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王者日テレの足引っ張る巨人戦、地上波ゴールデンから消滅か

巨人戦が地上波で消える!?(巨人・原辰徳監督とソフトバンク・工藤公康監督。写真:時事通信フォト)

  単なる「野球離れ」だけではないようだ。昨日まで放送されていた読売ジャイアンツと福岡ソフトバンクホークスによる日本シリーズのテレビ中継の視聴率が低迷。来季は日本テレビが地上波ゴールデンで巨人戦をさらに減らす可能性があるという。コラムニストでテレビ解説者の木村隆志さんがその背景について解説する。

【別写真】日本シリーズ直前、美女との決起会に出席した阿部慎之助

 * * *
 23日、プロ野球・日本シリーズで福岡ソフトバンクホークスが読売ジャイアンツを破って3連覇を達成し、今シーズンの公式戦がすべて終了しました。

 今シーズンの総括に加えて、早くも来シーズンの展望など、さまざまな記事が見られますが、ここ数日の間にテレビ業界内で飛び交っていたのは、「日本テレビがジャイアンツ戦のゴールデンタイム放送をさらに減らすだろう」という噂。

 そんな噂が流れている理由は、ジャイアンツが出場したクライマックスシリーズ(以下、CSに略)、日本シリーズの視聴率が低く、後番組にも悪影響を及ぼすなど、テレビ朝日との熾烈な視聴率首位争いに影を落としているから。

 日本テレビは現在5年連続視聴率三冠王(全日・ゴールデン・プライム)を獲得しているテレビ業界の絶対王者。とりわけゴールデンタイム・プライム帯に3~4番組並べたバラエティを強みとしています。

 そのバラエティを休んでまで、CSや日本シリーズを放送していたのですが、CSは9日(水)の第1戦が7.7%。10日(木)の第2戦は放送せず。11日(金)の第3戦が10.0%。13日(日)の第4戦は放送せずにジャイアンツの勝ち抜けが決まって終了。

 続く日本シリーズは、フジテレビが放送した19日(土)の第1戦は8.4%。TBSが放送した20日(日)の第2戦は7.3%。日本テレビが放送した22日(火)の第3戦が9.7%、23日(水)の第4戦が11.8%。「日本一決定の瞬間」を見ようとした人々が終盤に集まったこともあり、最後の第4戦はそれなりの結果を残しましたが、他の試合は厳しい結果だったのです(ビデオリサーチ、関東地区)。

ラグビー、サッカー、バレーとの明暗

「録画機器やネット視聴が定着した今、視聴率なんて重要なのか?」と思う人もいるでしょうが、スポーツ中継は別。ドラマや映画のように、録画やネットでの視聴はあまり期待できず、「リアルタイムで見てもらうことが大前提」、すなわち視聴率が極めて重要なコンテンツなのです。

 同じ10月にゴールデンタイムで放送された他のスポーツと比較しても、CSと日本シリーズが厳しい結果だったことは一目瞭然。

 日本テレビが放送したラグビーは、5日(土)の「日本vsサモア」32.8%、13日(日)の「日本vsスコットランド」39.2%。

 テレビ朝日が放送したサッカーは、10日(木)の「日本vsモンゴル」10.1%、15日(火)の「日本vsタジキスタン」13.5%。

 フジテレビが放送したバレーボールは、1日(火)の「日本vsイタリア」10.8%、2日(水)の「日本vsポーランド」10.3%、4日(金)の「日本vsチュニジア」10.5%、5日(土)の「日本vsアメリカ」6.7%、6日(日)の「日本vsアルゼンチン」9.0%、9日(水)の「日本vsオーストラリア」9.0%、10日(木)の「日本vsロシア」10.4%、11日(金)の「日本vsエジプト」11.5%、13日(日)の「日本vsイラン」5.9%、14日(月)の「日本vsブラジル」13.5%、15日(火)の「日本vsカナダ」12.7%。

 社会的なブームとなったラグビーは別にしても、2022年のワールドカップに向けた2次予選に過ぎないサッカーと、オリンピックに次ぐ位置づけのワールドカップバレーが、コンスタントに2桁視聴率を獲得しているだけに、プロ野球中継の厳しさが際立ちます。

 ただ、この低迷は「単なる野球離れなのか?」とは言えません。

 地上波の野球中継におけるメイン視聴者は、「M4層(またはM3+など)」と呼ばれる65歳以上の高年男性であり、その次に一部の「M3層(またはM3-など)」(50~64歳)。その下の「M2層」(35~49歳男性)、「M1層」(20~34歳男性)の野球ファンは、CMが少なく必ず最後まで放送するBS、CS、ネット配信サービスで見ることが多く、地上波の視聴率に関与することは少ないのです。

 ターゲット層が狭い上に、メイン視聴者は購買意欲が低いためスポンサー受けが悪く、広告収入につながりにくい。さらにプロ野球は近年、「ホームタウン向けのローカルコンテンツ」という傾向が強くなり、地方では人気コンテンツである一方、都心では「レギュラー番組を休んでまで放送するものではない」と言われているのです。

国内スポーツはローカルコンテンツに変化

 これまで各局は日本シリーズの放映権を得るために、シーズン中からさまざまなチームの中継実績を重ねるなどの努力を重ねてきました。しかし、高額な費用がかかる上に、それに見合う視聴率が得られず、レギュラー番組の休止や放送時間変更という問題点もあるなど、いよいよ地上波ゴールデンタイムでの放送が厳しくなっています。

 実際、今年の日本シリーズは第4戦で終了しましたが、ある日テレ関係者から「もし第5戦を放送していても結果は厳しそうだったから、(ジャイアンツが0勝4敗で)負けてホッとしたところもある」という声も聞きました。また、第6戦放送予定だったTBS、第7戦放送予定だったテレビ東京も、同じ心境だったかもしれません。

 プロ野球に限らずサッカーのJリーグ、バスケットボールのBリーグなど、国内スポーツは、「自分の好きな競技を選んで、お金を払って楽しむ」という嗜好性の高いコンテンツになりました。スタジアムや体育館へ行ったり、CSや配信サービスで見たり。いずれにしても「地元チームを家族や友人と一緒に応援する」という地域密着の意識が強くなり、「できるだけ多くの人が楽しめるコンテンツをそろえた」地上波ゴールデンタイムで放送するものではなくなっているのです。

 ただし、前述したように、各競技の日本代表戦は例外。欧米の人々と比べても、「自国選手が外国人と戦う姿を見たい」「日本代表選手ならひいきのチームに所属していなくても応援する」という人が多く、テレビ局にとっては年齢性別を問わないビッグコンテンツとなっています。

 さらに2020年の東京オリンピックは、より多くの競技にふれて魅力を知る絶好の機会。日本人が強い競技を中心に、今後はますますさまざまな日本代表戦を地上波ゴールデンタイムで見られるのではないでしょうか。

【木村隆志】
コラムニスト、芸能・テレビ・ドラマ解説者。雑誌やウェブに月20本超のコラムを提供するほか、『週刊フジテレビ批評』などの批評番組に出演。タレント専門インタビュアーや人間関係コンサルタントとしても活動している。著書に『トップ・インタビュアーの「聴き技」84』『話しかけなくていい!会話術』『独身40男の歩き方』など。

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