皇室の男子継承説というものがあって、日本の天皇はあくまでも男系でなければならない、歴史上に女性の天皇もいたが、それらは適任の男性がいないために、一時的に代理をしただけであって、男系の基本は厳格に守られてきたという説を読んだことがある。この論の正否は知らないが、男だけに伝わる特別に貴重な遺伝子があるというのは、たぶん虚構だと思う。
卵子が男になるか女になるかは、性決定遺伝子がXXかXYかで決まるのだが、この最後のXとYが、対等の大きさというよりも、Yが異常に小さくて、むしろXの欠落と言った方がいいという説明を読んだ記憶がある。つまり生物の基本形は雌であって、遺伝子をシャッフルして進化を起こすために有性生殖を導入したというのだ。この場合、男を作る特別に貴重な遺伝子が存在するのではなくて、基本形の雌に、変化を起こすための欠損を作ってみた、ということになる。
こんな説明は知らなくても、すべて生き物の基本は雌であり、人間で言えば女であることを、古代の人も本能的に知っていたのだろう。日本の神話も、そのようにして、高天ヶ原を支配する天照大神(あまてらすおおみかみ)を民族発祥の祖として定めたのだった。そこから地上の日本国を支配するために、孫を派遣したのが神武天皇で、初代の天皇ということになっている。よく出来た話ではあるが、もちろんお話の中のことである。
それから連綿として今まで続くのだが、ここで女系の天皇を作ると伝統が壊れるなどと心配することはない。じつは男系にのみ伝わる特殊な遺伝子などは、最初から存在していなかったのだ。遺伝子をより多く伝えたいのなら、女性を中心にした方がよほど合理的である。当面は心配がないようだが、次の機会には、安心して女性の天皇を登場させるのがよい。
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- 2019年10月23日 13:56