のように積み重なってゆく。とんでもない人物になる可能性すらあります。

仮説ですが、今回の東須磨小学校のいじめに加担した教員らはその淀(よど)みの具現者だったのではないかと想定します。神戸市は校長の権限が強く、教員の人事を意のままにしやすいとも聞きました。あんな酷(ひど)い動画を残すまでに至った理由はもちろん一つではないでしょうが、「先生と生涯呼ばれ続ける環境」の負の部分は、閉鎖的になればなるほど発生しやすくなるのではと推察します。

「加害に加わった教職員の実名報道を」などという論調も散見しますが、それはあくまでも対症療法にすぎません。一番はそういう極端な先生方が出にくくなる組織の体質改善ではないでしょうか。

先生方には「プチ弟子入り」が必要だ

そこで提案です。

「先生方にも前座制度を導入したら」いかがでしょうか?

ベテランの先生方に新卒の先生が「プチ弟子入り」する感覚の「ゆるい徒弟制度」を取り入れるのです。先輩教師を「快適」にすべく、鞄持ちやお茶くみから始まって、授業の進め方や生徒との接し方を、学んでゆくのです。


立川 談慶『落語家直伝 うまい!授業のつくりかた:身振り手振り、間のとりかた、枕とオチ…落語は授業に使えるネタの宝庫』(誠文堂新光社)

現在も地域の教育委員会ごとに初任者研修を行うことは法律で定められてはいるそうですが、より具体的な、そしてパーソナルな「先生らしさ」を身に付けるために、たとえば最初の一年ぐらいはそんな形で「師匠」格の先生とマンツーマンで接する機会を設ける。ノウハウを持たない若い先生には「その間に勉強もできる」という猶予期間にもなり、精神面でも学生からいきなり先生になるためのワンクッションになるはずです。

人員的に対応できないというのであれば、現役を引退した「おじいちゃん先生」や「おばあちゃん先生」にその師匠役を担っていただいたらどうでしょう? 先生方の再雇用にもつながり、そこで突出した才能を発揮すれば、マーケットは確実にあるのですから、いいことずくめのような気がします。

日本の職員室には、バーベルが足りない

もう一つ、職員室にバーベルやダンベルなどの筋トレ器具を置いてみたらいかがでしょう?


落語家の立川談慶氏

いじめ解決は無論、一筋縄でいきませんが、筋肉は鉄の鎧(よろい)になります。いじめ被害者の視点からは、まず絡まれなくなります。そして加害者にしても、筋トレの楽しさに目覚めれば、興味関心がいじめから移っていくことでしょう。いじめは、被害者と加害者と双方を不幸にさせますが、筋トレはすべての人を幸せにします。

まあ、現場を知らない落語家だからこその提言でもありますが、そんな戯言めいたことばかり書き連ねた拙著『落語家直伝 うまい!授業のつくりかた』が地道に売れているのも、私の考察が支持されている証拠ではないかと自負しています。

あ、この本は、先生向けに書きましたが、企業の新人研修担当者などにも好評です。ひとまず、買って読んでみてください。そして片手で読みながら、もう一方の手ではダンベルカールで上腕二頭筋を鍛えましょう。

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立川 談慶(たてかわ・だんけい)
落語家
1965年、長野県上田市(旧丸子町)生まれ。座右の銘は「筋肉の鎧は心の鎧になる」。2019年1月現在、ベンチプレス120キロ。週3~4回のジム通いで、身体の部位ごとにいかに負荷をかけられるかを日々模索する。慶應義塾大学経済学部卒業後、ワコールに入社。3年間のサラリーマン時代を経て、1991年立川談志18番目の弟子として入門。前座名は「立川ワコール」。2000年に二つ目昇進を機に、立川談志師匠に「立川談慶」と命名される。2005年真打ち昇進。著書に『「また会いたい」と思わせる気づかい』(WAVE出版)『老後は非マジメのすすめ』(春陽堂書店)など。
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(落語家 立川 談慶)

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