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存続危ぶまれる東京モーターショーで見る価値ありの5台

東京モーターショーの会場で取材を受ける豊田章男・日本自動車工業会会長(撮影/渡辺利博)

 10月24日、東京モーターショー2019が東京の臨海副都心で開幕した(一般公開は25日から)。今回のテーマは「OPEN FUTURE」。クルマ単体にとどまらず、未来のモビリティと社会の関係を表現するコンテンツや参加型のイベントが大幅に増えた。入場者減が止まらず、存続すら危ぶまれる状況にある東京モーターショーを何とか再興させたいという業界の意気込みは、2年前の前回ショーに比べると格段に濃密になった。

【写真】東京モーターショーの会場で見たいクルマ

 もっとも、モーターショーと言うからには、コアはやはりクルマ。走るわけでもなく、置かれているだけの市販車やコンセプトカーを眺めることに果たして意義を見出せるのか──会場を巡ってみると、好きな人にとっては「ここで見る価値あり!」と思えるクルマも散見された。

 自動車ジャーナリストの井元康一郎氏が、私的に厳選した5台をピックアップした。

(1)フェアレディZ 50th Anniversary/日産ブース

フェアレディZ 50th Anniversary(日産)

 日産伝統のスポーツカー、フェアレディZは今年、生誕50周年。それを記念して期間限定で販売されているのが50th Anniversaryバージョンだ。フェアレディZの前身で、アメリカに日本もクルマを作れるのだというイメージを植え付けた最初期のモデルのひとつ、「ダットサン・フェアレデー」へのオマージュとおぼしき赤白の2トーンカラーに塗装された車体はかなりの目立ち度。ステージ上のコンセプトカーよりも注目を浴びているくらいだった。

 この50th Anniversary、市販車ではあるのだが、期間限定車という性質上、どこでも簡単に見られるというものではない。多くのブランドのさまざまなクルマが並ぶモーターショー会場でなお相当な存在感を放っているのを見ると、半ば忘れられた存在となっているZの潜在的バリューを感じずにはいられないだろう。

(2)フィット4/ホンダブース

世界初公開したホンダの新型フィット

 ホンダのファミリーカー、フィットが来年2月、第4世代に切り替わる。新型は5タイプのデコレーションを持つワイドバリエーションが特徴だが、ホンダブースには全タイプが展示されていた。

 このフィットもフェアレディZ 50th Anniversaryと同様、市販車だ(こちらはまだ予定車だが)。それをモーターショー会場で眺める意味ありとピックアップした理由は2つある。

 ひとつは造形が写真と実物で相当に違うということ。筆者は写真→実物という順番で見たのだが、写真で抱いた悪印象が実物で払拭されたような感覚であった。シトロエンのマルチスペースハッチバック、旧型ピカソに似た、モダンフレンチ風である。

 もうひとつの理由は、そのフィットが生産上の不具合によって発売が当初の今年12月から来年2月に延びたこと。つまり、しばらくは実物を見ることができないのだ。ホンダブースでは実車がステージだけでなく立ち入り可能エリアにも平置きされているので、遠慮なく見ることができる。

(3)WaiWai/ダイハツブース

WaiWai(ダイハツ)

 伝統的に東京モーターショーでの目立ち度が高いのがダイハツ。昔は派手なステージパフォーマンスを披露して注目を浴びていたし、コンセプトカーも遊び心系が多かったり。大阪人的ノリの良さを気持ち良いくらい丸出しにした同社ブースは長年モーターショーに通っているファン層の間では何気に有名なのだ。

 そのダイハツが今回製作したコンセプトカーの中で目を引いたのは、ミニバン「WaiWai」。ハッキリ言って超かわいい。ラブリー系軽トールワゴン、ムーヴキャンバスをパワーアップさせて2×2×2の6人乗りワゴンにしたような感じだ。全幅1.66m、全長4.2mという小さなサイズながら、内部はとても広く見える。ルーフはデュアルキャンバストップで、開放感も抜群だ。

 ダイハツ関係者によれば、この手のモデルの商品企画は存在するとのことだが、一般顧客がどう見るかは未知数ということで、デザイン提案含めて出品してみたとのこと。来場者のリクエスト次第では実際に出てくるかも!?

(4)e-RACER/トヨタブース

e-RACER(トヨタ自動車)

 今回の東京モーターショーのトヨタブースには、市販車や市販を視野に入れたコンセプトモデルは置かれていない。すべてハイテク満載の未来志向モデルである。カーシェアリング、モビリティサービスなどが普及し、クルマの個人所有がなくなっていく世相にどう対応するかを表現するコンセプトモデルが大半を占める中、唯一、個人所有をターゲットにしたクルマがe-RACERだ。

 一人乗りのフルオープンスポーツEV。もちろんトヨタもそんな極端なものが商品のメインストリームになるとは考えていない。それを敢えて出してきたのは、MaaS(クルマを所有しないことを前提としたモビリティサービス)が普及しても、個人所有は終わらないという見方を示すためだ。

 豊田章男社長は「クルマが普及したとき、アメリカでは1500万頭の馬がクルマに置き換わった。しかし、競走馬は残った。大勢のユーザーが共有するモビリティは馬車、個人所有は愛馬のようなもの。未来のモビリティはそのふたつが共存する社会になるのではないか」と、思いを説明した。車体にはトヨタのマークとともに「GR(ガズーレーシング)」のロゴがつけられている。そんな思いを見て感じてみるのも一興だろう。

(5)WAKUSPO/スズキブース

WAKUSPO(スズキ)

 軽クロスオーバーSUV、ハスラーの次期型が断然注目を浴びているスズキブース。キープコンセプトでブラッシュアップされたデザインはフィニッシュが良く、発売されれば大いに人気を得ることだろう。が、そのスズキブースでそれ以上に興味を引かれたのは、小型スポーツのコンセプトカー、WAKUSPOだった。

 2ドアクーペとステーションワゴンのふたつに形態変化するという時点で市販を目指したものでないことは明らか。スズキは2011年のショーにもレジーナという可愛い2ドアクーペのコンセプトカーを出品したが、その手のクルマを作る気配はなかった。

 今回もショーの花に終わる可能性は高いのだが、それでもWAKUSPOは見ていて萌える。ワゴンになったときは大して格好良くないのだが、出色なのは元の2ドアクーペ状態のスタイリング。イタリアの自動車ブランド、ランチアが製作したヘリテージ系コンセプトカー、フルヴィアとちょっとオーバーラップする良さだ。

 クルマ離れが進んだ今日、こんなクルマが実際に世の中に出てきても月100台くらいのセールスになってしまう可能性が高いため、登場は期待できない。とあらば、ここで実物を目にして、思い出のひとコマに焼き付けるのも悪くない。

 東京モーターショーの一般公開は10月25日から11月4日まで。会期中、100万人を集めると主催者である日本自動車工業会の豊田章男会長は息巻く。果たして一般ユーザーにこのイベントがどう映るか、興味津々である。

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