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災害の記憶を活かせ

 9月の台風15号は千葉県を中心に、暴風による家屋の損傷や長時間の停電、断水の被害を引き起こした。その傷跡が癒えないうちに、今度は超大型で強い台風19号が東日本広域を襲った。未だ被害の全容も分からず、復旧もままならない状況である。あらためてお悔やみとお見舞いを申し上げたい。

 私の記憶にある最も怖かった台風は、幼稚園の頃、東海地方で甚大な被害をもたらした伊勢湾台風である。当時宇都宮でも一晩中暴風雨が吹き荒れ、朝起きてみたら隣の家の屋根がめくれていた。名古屋近辺では多くの生命と家屋が失われたが、多くの幼稚園も壊滅的被害を受けた。余談だが、たまたま自民党政務調査会長を務めていた私の祖父が、復興予算の中に幼稚園救済のための予算を盛り込ませ、これが後々補助金として定着したと言われている。

 このような災害の記憶は多くの人が共有しているわけだが、特に防災に役立つ記憶は大切にしなければならない。東日本大震災の津波の時によく紹介されたのは、過去の津波を記した石碑である。三陸海岸のあちこちの石碑には「ここより下に家を建ててはいけない」という趣旨の碑文が認められる。子孫が津波の被害を被らないようにと、祖先が残した貴重なサインだろう。

 今回のような河川の氾濫についても、その沿岸には過去の浸水の記録が様々な形で残されている。地名に隠されたサインもある。過去に水害のあった地域には、一概には言えないが「水」「蛇」「滝」などの漢字が付いていることが多い。狭い国土の中で、祖先が警告したところに住むなと言ってもそれは無理な話だが、当該地域では、サインや受け継がれた記憶を心に留め、防災のための工夫や早めの避難を心がけることが、極めて大切である。

 地球温暖化の影響により、過去の災害の記録を遥かに超える現象もあり、役立たないのではとの懸念もある。しかし数百年単位、数千年単位の祖先のサインは、「歴史上最悪」に迫るものもあるはずで、決して無駄ではなく無視してはいけないと思う。現代の智慧とともに先人の智慧を総動員して、我々は未曾有の災害に立ち向かうべきである。

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