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『カメラを止めるな!』上田慎一郎監督の新作映画はプレッシャーに打ち勝った一本

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あの「カメラを止めるな!」で、制作費300万円という低予算映画を興収31億円に導く奇跡を起こした上田慎一郎監督の劇場長編第二弾「スペシャルアクターズ」を、公開初日(10月18日)、丸の内ピカデリーで観賞した。観終えて、人目はばからず「ああ、おもしろかった」とつぶやいた。


ここのところ映画の話題は何かと「JOKER」一色で、カメ止め監督の第二弾と言えども「JOKER」が拡散する闇を切り裂き、前評判という閃光を走らせる気配は不明・・・。ざっくりと「気絶でカルト集団と戦う」・・・というごく少ない情報だけが頭の片隅にあった程度だった。

そんなほぼまっさらの状態で「スペシャルアクターズ」を観たのだが、「JOKER」観賞後の重々しいやるせなさとはまさに対極、ふわりと浮き立つかろやかな気分に包まれた。難しい理由はない。前評判に巡りあっていなかっただけで、上田慎一郎監督が上田慎一郎の仕事を果たし、その才をカタチにした作品そのものだったからだ。

上田監督を襲った「カメ止め」のプレッシャー

大変だったと思う。何しろ、あの「カメ止め」の次作だ。作品完成に至るプレッシャーは目盛りある何がしかで量れるものでは無かっただろう。

< 「スペシャルアクターズ」公式パンフより 上田慎一郎メッセージ抜粋 >
上田「(今作の準備にあたって)いざ物語を考え始めたのだが・・・・・。大スランプに陥った。前作『カメラを止めるな!』のプレッシャーが突如として襲いかかってきた。どんな物語を考えても、すぐに行き止まりがくる。どれも『カメ止め』を超えるものには思えなかった。『カメ止め』を忘れようとしても、そうはいかない」

上田監督はクランクインの2ヶ月前、超能力者を題材にした構想を発表し、いざ脚本を書き始めたが、20頁ほどで頓挫して白紙に戻したという。もしかしたら「カメ止め」前の上田監督だったら、その構想で最後まで書きあげ撮影に入っていたかもしれない。

共同通信社

だが、上田監督を囲むステージはすでに大きな変化を遂げている。ハードルの高さが違う。それが「カメ止め」後の世界だ。そのハイプレッシャーに晒されながら辿り着いたのが「スペシャルアクターズ」という物語になる。
< 「スペシャルアクターズ」 STORY >
超能力ヒーローが活躍する大好きな映画を観てため息をつく売れない役者の和人。
ある日、和人は数年ぶりに再会した弟から俳優事務所「スペシャルアクターズ」に誘われる。
そこでは映画やドラマの仕事の他に、依頼者から受けた相談や悩み事などを役者によって解決する、つまり演じることを使った何でも屋も引き受けていた。
そんなスペアクに、”カルト集団から旅館を守って欲しい”という依頼が入る。
ヤバ目な連中相手に計画を練り、演技練習を重ねるスペアクの役者たち。
しかし、和人にはみんなに内緒にしている秘密があった。
極限まで緊張すると気絶してしまうのだ。
あろうことか、このミッションの中心メンバーにされた和人。果たして、和人の運命やいかに!?

気絶しそうになるようなプレッシャーに包まれながら、目的を成し遂げようと立ち向かう。その主人公を支えながらチームが個々の力を結集して前へ進む。上田監督自身もコメントしているが、この映画は「カメ止め」というプレッシャーに立ち向かう監督自身を投影した物語でもある。

そうして出来上がった今作は、「カメ止め」と比べてどうだったか? という最前列の興味に対し、言葉を返すなら、「カメラを止めるな!」も「スペシャルアクターズ」も、どちらも見事に上田慎一郎ワールドだったと言おう。

「カメ止め」は上田慎一郎による「映画愛」の炸裂だった。「スペアク」(※監督自身もそう略している)は上田慎一郎による「芝居愛」の凝縮だ。どちらも上田ワールドであり、その比較に必要なのは優劣ではなく、あるとすれば「愛」の好み。どちらかを選ぶより、どっちの「愛」も堪能してしまったほうがいい。

おそらく、ブームに背中を押されて「カメ止め」は見たが、そこまでに至らない「スペアク」はスルーという、映画的世間のムードも感じるが、だとしたらもったいない。上田慎一郎というエンターテインメントに徹するシネマパークの新作は、あの「カメ止め」のプレッシャーを経て公開されたのだ。監督を信頼していい。・・・と書きつつ、自分も観賞前は正直なところ半信半疑だったけど。

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