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入試すらない「N高」から慶大生が8人も出たワケ

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■教科力よりも「導く力」が必要

固定化した経験は時にマイナスになります。常に変化を恐れない、むしろ変わっていきたいと思える人材にN高に参画してもらいたい。N高は、技術の進化によって、質の高い授業を映像配信して知識の伝授をしています。さらに、通学コースでは「アクティブラーニング」を行っています。情報を解釈し、自分の課題に応用できる思考とスキル、そして自分の考えをより効果的に人に伝え、結果を出せるコミュニケーションスキルを身につけさせることが、教師の役割なのです。

われわれの必要とする教師は、前に立って知識を伝授する人ではなく、コーディネーターであり、コンサルであり、サポーターとなる人物です。これからの教師には、教科力よりもこれらの導く力が求められると考えます。

■「学校に通う」ことだけが学びではない

学校という建物は必要か。もちろん生徒の安全管理面からは、必要であることは異論の余地がありません。しかし、現代の学びが学校という建物の中で完結させられるとは思えません。

インターネットが普及していない時代、学校は、時代の先端の情報基地でした。学校に行くと一般家庭にはないハードがそろい、数少ない高等教育を受けた、豊富な知識を持った教師がいました。

しかし、高等教育機関への進学率の上昇とインターネットの普及が進むにつれて、学校が持つ先端性は失われたのです。学校でしか学べなかった知識は、今や誰でも、どこでも、いつでも学べるのです。オンラインで学べるN高の可能性は、このことからも見いだせると思います。

ネット遠足
学校行事の一つである「ネット遠足」。「ドラゴンクエストX」の世界で集合し、旅に出る。 - 画像提供=N高等学校/(C)2012-2019 ARMOR PROJECT/BIRD STUDIO/SQUARE ENIX All Rights Reserved.

学校を休むことは、罪悪感が生まれる行動です。一部の私学進学者を除いて、誰もが、地区の小学校・中学校に、毎日朝から通うという行為は当然のものでした。通うことこそが学びの保証であるというのは、テクノロジーが進化した現代でも、本当にそうなのでしょうか。

このことを一番理解しているのは、子どもたちです。「学校に行かなくても学びや情報を得ることができる」「自分のやってみたいことがある」「友達は、学校以外にもいる」そんな子どもたちの選択としてN高があるのです。

■入学要件は「中学校を卒業していること」だけ

N高には、入試がありません。中学校を卒業していることだけが入学要件です。

生徒を一人でも多く受け入れることは、教育機関の社会的使命であるとも考えています。それは同時に、教育を行う責任が重くなることを伴います。一般の高校では入口段階で、何らかの学校に望ましい入試を行い、選ばれし子どもたちが自ら切磋琢磨して、結果を残していく。

では、入試のないN高は、学校としての教育の成果をどのようにして創っていこうとしているのか。それは、多種多様な生徒のそれぞれの進路を見いだすために、個々の生徒とともに、学校もできるだけ多くの環境を用意する。教育の原点とも言えるこの考えこそ、N高が大切にしたいことでもあります。

N高は2016年4月に開校してから丸3年を迎え、この春、第1期生1593名の卒業生を送り出しました。卒業生の中から、大学進学を希望した生徒たちの実績として、国公立大学では九州大や筑波大、私立大学では早稲田大、慶應義塾大、上智大などの難関大学の合格者が出ました。

もちろん大学進学だけが子どもたちのニーズではありません。「教育は多様であることを認める」、これも揺るがしようのない大切なことだと考えます。教育は、多様な子どもたちを一枠に当てはめるのでなく、多様な学びのスタイルを認めることが必要です。

2019年 主な大学の合格実績(カッコ内は現役)

■補助金を受けずに運営している

N高運営には、コストがかかります。N高は金もうけ主義だと言う方々もいますが、授業料収入だけで、全てを賄っているのがN高です。一人でも多くの支持を得るために、コンテンツ、指導体制、生徒募集体制に全力を注いでいるのです。

教育も民間事業体と同じとわれわれは考えています。いわゆる学校運営に対する補助金の類は、開校以来、一切受けていません。

頂いた授業料を活用して、生徒の皆さんに教育サービスを還元しています。世の中の、民間事業者であれば当然のことなのですが……。このことが自らを律し、変化していく必要性を常に感じさせる要因でもあります。

学校は、自分たちの教育は、社会に出たときに役に立つのかという視点が欠落していてはダメだと考えます。昨今、高大接続以上に大切なのは、社会と教育の接続です。大学に入ることが最優先、子どもたちの生きる力を伸ばすことには無頓着、保護者も進学実績で学校を選択する。ここには、社会の変化に伴う、学校の自己変革のメカニズムは存在しないのです。

われわれは、決して教育の改革とか大上段に構える気はありません。与えられた枠組みの中で、最大限の努力をし、可能性を信じて変化を恐れず運営していくだけです。

今後、N高は、学習効果の検証、教育の質の確保を行いながら、生徒の進学先や就職先、卒業生の活躍などを通じて、誰もが認める存在になることこそが、われわれの進むべき道だと考えます。何よりも子どもたちが、一人でも多く、自信をもって「N高の生徒です。卒業生です」と言える学校を目指していきたいと考えます。

平成30年度の卒業式
平成30年度の卒業式 - 画像提供=N高等学校

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奥平 博一(おくだいら・ひろかず)
N高等学校校長
大学時代は発達心理学を学び、卒業後は公立の小中学校に教員として勤務。民間教育に面白みを感じ学習塾に職場を移し、小中学生の受験指導、新規教室の開校準備業務などに従事。その後、通信制高校での業務を機に、新たな通信制高校の立ち上げ、拡大に携わる。30年以上にわたる教育関連事業の経験を経て、2014年10月、通信制高校の新たな可能性を信じてドワンゴに入社、すぐに沖縄へ移住し、「N高等学校」の設置・開校準備に奔走する。N高を含め、これまで様々な“子ども”たちを見てきたことで、教育における多様な選択肢の必要性を感じている。 
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(N高等学校校長 奥平 博一)

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